データ活用コラム

データレイクハウスとは?
データウェアハウスやデータレイクとの違い

「データレイクハウス」は、データウェアハウスとデータレイクの良いところを集めた次世代のデータ管理アーキテクチャです。膨大なデータを効率的に管理し、分析のパフォーマンスを向上させるこの技術が、企業のデータ活用に与える影響とは?この記事では、データレイクハウスのメリットとその導入方法について詳しく説明します。

データウェアハウス

DWH

データレイク

分析

Seiji Hosomi - 読み終わるまで 6分

データレイクハウスとは

「データレイクハウス」は、データウェアハウス(DWH)とデータレイクの利点を組み合わせた新しいアーキテクチャです。膨大なデータの効率的な管理と分析を可能にし、ビジネスの意思決定を迅速化します。本記事では、データレイクハウスの基礎知識を押さえ、その主要な利点について詳しく説明します。

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    ⇒ DWH|用語集

定義と背景

データレイクハウスとは、データウェアハウスとデータレイクの特長を組み合わせ、両者の利点を最大限に活用したデータ管理手法です。このアプローチは、構造化データだけでなく非構造化データも統合的に管理し、多様なデータニーズに応えることを可能にします。

例えば、データレイクハウスを利用する企業では、構造が異なるデータをシームレスに活用することができます。これにより、従来のデータ管理システムで発生しがちだった障壁を改善し、迅速な意思決定を可能にします。また、単一のプラットフォーム上でデータを整理・アクセスすることで、運用効率を高め、コストを抑える効果もあります。

その結果、データレイクハウスは現代企業が直面する複雑なデータ管理課題を解決し、より信頼性の高い分析結果を提供するための新たな標準として注目されています。

データウェアハウスやデータレイクとの違い

データレイクハウスは、データウェアハウスとデータレイクそれぞれの課題を解決するために登場しました。データウェアハウスは、高速で信頼性の高い分析を提供しますが、構造化データのみを扱うため、非構造化データ(画像やログなど)の処理に制約があります。一方、データレイクは、大量の多様なデータを柔軟に保存できますが、分析に最適化されたクエリパフォーマンスやデータの品質管理が不十分でした。データレイクハウスは、データウェアハウスのような高パフォーマンスな分析能力と、データレイクのスケーラビリティと柔軟性を兼ね備え、構造化・非構造化データを統合的に処理できます。このように、データレイクハウスは進歩を続けるデータ管理の世界で重要な位置を占めています。

データレイクハウスと機械学習

機械学習・ディープラーニングにおいて、データレイクハウスはデータウェアハウスやデータレイクよりも優れた利点を提供します。データウェアハウスは構造化データに強い一方で、非構造化データ(画像、テキスト、動画など)には対応できません。データレイクは非構造化データの柔軟な保存が可能ですが、クエリパフォーマンスやデータ品質の管理に課題があります。データレイクハウスは、両者の利点を兼ね備え、構造化・非構造化データを統合的に処理できます。機械学習には、これら多様なデータの統合が重要です。さらに、ACIDトランザクションとスキーマ管理をサポートし、データ品質と整合性を保ちながら、高速な分析やモデルのトレーニングを実現します。この柔軟性と効率性により、大規模で多様なデータを使った機械学習・ディープラーニングにおいて、データレイクハウスは最適な選択となります。

BI(ビジネスインテリジェンス)とデータレイクハウス

データウェアハウスは、高速で構造化データを可視化するのに適していますが、センサーデータやログデータ等の半構造化データ、非構造化データには対応できません。またデータレイクは多様なデータタイプを取り扱えますが、分析パフォーマンスが低下しやすく、可視化には適しません。データレイクハウスは、データウェアハウスのような高パフォーマンスなクエリ能力と、データレイクの柔軟性も保持しています。これにより、構造化・非構造化データの両方を統合し、リアルタイムでデータ可視化やダッシュボード更新を行えます。これにより、複雑なビジネスデータを一元的に可視化でき、意思決定をサポートします。

データレイクハウスのアーキテクチャと構造

データレイクハウスのアーキテクチャとその基盤となる構造について説明します。データレイクハウスのアーキテクチャは、システムの可用性と柔軟性を支えるいくつかの異なるレイヤーで構成されています。

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データレイクハウスのレイヤー構造

データレイクハウスのアーキテクチャでは、レイヤー構造を採用することでシンプルかつ効率的なデータ管理が可能となります。各レイヤーが明確に分担された役割を果たすことで、データの可用性、整合性、そして柔軟性を向上させることができます。データレイクハウスは、データの管理、ストレージ、処理、分析の各層で高いパフォーマンスとスケーラビリティを実現します。その主要な構成要素を以下に説明します。

ストレージ層

データレイクハウスのストレージ層は、データレイクの特長を持つ分散ストレージを使用します。この層には、Amazon S3、Azure Data Lake Storage、Google Cloud Storageなどのオブジェクトストレージサービスが使用されることが多いです。これにより、構造化データ、非構造化データ、半構造化データ(例えば、JSONやParquet形式など)を大量に格納できます。ストレージはスケーラブルであり、低コストで拡張可能です。

メタデータ管理層

データレイクハウスはメタデータ管理層を持ちます。この層は、データのスキーマ、データ品質、データガバナンスを管理する役割を担います。メタデータカタログは、どのデータがどこに格納されているか、どのように構造化されているか、またそれらのデータがどのように使われるべきかを追跡します。これにより、データが効率的に検索され、クエリが最適化されます。

分析・クエリ層

データレイクハウスは、SQLクエリを使用してデータ分析を行います。ACIDトランザクションをサポートすることで、データの整合性と信頼性を確保します。これにより、複数のユーザーやプロセスが同時にデータを更新する場合でも、データの整合性が維持されます。この機能はデータレイクには欠けていたもので、データウェアハウスの特長をデータレイクに持ち込む役割を果たします。

