長野県 DX推進課 様

Webサイト自動巡回(クローリング)によって
市町村の負担を軽減しながらデータ収集を実現する、
77市町村が活用できるデータ連携基盤

業種・業態
公共・自治体
導入製品
DataSpider Servista / HULFT DataCatalog
キーワード
データ連携基盤 / データ利活用 / クローリング

長野県では、2018年に策定された長野県総合5か年計画「しあわせ信州創造プラン2.0」において掲げられた、先端技術を最大限に活用することを具体化する長野県DX戦略を策定している。この戦略実現に向けて、「スマートハイランド推進プログラム」で行政事務やインフラなどのDXを推進し、加えて「信州ITバレー構想」で県内全ての産業に対するDXを後押ししてきた。

そのスマートハイランド推進プログラムにおいて進められた産学協同プロジェクトの1つである洪水予測の仕組みづくりに向けて、データ連携基盤の整備を推進。このデータ連携基盤としてDataSpider Servista、可視化を通じてデータ活用を可能にする環境としてHULFT DataCatalogが活用されている。

お客様の課題

市町村の負担を軽減しながらデータ収集を実現するデータ連携基盤の整備

導入効果

市町村に負担をかけずに
クローリングにて
データ取得を実現

連携先の追加や
項目変更など
内製化できる環境が
整備できた

広域性の高い
データ連携基盤

将来的な活用にも期待

背景
洪水予測に向けた共同研究への参画で必要となったデータ連携基盤

長野県 企画振興部 DX推進課 課長
永野 喜代彦 様

本州のほぼ中央に位置し,山地の総面積が県の84%を占める山岳県である長野県。善光寺や松本城といった観光名所をはじめ、志賀高原や白馬といった人気のあるスキー場、日本の屋根と呼ばれる標高3000メートル級の高い山々が連なる北アルプスなど、日本はもちろん海外からも観光客注目のエリアとして高い知名度を誇っている。

そんな長野県では、「Society 5.0」時代を見据えて、長野県全域のDXを推進することで、県民や地場企業に加えて、県外の人や企業にとっても魅力的な地域にする「長野県DX戦略」を2020年に策定、県民生活と行政のDXを推進する「スマートハイランド推進プログラム」と県内産業のDXを推進する「信州ITバレー構想」の2つの推進エンジンでDX戦略を強力に推し進めてきたと語るのは、企画振興部DX推進課長 永野 喜代彦氏だ。

2つの推進エンジンの1つである「スマートハイランド推進プログラム」では、県と市町村の共通業務に着目して共同利用を推進し、クラウドサービスの利用やITシステムの拡張性を考慮したうえで、業務プロセスの見直しの徹底などをコンセプトに掲げている。「スマート自治体推進PJなど7つのプロジェクトを進めるなかで、東京大学、JAXAが中心となって水位などのデータを利活用した洪水予測の精度向上等に 関する共同研究に長野県として参加することに。その際に、長野県や市町村が保有する河川データや水位、雨量のデータをうまく収集するための仕組みが求められたのです」と同課 檀原正樹氏は説明する。

導入
市町村に負担がかからないクローリング機能に対応できるデータ連携基盤

市町村の数が全国で2番目に多い長野県だけに、新たな環境づくりに向けて各自治体との連携が重要だったという。「政令指定都市のような大きな都市はないものの、小規模な自治体も含めて県内には77もの市町村があり、DX推進に向けて一緒になって取り組むことが、長野県の進めるDXの特長の1つです。これら市町村が持っているデータをうまく収集するためのデータ連携基盤が求められたのです」と永野氏。実は、単独分野でのデジタル化に向けた取組は多く進められてきたものの、複数分野にわたってデータ連携できる環境は未整備の状態だった。「今回の洪水予測の共同研究をきっかけに、データ連携基盤を新たに整備するいい契機になると考えました。最近では国の方でもデータ活用に向けたデータ連携基盤の重要性が話題となっていることから、総務省が実施する地域課題解決に向けたスマートシティ推進事業補助金を活用して、新たな基盤整備を計画したのです」と永野氏は当時を振り返る。

そこで、クラウド環境の利活用や高い拡張性、持続可能な環境整備に向けた事業費低減の工夫など、総務省が掲げる補助事業要件を軸に、データ連携基盤に必要な要件を固めていったという。そのなかでも県独自の機能要件として含めたのが、Webサイトから直接情報を取得するクローリング機能の実装だった。「APIを活用してデータ取得するケースが一般的ですが、市町村側ではデータ連携基盤との接続を考慮して環境整備していません。そのため、個別に改修費がかかってしまうことが想定されました。データ連携基盤を使ったデータ利活用の経験がない市町村も多いため、データ収集はWebサイトをクローリングして県側で取得し、市町村側には負担をかけない形で始める必要があったのです」と永野氏。データ利活用の有用性を認識してもらうためにも、まずは負担なくデータ収集できる機能の実装が重要だったわけだ。

また、事業費低減に向けては、データ連携基盤として内製化できるようローコードツールであることも要件の1つに掲げていた。実は、長野県では、2022年度からデジタル区分の職種を設けてデジタル人材の登用を積極的に行っており、DX推進課においてもIT経験のある檀原氏や同課 主任 吉澤 行宣氏のような人材獲得を行っている。「元々プロパーの職員も含めて、データ追加や変更などの際にも外部に委託する ことなく内製化できる環境を意識して、基盤選定を実施しました」と永野氏。

