データ活用コラム

データ統合とは?目的・メリット・実践方法を徹底解説

データ統合は企業や組織が多様なシステムから収集したデータを共通の基盤へ集約し、一貫性や正確性を保ちながら活用する手法です。多くの企業では、複数の部門やシステムにデータが分散しており、それらを有効活用する手段としてデータ統合が注目を集めています。
本記事では、データ統合の定義や実施メリット、手法および注意点を詳細に解説するとともに、活用事例やよくある質問への回答を紹介します。自社のデータ活用を一段上のレベルへ引き上げたい方はぜひ参考にしてください。

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Yumi Ogawa -読み終わるまで8分

データ統合の定義と基本概念

まずはデータ統合の意味と基本的な考え方について整理します。

データ統合とは、複数のシステムやフォーマットにまたがるデータを整理して一元管理し、そのデータをビジネスで有効活用できるようにすることです。企業規模や業種を問わず、多様な場面で必要とされており、異なる形式や構造の情報をできるだけ共通化し、データ品質を高めた状態で蓄積することがその意義となります。

データ統合が注目を集めている背景には、システムごとに分断されたデータが増え続けてきたことがあります。部門や組織間でデータの流通が不十分だと、同じ情報の重複管理が発生し、分析や意思決定に時間と手間がかかるのが現状です。データ統合はこれらの根本的な問題を解消する考え方として注目を集めています。

また、データ統合の取り組みにおいては、データをただ収集するだけでなく、整合性を保つためのクレンジングや重複排除なども重要です。こうした品質管理を徹底することで、後の分析フェーズや運用プロセスがスムーズに進み、最終的には組織全体のDX推進に貢献します。

データ統合が求められる背景とDXとの関連

DX推進の文脈で、なぜデータ統合が不可欠とされているか、その背景を確認します。

近年、多くの企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を通じてビジネスモデルの革新や生産性向上を目指しています。しかし、DXを具体化するためには、必要なデータがどこにあるかを把握し、迅速に活用できる状態を整備することが欠かせません。

分断されたデータのままでは、基幹システムやサブシステム間の情報連携が不十分になり、データ活用プロセスが停滞しがちです。結果として、導入した新システムやAIの能力を最大限に発揮できず、DXの真価を十分に得られないことが多いのです。

データ統合は、こうした障壁を取り除き、部門間やシステム間の情報をスムーズに連携させるための基盤となります。これにより、デジタル上での新しいサービス展開や業務プロセスの自動化など、DX実現に直結する取り組みが可能になります。

データ統合と相互運用性の重要性

複数のシステムやツールが連携する上で鍵となる相互運用性と、それを支えるデータ統合の役割を解説します。

ビジネスシーンでは、ERPやCRM、MA(マーケティングオートメーション)といった多様なシステムが独立して稼働しており、それぞれが異なるフォーマットやデータ構造を採用しているケースが多くあります。相互運用性とは、こうしたシステム同士がシームレスに連携し、情報を正しく交換できる能力を指します。

相互運用性を実現するためには、それぞれのシステムが同じ言語でやりとりできるように整備することが必要です。ここで重要となるのがデータ統合という考え方で、異なる形式のデータを共通の基盤に取り込み、整合性を保ちながら活用する仕組みこそが要となります。

データ統合の視点があれば、システム追加や変更が発生しても大きく破綻することなく連携を保つことが可能です。結果として、企業全体のIT投資効率が高まり、新しいビジネスチャンスへ迅速に対応できるようになるのです。

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データ統合のメリットと効果

データ統合を実践すると、組織の情報活用や意思決定プロセスに大きな変化が生まれます。

データ統合によって、企業はあらゆる部門やプロジェクトから生成される情報を一か所に集約し、重複なく扱えるようになります。その結果、社内のコミュニケーションコストが下がり、スピーディなレポート作成が可能になるなど、業務効率が大幅に向上します。

また、統合されたデータを用いた分析は精度が高く、単一の真実の情報源として全社で共有しやすくなるのも特徴です。正確な情報に基づく判断は経営戦略の効果を高めるだけでなく、リスク管理の面でも大きな役割を果たします。

さらに、システムの抜本的な効率化を促すことも大きな魅力です。たとえば、複数のデータ管理ツールを統廃合することでコスト削減が見込めるだけでなく、分析環境やBIツールの導入をスムーズに行えるようになり、ビジネス価値創出のスピードに繋がります。

1. 情報を一元管理できる

従来は部門やプロジェクト単位で異なるシステムを利用していたため、同じ顧客情報が複数のデータベースで重複管理されるケースが多々ありました。データ統合を行うことで、こうした重複や紛らわしさが解消され、必要な情報を一度の検索で見つけられます。

情報を一元管理することで、業務効率が高まり、担当者が判断をする際にも正確でタイムリーな情報を得やすくなります。特に営業やマーケティング部門では、顧客へのアプローチや施策実施の速度と精度が格段に向上します。

2. データ分析の精度向上と迅速化

複数のシステムから流入するデータが統一されたフォーマットで管理されるようになると、分析ツールへのデータ投入がスムーズになり、迅速にインサイトを得られます。分析プロセス自体もシンプルになり、データサイエンティストだけでなく現場の担当者も簡単に活用できる点が大きな利点です。

