データ連携基盤で実現するこれからの防災DX《後編》
近年、激甚化する自然災害から住民の生命と財産を守るため、防災DXが急務となっています。自治体や民間企業が持つ多岐にわたるデータを連携・統合することは、災害発生時における対応の迅速化と精度向上を実現する鍵です。
本記事では、このデータ連携基盤の導入を成功に導くための段階的な進め方について解説します。
Shinnosuke Yamamoto -読み終わるまで3分
防災データ連携の進め方
防災データ連携は段階的に進めることが重要です。まずシステム間連携、次に自治体間連携、さらに業界を超えた連携へと拡張していきます。
多くの組織がそれぞれの防災システムを導入している現状では、一度にすべてを連携させるのは容易ではありません。緊急時に本当に必要とされる情報をどのように集約・活用するかを明確化し、それに応じた段階的な取り組みを行うのが効果的です。
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Phase1. 防災システム間の連携
まずは気象情報や河川情報など、防災の要となるシステム同士を結びつける段階です。これまで単独で運用されていた複数のシステムを連携させることで、情報収集から意思決定までを迅速化することができます。

気象情報×河川氾濫情報
降水量データと河川水位データを掛け合わせることで、河川の氾濫リスクをより正確に予測できます。特定地域の降雨傾向と水位上昇の関連を把握し、避難開始のタイミングを的確に判断しやすくなります。
土砂災害情報×道路情報
土砂災害警戒区域の情報と道路状況を重ね合わせると、災害発生時の通行止めや緊急経路の確保がしやすくなります。通行不能エリアを可視化することで、早期の迂回ルート設定や救援物資の輸送経路の検討に役立ちます。
避難所情報×位置情報
避難所の住所や収容人数に加えて、リアルタイムの稼働状況や混雑度を地図上で表示する取り組みが進んでいます。住民にとって安全な避難先を迅速に選択できるだけでなく、避難行動要支援者(障害のある人や高齢者等)向けの配慮も計画しやすくなります。位置情報との連携により、防災アプリや防災メール等を通じたルート検索や交通手段の確保までを一括でサポートできることも期待されます。
Phase2. 自治体の垣根を越えた連携
市区町村と都道府県、国や研究機関が同じ災害情報を共有し、協力体制を強化する段階です。広域的な災害や被害が連鎖的に発生する場合、単一の自治体だけで対応するのは困難です。そこで、都市部や周辺地域とも連動して支援物資を提供し合う仕組みを確立し、避難者を受け入れる体制を整備できるような状態を目指すことが重要です。
市区町村レベルでの連携
近隣市区町村同士が個別に保有している防災マップや防災アプリを相互運用することで、広域的な避難計画を策定しやすくなります。連携により余剰の食糧や毛布などの支援物資を必要としている地域にスムーズに送ることができ、より効果的な災害対応につなげられます。
都道府県レベルでの連携
県全体の災害対策本部が市町村レベルの情報を集約し、必要に応じて重点支援を実施します。同時に、県内の医療機関や公共交通機関から得られる情報も集約することで、より精密な災害対応プランを策定できます。広域避難の際にも、県単位の視点で避難ルートと受け入れ施設を割り当てられるのが利点です。
国・研究機関レベルでの連携
内閣府や防災科学技術研究所などが中心となり、全国的な防災データプラットフォームを構築する動きが進んでいます。大規模災害が発生した場合、国も含めた中央指令のもとで迅速な対応を行えるよう、地方との連携が不可欠です。デジタル庁が進める防災DX官民共創協議会でも、多様な参加者が一括してデータ連携のルール化や運用整備を検討しています。
Phase3. 業界の垣根を越えた連携
医療、物流、インフラ、農業など、防災と直接関係が深くないように見える分野とのデータ連携が、災害時に大きな力を発揮する段階です。平常時のビジネスやサービス運営をベースに、緊急時には情報やリソースを防災のために切り替える仕組みが重要になります。
防災×医療×福祉
医療機関や福祉施設が持つ患者データを防災システムと連携することで、災害時の迅速なトリアージや要配慮者への避難支援が可能となります。平常時に遠隔医療や電子カルテで管理している情報を災害時に共有することで、医師や介護職員の情報リソースが集約・活用できます。
防災×物流
物流企業が管理する在庫情報や輸送ルート情報と連携すれば、被災地への支援物資を適切なタイミングと数量で届けられます。平常時に行っている配送や倉庫管理を、災害時の緊急輸送へ応用できるのが強みです。
防災×インフラ
インフラ事業者が保有する電力や水道の需要データを防災情報と連動させると、供給障害の早期発見や被害箇所の特定が容易になります。平常時からのデータ蓄積を活かして供給不足が予想されるエリアを割り出し、速やかな復旧を図る仕組みづくりに役立ちます。
防災×農業
農作物の生育状況や防犯監視システムなど、スマート農業で蓄積されるデータを防災にも転用できます。大規模災害時には物流が滞ることも考えられ、農地や倉庫からの直接的な食料供給が重要になります。
防災×交通
交通事業者が持つ運行状況や渋滞情報を防災システムと連携すると、避難経路の確保や緊急車両の移動を円滑に管理できます。平常時の運行データは人の流れを把握する上で重要な指標となり、災害時には優先車両の先行導入などに生かすことが可能です。
さいごに
データ連携基盤は、自治体・業界問わず様々なシステムとデータ連携することで地域に関わるステークホルダーとの情報連携を強化します。これからの防災では、データ連携基盤を核としたDXの流れをうまく取り入れ、住民の安全と地域の持続的な発展を両立させることが求められています。
執筆者プロフィール
山本 進之介
- ・所 属:データインテグレーションコンサルティング部 Data & AI エバンジェリスト
- 入社後、データエンジニアとして大手製造業のお客様を中心にデータ基盤の設計・開発に従事。その後、データ連携の標準化や生成AI環境の導入に関する事業企画に携わる。2023年4月からはプリセールスとして、データ基盤に関わる提案およびサービス企画を行いながら、セミナーでの講演など、「データ×生成AI」領域のエバンジェリストとして活動。趣味は離島旅行と露天風呂巡り。
- (所属は掲載時のものです)
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