データ活用コラム

データクレンジングとは何か?
ビジネス上の意味と必要性・重要性を解説

データを活用するためには、データの正確性や一貫性を保つことが不可欠です。ビジネスにおける意思決定や各種マーケティング施策の効果を最大化するには、蓄積したデータを適切に整理・管理することが求められます。そこで重要になるのが「データクレンジング」です。
本記事では、データクレンジングの基本的な考え方や重要性、具体的な手法をご紹介し、ビジネス上の成果を高めるためのポイントを解説します。

データクレンジング

Yumi Ogawa -読み終わるまで6分

データクレンジングの基本概要

ビジネスの現場では、データを有効活用するために品質の高いデータが欠かせません。データが不正確であったり、一貫性がない状態で分析を行うと、意思決定や施策の方向性を大きく誤ってしまうリスクがあるからです。したがって、データクレンジングは表面的な作業ではなく、企業全体のデータ品質を高める根幹作業として捉え、データクレンジングの概念を理解した上で、正しく行うことが重要になります。

データクレンジングとは?

データクレンジングとは、データベースやスプレッドシートなどに含まれる誤った情報や重複データ、入力ミスなどを修正し、信頼できるデータに仕上げるプロセスを指します。データの正確性や整合性を高めることで、分析の結果精度が向上し、ビジネス上の意思決定をより確実にサポートできます。ダーティデータ(=誤りや欠損などのエラーが含まれる“汚れたデータ”)を放置してしまうと、顧客分析やマーケティング施策に悪影響を及ぼすため、積極的に取り組む必要があります。

データ整理やクリーニング、名寄せとの違い

データ整理とは、フォルダの階層構成やファイル名の付け方など、主に管理や閲覧しやすさを重視する作業を意味します。一方でデータクレンジングは、誤ったデータそのものを修正したり、表記揺れなどを統一してクオリティを高めることに重点を置きます。なお、データクリーニングという用語はデータクレンジングとほぼ同義です。名寄せはデータクレンジングの一種で、重複データ同士を突き合わせ、一意のレコードとして統合する作業を指します。

ダーティデータが生まれる原因

ダーティデータの発生要因としては、人為的な入力ミスや表記ゆれが代表的です。たとえば同じ企業名であっても、スペースの有無や略称・正式名称の違いなどで別々のデータとして登録されることがあります。また、管理体制の不備や運用ルールの共有不足により、複数の担当者が異なるフォーマットで情報を入力したり、更新を怠ったりする場合も少なくありません。こうした要素が積み重なることで、データ全体の品質が低下してしまいます。

データクレンジングの重要性とメリット

データクレンジングによって得られる効果は、企業の競争力向上や信頼性アップなど多岐にわたります。

データクレンジングをすることでデータの信頼性が高まると、ビジネスにおける分析の正確性も高まり、それにより意思決定のスピードも格段に向上します。また、作業効率の改善や無駄なコストの削減が期待できるため、ビジネス全体に大きなメリットをもたらします。

さらに、正しい情報を適時に共有できることで、組織内のコミュニケーションや顧客対応力が強化される点も見逃せません。

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意思決定のスピードと精度の向上

クリーンなデータを基に行う分析は、企業の現状やマーケット動向をより正確に把握する助けとなります。データに誤差や矛盾が多いと分析結果が歪むため、ビジネス戦略の打ち手に迷いが生じる可能性もあります。データクレンジングによって精度の高い結果が得られることで、経営層や現場の担当者が自信を持って意思決定を下せるようになります。

正確なデータ分析による競争力強化

精度の高いデータを素早く分析できる企業は、市場の変化を正しく見極めて臨機応変に先手を打つことができるため、競合他社と差別化を図るうえで大きなアドバンテージとなります。

一方、クレンジングされていないデータに基づく分析では、見当違いの仮説を立てるリスクが高く、施策の方向性がぶれてしまうことで、ビジネスの成長機会を逃してしまう危険性があります。

コスト削減と業務効率・生産性の向上

不正確なデータにまつわる問い合わせ対応やクレーム処理は、企業にとって大きな負担となります。クレンジングされたデータを使用することで、こうした手間を削減でき、貴重なリソースを本来のビジネス活動に集中させることが可能になります。

また、クレンジングされたデータを活用すれば、重複した作業や不必要なプロセスをなくすことができ、全体のオペレーションコストを下げることが可能です。

結果として、組織全体の生産性とスピード感が高まり、より戦略的な取り組みに時間を割けるようになります。

信頼性・ブランドイメージのアップ

常に最新の正確な情報を提供できる企業は、品質管理が徹底されていると評価され、ビジネスパートナーからの信頼度が上がります。データクレンジングを継続的に実施することで、企業全体のブランドイメージや評価を高めることにもつながるのです。

他方、不備のあるデータは、取引先や顧客からの信用を損なう恐れがあります。

ビジネス成長につながる施策の実施が可能

精度の高いデータは、顧客セグメントの細分化やターゲティングを的確に行うために不可欠です。データ品質が向上すれば、マーケティングや営業の戦略立案や施策実施を効果的に行うことができます。たとえば、顧客属性や購買履歴が整理された状態なら、顧客のニーズに合ったオファーを提供できる可能性が高まります。これにより、マーケティングや営業の施策効率が向上し、顧客ロイヤルティを高める効果も期待できます。