さらに、一貫性が保たれた情報を用いたデータ分析では、誤差や重複による誤判定のリスクが低減されます。企業全体で信頼度の高いレポートが共有されれば、意思決定のスピードも飛躍的に加速していくでしょう。

3. システムの運用コスト削減

データ統合を実施すると、複数のシステムを個別に管理・運用する手間が軽減されます。重複する機能やデータベースを削減できるため、ソフトウェアライセンス費用やメンテナンスコストなどの運用費を最適化できます。

また、トラブルシューティングの効率化にも繋がります。問題が生じた場合でも、統合基盤を参照すればシステム全体の状況を一括で把握しやすくなるため、障害時間を短縮できる可能性が高まります。

4. ビジネスインテリジェンス(BI)の推進

データ統合とBIツールの組み合わせにより、企業はより高度なダッシュボードやレポートを作成しやすくなります。経営層から現場担当者までが同じデータを共有しながら、リアルタイムで状況を把握できる環境が整うのです。

BIによる可視化は、データに基づく意思決定を組織文化として根付かせる効果もあります。正確で見やすい指標を日常的に確認することが、戦略立案や問題発見のスピードアップにつながり、変化の激しい市場環境へ柔軟に対応する基盤を築きます。

5. ビジネスへの生成AIの活用

昨今では、生成AIをビジネスに活用しようという動きも活発です。しかし、そこで懸念されるのが、ハルシネーションの問題です。そのハルシネーションを抑制する方法として有効とされているのがグラウンディングにRAG(Retrieval Augmented Generation)を用いる手法です。RAGは、生成AIモデルに付与されるクエリに基づいて、高精度なデータを検索・取得し、これを基にコンテンツを生成します。社内のデータを統合し、品質を担保したデータを使ってRAGを構築することで、生成AIのアウトプットの品質を大幅に向上させ、より有用で正確な情報提供を可能にします。

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データ統合における代表的な課題と注意点

スムーズなデータ統合には技術面・運用面の両方で対策が必要です。

1. 多様なデータソースへの対応

企業内には、各部門で使用するエクセルファイルやクラウドサービス、オンプレミスの基幹システムなど、形式の異なるデータソースが散在しているケースが少なくありません。それらをまとめて扱うには、柔軟なデータ取込機能や変換ロジックが必要です。

対応の難易度を下げるためには、あらかじめデータ収集範囲や優先順位を定義し、段階的に統合を進めることが肝心です。すべてを一度に統合しようとすると、工数の増大や品質管理のリスクが高まります。

2. データ品質と正確性の維持

データ統合の過程では、入力ミスや重複、欠損値など各種データ不正が顕在化することがあります。統合前にクレンジングを行い、誤った情報を排除する仕組みづくりが重要です。

また、基幹システムやサブシステムで更新頻度が異なる場合、最新の情報を常に反映できるような整合性チェックが求められます。ここを怠ると、現場が利用するデータが古いままとなり、意思決定に支障をきたす可能性が高まります。

3. セキュリティとプライバシー保護

統合基盤にデータを集約するほど、情報漏えいリスクや不正アクセスが増大するため、安全性を確保する取り組みが欠かせません。たとえば、アクセス権限管理やログ監視、暗号化などは必須の対策といえます。

特に個人情報を扱う場合は、法的な規制に準拠するだけでなく、自社のセキュリティポリシーを明確にし、運用ルールを周知徹底する必要があります。プライバシー保護の意識が全社レベルで共有されることで、データ活用における信頼性も高まります。

4. 組織間のデータサイロ化

企業内では、部門間の目的や文化の違いからデータを共有しない、あるいは共有したくないといったサイロ化が起こりがちです。データ統合を進める前に、組織横断でのガバナンス方針や情報共有の基本ルールを整備することが重要です。

技術的に統合が進んでも、部門同士の連携やコミュニケーションが不足していると十分な効果が得られません。運用フローや協力体制を確立し、データ活用のメリットを全社で共有する仕組みづくりが不可欠です。

データ統合の進め方・プロセス

具体的な導入フローを理解することで、スムーズに計画を進められます。

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1. 統合の目的と対象データの明確化

初めに、なぜデータを統合するのかという目的を明確にすることが成功の鍵です。営業やマーケティング、経営企画など、特定の業務課題やビジネス目標に直結する範囲を設定し、統合対象となるデータソースを洗い出します。

この段階でデータの利用ケースや必要な品質レベルを整理しておくと、後工程のクレンジングやツール選定がスムーズに進みます。目的と対象範囲が曖昧なまま進めると、統合プロジェクトの規模が不必要に拡大するリスクが高まるでしょう。

2. データクレンジングと加工

データクレンジングでは、入力ミスや重複レコード、不要な空白などを取り除き、分析や共有に適した状態へ整えます。特に、顧客名や商品名が重複しているケースではIDの付与やマッピング処理を行い、一意性を確保します。

