銀行DXを加速!
顧客データとオープンデータで描く金融データ活用の未来
デジタル技術の進化が目覚ましい現代において、金融業界、とりわけ銀行におけるデータ利活用は、顧客への提供価値向上と競争力強化の鍵となっています。単なる業務効率化に留まらず、顧客理解を深め、新たなサービスを創出するDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進には、多様な金融データをいかに活用するかが問われています。
本コラムでは、銀行が保有する内部データと、外部のオープンデータを効果的に組み合わせることで、どのようなデータ活用が可能になるのか、そしてその実現に向けたポイントと課題について深掘りしていきます。
K. F
- 読み終わるまで 3分

銀行内部に眠る貴重な「銀行顧客データ」
まず、銀行が持つ内部データの強みを理解するところから始めましょう。これには、顧客の取引履歴、口座情報、融資返済状況、そして企業が提出する財務情報や事業関連情報など、多岐にわたる銀行データが含まれます。これらは顧客との長年の関係性の中で蓄積されてきた、信頼性の高い一次情報です。この顧客データを詳細に分析することで、個々の顧客のニーズやリスク特性を正確に把握し、パーソナライズされた金融商品の提案や、より適切な信用供与が可能になります。
外部環境を捉える多様な「オープンデータ」
しかし、内部データだけでは、企業の潜在能力や市場全体のトレンド、あるいは地域経済の動向といった外部環境を十分に捉えることはできません。そこで重要になるのが、政府や地方自治体、研究機関などが公開しているオープンデータです。気象情報、経済統計、地理情報、人口動態データ、そして企業情報に至るまで、オープンデータは極めて広範にわたります。これらのデータを銀行データと組み合わせることで、顧客や市場に対する360度ビューを構築し、より多角的で深い洞察を得ることが可能になります。
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▼オープンデータについてもっと詳しく知りたい
⇒ オープンデータ(open data)|用語集
データの融合が生み出す新たな価値
では、具体的にこれらの金融データがどのように活用できるのでしょうか。
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1. 与信判断・事業性評価の高度化:
企業の財務データに加え、業界ごとの動向、地域経済の統計、さらに気象データによるリスク因子などを加味することで、与信判断の精度を飛躍的に高めます。特に中小企業やスタートアップへの与信においては、過去の実績だけでなく、事業の将来性や市場ポテンシャルを多角的に評価する「事業性評価」において、オープンデータは強力な情報源となります。
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2. 不正検知・リスク管理の強化:
異常な取引パターンをAI(人工知能)や機械学習モデルでリアルタイムに検知する際、内部の取引データだけでなく、犯罪統計データや地域の経済指標といったオープンデータを活用することで、さらにその精度を高めることができます。これにより、疑わしい取引をいち早く特定し、不正を未然に防ぐことが可能となり、顧客資産の保護に貢献します。
データ利活用を推進するためのポイントと課題
これらのデータ利活用を本格的に推進するためには、いくつかの重要なポイントと課題が存在します。
まず、データの収集、統合、分析のための適切なインフラ整備が不可欠です。多様なデータをセキュアかつ効率的に連携させる「データインテグレーション」の仕組みは、様々なデータを実用的な金融データとして活用する上での基盤となります。
次に、データの品質確保とデータガバナンスの確立が挙げられます。データの一貫性、正確性、鮮度を保証することは、分析結果の信頼性を担保するために極めて重要です。また、データのアクセス権限、利用ルール、プライバシー保護の徹底など、厳格なデータガバナンス体制を構築することは、顧客の信頼を得る上で決して譲れないポイントです。GDPRや日本の個人情報保護法といった規制遵守はもちろんのこと、データの透明性を確保し、顧客からの同意を得た上での利用が必須となります。
さらに、データ分析を担う専門人材の育成や、部門横断的なデータ共有文化の醸成も欠かせません。技術的な側面だけでなく、組織全体の意識改革がデータ利活用の成否を分けます。
金融業界の未来を切り拓くデータ駆動型DX
銀行がこの金融データの力を最大限に活用すれば、顧客に対する提供価値を大幅に高め、市場における競争優位性を確立することができます。銀行における顧客データ活用は、単なる業務改善に留まらず、新たな収益源の創出、より強固な顧客エンゲージメントの構築、そして社会全体の安全な金融システムへの貢献へとつながります。
AIやデータ分析技術の進化は、金融業界におけるデータ利活用の可能性を無限に広げています。これらの技術を駆使し、データガバナンスを徹底しながら顧客の信頼を確保していくことこそが、銀行が目指すべきDXの姿であり、持続可能な成長を実現するための最も重要なポイントとなるでしょう。
執筆者プロフィール

K. F
- ・所 属:データインテグレーションコンサルティング部 ソリューションアーキテクト
- 前職では金融機関にて営業職および社内SEを経験。セゾンテクノロジーへ入社後、プリセールスとしてデータ連携基盤に関わる提案支援およびサービス企画を行いながら、金融領域におけるデータ活用法を発信。趣味は、野球観戦・温泉巡り・映画
- (所属は掲載時のものです)
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