オープンテーブルフォーマット

データレイクハウスはオープンテーブルフォーマットを活用することで、データレイクに格納された膨大なデータを効率的に構造化し、ビジネスインテリジェンス(BI)や機械学習などの高度な分析をサポートします。主要なオープンテーブルフォーマットとしては、Delta Lake、Apache Iceberg、Apache Hudiなどが広く使用されています。これらのフォーマットは、それぞれ異なる強みを持ちながらも、データ操作を効率化する機能が備わっています。これによりデータレイクの柔軟性とデータウェアハウスのパフォーマンスを融合させ、企業の分析や意思決定を支援する理想的な環境を提供します。

データレイクハウスの導入メリットと課題

データレイクハウスの導入によるメリットと、直面する可能性のある課題について解説します。

はじめにデータレイクハウスの主要な利点について説明し、次にその導入に伴う課題と解決策について考察します。

コスト削減と効率的なリソース利用

データレイクハウスの導入により、データ管理に関わるコスト削減とリソースの効率的な活用が実現可能です。従来、データウェアハウスとデータレイクといった分離されたプラットフォームが必要でしたが、データレイクハウスの採用によって重複するストレージや分析ツールの必要性がなくなります。単一のプラットフォームを通じてデータを管理できるため、運用コストが減少します。

また、データレイクハウスにおける統一されたアーキテクチャは、運用上の無駄を排除するための強力な基盤となります。データの収集、保存、分析にかかわるプロセスが簡素化され、データ管理の効率性とパフォーマンスが向上します。

スケーラビリティと柔軟性

データレイクハウスは、その設計によって大規模なデータ量にも対応可能であり、非常に柔軟なシステムを構築することができます。分散型設計によってデータサイズの増加やワークロードの変動にも迅速に対応できる高い適応力を持っています。例えば、多国籍企業は、データレイクハウスを活用して各地域に分散したデータの管理を統合し、グローバルレベルでのスケーラブルな運用を可能にしています。また、このスケーラビリティを活かすことで、突然のビジネス需要や新たなデータ活用ニーズにも柔軟に対応が可能となります。

導入時に直面する課題

データレイクハウスを導入する際には、システムの統合性やスムーズな稼働を確保するために克服すべき課題が存在します。その中でも顕著なのが、初期のセットアップにおいて多大なコストと専門的な技術知識が必要となる点です。

特に、既存のデータストレージシステムやレガシーシステムとの互換性の確保が大きな壁となります。これらシステム間で異なるデータ形式やアクセスプロトコルに対応するためには、新たなデータ変換プロセスの実装が欠かせません。例えば、オンプレミスのデータウェアハウスからクラウドベースのストレージにデータを一元化しなければならない場合、対応する技術ソリューションが不可欠です。

これらの問題に対処するため、エンジニアやデータの専門家をはじめとする適切な人材の確保が鍵となります。また信頼のおける技術パートナーを選定することで、複雑性を軽減し導入プロセスを最適化できるでしょう。

データ品質の管理とセキュリティ

データレイクハウスは、従来のデータウェアハウスと比べて、データの保存方法が柔軟であるため、データの品質管理が難しくなる可能性があります。データが一元的に管理されるとはいえ、データの整合性や正確性を保つためのガバナンスや品質管理が重要です。機密情報や個人情報が含まれる場合、そのセキュリティを保つための対策も必要です。データガバナンスの規定(例えば、データの管理、監査、コンプライアンス)を徹底し、組織内で一貫したルールを設けることが求められます。

課題解決のためのアプローチ

テクノロジーの進化により、従来のデータプラットフォームにおける制約や運用上のボトルネックが解消されつつあります。データレイクハウスの課題解決には、以下のような多角的なアプローチが必要です。

ACID特性のサポート技術を活用することで、一貫性のあるデータトランザクションと信頼性を確保する点が最優先です。これにより、データの整合性を維持しながら、効率的なデータ処理を実現できます。オープンテーブル形式やメダリオンアーキテクチャの導入により、データ管理の柔軟性と分析速度の増進が図れます。

さらに、データアクセス制御とガバナンス機能を強化することも重要です。これには、厳密なアクセスログの取得や役割ベースの権限管理といったセキュリティ対策が含まれます。これにより、データの安全な運用と規制遵守を確保できます。

これらのアプローチを通じて、データレイクハウスを中核とするデータ管理システム全体の最適化と、あらゆる業界でのデータドリブンな意思決定の促進が期待されます。

データレイクハウスの未来と展望のまとめ

データレイクハウス技術は、既存のデータレイクとデータウェアハウスの長所を統合し、次世代のデータ管理アーキテクチャとして成熟しつつあります。これにより、効率的なデータ分析、運用コストの削減、スケーラビリティの向上が可能になります。

今後のデータレイクハウスの開発に注目し、自社のデータ管理戦略にその導入を検討することをお勧めします。これにより、競争力のあるビジネスインサイトの迅速な提供が可能となるでしょう。

データレイクハウスの採用を促進するためには、関連技術やベストプラクティスについて継続的に学び、専門家の支援を受けながら適切な設計と実装を行うことが求められます。

執筆者プロフィール

細見 せいじ

  • ・所 属:マーケティング部
  • 都内のSierで約10年システム開発に従事したのち、2016年 アプレッソにjoin。 データ連携ソフトウェアDataSpiderの開発エンジニア→プロジェクトマネージャーを経て、現在はマーケティング部でデータ利活用領域を担当。 システムエンジニア時代に培った IT システム活用経験をベースに、お客様の『データ利活用』『デジタル・トランスフォーメーション』を支援している。
  • (所属は掲載時のものです)

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