加工の段階では、フォーマット統合やデータ型変換などを行い、ツールやシステム間で互換性を持つ形にそろえます。こうした事前準備をしっかり行うことで、後に実施する分析やBI導入の効果が飛躍的に高まるのです。

3. 統合基盤・ツールの導入・検証

データウェアハウスやデータレイクなどの統合基盤を選定し、どのようなツール群を利用してETL(抽出、変換、ロード)やデータレプリケーションを行うかを検討します。オンプレミスかクラウドか、コストや拡張性、セキュリティ要件のバランスを考慮しながら選択することが重要です。

導入後は、パイロット運用や検証段階を経て、本格的なデプロイに移行します。このとき、試験環境でデータ連携の動作確認を入念に行い、想定外のトラブルを極力減らすようにしましょう。

4. 運用・改善サイクルの確立

データ統合は一度導入して終わりではなく、継続的な運用と改善が欠かせません。データ品質の監視やエラー検知、更新頻度の見直しなど、日々の運用プロセスをモニタリングし、状況に応じて最適化を図ります。

また、組織の変化やビジネス戦略のシフトに合わせて統合対象や分析要件も変化していきます。定期的に関係者が集まって課題を共有し、運用フローの見直しや新ツールの導入検討を行うことで、データ統合の効果を持続的に高められます。

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データ統合の活用事例と成功ポイント

さまざまな業種・部門でどのようにデータ統合が活かされているのかを紹介します。

1. マーケティングの事例

マーケティング領域では、顧客行動データや購買履歴、SNS上の反応といった多様なデータを統合し、一気通貫の施策立案に役立てるケースが増えています。セグメントごとに効果的なキャンペーンを打ち出すための分析も、統合環境があれば最適化しやすくなります。

例えば、一人ひとりの嗜好に合わせたパーソナライズド広告やメール配信の実施などは、統合された顧客データがあるからこそ可能です。タイムリーに情報を収集し、施策の効果をリアルタイムに分析することで、マーケティングROIを大幅に向上させる企業も出てきています。

2. 生産活動の事例

生産業務では、工場の稼働状況や在庫情報、設備のセンシングデータなどを一元的に管理し、リアルタイムで生産計画を最適化する試みが広がっています。これにより、材料の無駄削減やライン稼働率の向上が期待できるのです。

さらに、製造装置から収集したデータを分析し、不良品の予兆検知やメンテナンス時期の算出に活かすことで、稼働停止リスクを低減する企業も増えています。こうした取り組みは、安定した品質確保とコスト削減の両立を実現するうえで大きなアドバンテージとなります。

3. 部門横断型データ活用の事例

大規模な組織では、複数の部署がそれぞれ独立したデータを保持しており、部門をまたいだコラボレーションが遅れがちです。データ統合を導入し、各部署の情報を横断的に参照できるようにすることで、新製品開発やサービス改善のスピードが格段に速まります。

たとえば、営業部門の受注情報とカスタマーサポートの問い合わせ履歴を組み合わせることで、顧客の潜在ニーズを発見しやすくなるなど、従来は見えてこなかった付加価値を生み出すことも可能です。

データ統合に関するよくある質問(FAQ)

データ統合の導入前に多くの方が抱える疑問をQ&A形式で解説します。

データ統合とデータ連携はどう違いますか?
データ連携はシステム間のデータ受け渡しを指し、より点的な連携にフォーカスしています。一方、データ統合は情報を整理し、一元的に管理・活用する仕組み全体を構築する概念です。
リアルタイムにデータを統合することは可能でしょうか?
ツールや基盤次第では実現可能ですが、システムへの負荷やコスト、データ品質確保などの課題があります。適切なアーキテクチャ選定と要件定義が不可欠です。
データ統合のプロジェクトにはどれくらいの期間がかかりますか?
統合範囲やデータ量、導入ツールの選択によって大きく異なります。小規模なPOCであれば数週間から数か月程度、大規模導入だと半年から1年以上かかる場合もあります。

 

まとめ|データ統合を成功させるために

最後にデータ統合をスムーズに成功させるポイントを総括します。

データ統合は、DX時代のビジネス競争力を高めるうえで欠かせない取り組みです。多様なシステムやフォーマットを横断してデータを整理・集約することで、情報の価値を最大限に引き出す基盤が形成されます。

成功のカギは、明確な目的設定とスモールスタートのアプローチ、さらに継続的な運用と改善をセットで考えることです。組織全体のガバナンス体制やセキュリティ面を併せて整備しながら、一貫した戦略のもとで着実に統合プロセスを進めていくのがベストでしょう。

執筆者プロフィール

小川 優美

  • ・所 属:マーケティング部
  • 広告代理店での2年間のコピーライター経験を経て、その後はIT業界一筋。B2CからB2B、日系ベンチャーから大手外資系まで、さまざまな企業での経験が強み。広報、ブランディング、プロダクトマーケティング、キャンペーンマネージャーなど、一貫してマーケティングにまつわるさまざまな業務に従事し、2024年5月より現職。プライベートでは、自然と触れ合うこと、温泉&銭湯が大好き。
  • (所属は掲載時のものです)

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