長野県 企画振興部 DX推進課 主事
檀原 正樹 様

新たなデータ連携基盤を調達するべくプロポーザル方式にて入札を実施し、最終的には株式会社セゾン情報システムズ(現セゾンテクノロジー)のパートナーである株式会社メディアフォース(本社:東京都新宿区)が提供するデータ連携基盤構築サービスが採用され、データ連携基盤の中心としてDataSpider Servistaが、データ活用を推進するための可視化ツールとしてHULFT DataCatalogが導入されることになったのだ。「全体的な提案内容を評価したことはもちろんですが、グローバル含めてデータ連携としての高いシェアを持っているDataSpider Servistaについては、支援の面でも安心感や信頼感があったのは間違いありません」と檀原氏。

効果
県内の全ての自治体全て利用可能なデータ連携基盤の整備に成功

長野県 企画振興部 DX推進課 主任
吉澤 行宣 様

今回実施した長野県スマートハイランドデータ連携基盤構築事業では、DataSpider Servistaを中心にデータ連携基盤を構築し、HULFT DataCatalogにて蓄積された情報のメタデータを自動収集してカタログ化することで、情報の可視化を実現している。2023年4月から運用を開始しており、県が管理する10サイトと市町村側の8つのWebサイトから水位、雨量や積雪量などの情報をクローリングによって定期的に取得。

「Webサイトごとに更新頻度が異なるため、最短で10分ごと、長くて1時間ごとの周期でクローリングを実施し、情報更新を行っています」と吉澤氏は説明する。現在も取得先のWebサイトを選定しながら、市町村の理解を得ながら接続先を増やしていく計画となっている。

収集したデータ活用については、共同研究での利用はもちろん、利用したい企業が県に対して電子申請を行うことで利用可能になり、すでに数社の企業にデータ提供を行っている状況だ。またDX推進課では、HULFT DataCatalogをダッシュボード的に活用し、情報の可視化を行っている。「県内の77市町村全てが連携することを想定したアカウント数を確保していますが、現時点ではスモールスタートした状況にあり、今後はどんな活用をすれば価値が出てくるのか、検討していくフェーズとなっています」と永野氏。将来的には災害時に県民が早期に避難できるようなデータ提供のあり方などを検討していき、防災面での活用につなげていきたいという。

データ連携基盤イメージ

今回DataSpider Servista及びHULFT DataCatalogを活用してデータ連携基盤を整備したことで、洪水予測に必要な各種データの円滑な収集を、市町村に負担をかけずに実現できたことが何よりも大きいという。「クローリングによる他に例がないアプローチのおかげで、市町村側の負担を大きく減らすことに成功しています。また、扱うのがパーソナルデータになってくると許諾の意識を示してもらうオプトインの高い壁が出てくるため、なかなか始めることが難しい。今回はオープンデータに限定した使い方で、市町村側の参入障壁も大きく下げることができました。データ活用の有用性を感じていただくことで、今回の基盤整備を契機にデータ連携基盤への取組が加速しやすい環境が整備できたことも大きい」と檀原氏は評価する。

DataSpider Servistaについては、コードを書かずに処理が容易に追加できる点を高く評価する。

「私自身は元々プログラマーでしたが、知識があまりない人でも関わりやすい。コードにて 開発することとは比べものにならないぐらい容易です。自分たちで手を動かしながら作っていけるため、職員側のスキルアップにもつなげやすい」と檀原氏。HULFT DataCatalogについ ては、「とても見やすく、直感的なインターフェースとなっており、デジタルの専門職でない職員でも使いこなせるはず」と吉澤氏は評価する。

展望
県内全域で活用できるデータ連携基盤へと育てていきたい

今回洪水予測の共同研究に向けてデータ連携基盤の整備を行っているが、77ある市町村全てが参加できているわけではないため、それぞれ意見交換をしながら積極的に話し合いを続け、県内全域で活用できるデータ連携基盤へと育てていきたい考えだ。具体的には、洪水以外の防災や福祉、交通分野など、広域のデータを収集することで新たな付加価値が生み出せる用途への展開は十分考えられるところだという。

「行政系での活用というよりは、県民生活に生かせるデータの集め方や使い方を模索していくことになるはずです。今回のように地域課題解決につながるような個別のプロジェクトでデータを集めて活用していくことを地道に積み上げていきたい」と永野氏は期待を寄せている。今後も、市町村個別にデータを収集して利活用するのではなく、より広域性のあるデータ活用への展開に生かしていけるよう、連携先の市町村との対話の場を設けて、新たな広げ方について議論を深めていきたいという。まさに、県全体でのDX推進に向けた1つの出発点として、今後も積極的にデータ連携基盤を活用していきたいと意欲的だ。

また、長野県や各市町村ともに職員の数が減少していくことが見込まれるなかで、公共サービスの広域化によって全体最適を図っていかないと、その持続性は担保できなくなってくることは十分想定されるところだ。

住民サービスの品質維持やこれまで以上に品質向上させていくためには、まさにデータ連携基盤のような広域性の高いものをうまく利活用していく必要があるという。「デジタル庁が推進するデータ連携やデータ利活用の方向性はこれからも続くと見ており、今回整備したデータ連携基盤の重要性はますます高まっていくことでしょう。そんな政府の動きに合わせて、我々としてもデータ連携基盤を扱える人材をしっかり育成しながら、しっかり対応していきたい」と今後について永野氏に語っていただいた。

長野県 DX推進課

  • 所在地

長野県長野市南長野幅下692-2

  • 概要

長野県内のDXの推進を幅広く担当。デジタル技術やデータを活用した県民生活分野や産業分野などにおけるDXを促進するとともに、市町村とも連携した行政事務のDXを推進。また、デジタル人材の育成・誘致や通信インフラの整備などにも取り組む。

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