データクレンジングの具体例と手法

この章では、実際の現場でよくあるデータクレンジング作業の具体例と、それに対応する手法を紹介します。

日常業務で取り扱うデータは、人の手で入力されることが多く、誤字脱字や表記揺れ、重複登録などさまざまな問題点を抱えがちです。これらを放置すると、後から分析に入った段階でトラブルが発生し、問題解決までの時間やコストが余分にかかります。そんな事態を回避するためには具体的なクレンジング手法を理解しておくことが重要になります。

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データエントリーミスや欠損値の補完

入力時の誤字脱字や空欄を補う作業は、データ品質を維持するうえで基本的なステップです。自社アプリケーションやExcel、フォームの入力規則を見直すことで、エラーの発生リスクを下げることができます。空欄がどうしても生じる場合は、既存の情報から推測し、合理的に補完するか、別途確認作業を行う体制を整えることが大切です。

重複データの統一

同一顧客や同一商品であっても、表記違いや部署ごとの入力方法の違いによって複数のデータが存在してしまうことがあります。こうした重複データを名寄せすることで、データを一つにまとめ、分析効率を高めることができます。名寄せには統合ルールを設定し、一意のレコードとして表記を統一しておくと、検索や抽出を行いやすくなります。

データの標準化と統一フォーマット化

 日付の表記ゆれ(例:YYYY/MM/DDとYY/MM/DD)や、単位の違い(例:cmとmm)など、小さなズレでも大量に集積すると大きなエラーを生む要因となります。あらかじめ統一的なフォーマットを設計し、基準と照らし合わせて修正することが重要です。いかに運用ルールを定めて継続的に管理できるかが、データクレンジングの効果を高めるカギとなります。

不正確なデータの修正例

住所表記の間違いや商品コードの誤りなど、現場でよく発生するデータの不正確さは、後工程に大きな影響を及ぼします。そこで自動バリデーションやシステム上の改修を検討し、誤りを最小限にとどめる仕組みを整備しましょう。定期的に監査や見直しを行い、誤ったデータを即座に修正するサイクルを回すことで、品質低下を防ぐことができます。

データクレンジングのプロセスと進め方

どのような手順でデータクレンジングを実施すればよいのか、代表的なプロセスを段階的に示します。

データクレンジングは一度実施すれば終わりというものではなく、継続的に回していく作業です。まずは現状のデータの品質を把握し、どの部分に重点を置いて整備するかを決めることが大切です。具体的なステップを明確化することで、担当者間の連携やツールの導入もスムーズに進めることができます。

データ収集と品質チェック

最初に行うべきことは、対象となるデータの範囲と性質を明確にすることです。システムやファイルのどこにデータが蓄積されているかを洗い出し、重複や表記ゆれなどの問題点をあらかじめ把握します。この段階でデータの粒度やボリュームを確認しておくと、後の工程で必要なツールや人員が見通しやすくなります。

エラーや不正データの特定と修正

エラーを発見する方法としては、Excelの関数やSQLクエリなどを活用して異常値を抽出する手法が定番です。機械的に検出できるものに加え、BIツールなどを駆使して可視化すると、人の目で見つけやすくなります。修正にあたっては、参照すべきマスタデータや正しい値の照合手段を用意しておくと、作業の精度とスピードが高まります。

データ整理と一貫性の維持

エラーを修正した後は、フォーマットや命名規則を統一し、データの一貫性を保ちます。特に複数の部署やシステムで使用しているデータは、担当者同士の連携が欠かせません。ここで整合性を確保することで、後々の分析やシステム移行の際に無駄な手戻りを防止できます。

プロセスの標準化と継続的な更新管理

クレンジングのプロセスを一度確立したら、それをテンプレート化し、社内に浸透させることが重要です。定期的にクレンジングを実施し、マニュアルやガイドラインを更新し続けることで、データが再び汚れるのを防ぎます。属人化を避けるためにも、担当者の引き継ぎの際にプロセスを明文化しておくとよいでしょう。

データクレンジングの課題と対応策

実際にクレンジングを行う際に直面する課題と、それを解決するための方法を考察します。

クレンジング作業は重要である一方、実施には多くの手間とコストがかかるケースがあります。データ量が膨大であればあるほど、人的作業の負担が大きくなり、ミスの温床となるリスクも伴います。また、属人的な運用に陥ると、特定の担当者が離任した際にノウハウが失われてしまう懸念もあります。これらの課題をどう乗り越えるかがポイントです。

膨大なデータ量への対応

大規模データを扱う場合は、高性能なインフラや専用のデータ処理基盤の導入が必要になるかもしれません。データを分割して処理可能な形式にするなど、作業工程での工夫を行うことも重要です。さらに、バッチ処理のスケジューリングやクラウドサービスを活用して、処理時間を最適化する方法も検討するとよいでしょう。

手作業でのエラー削減と一貫性維持

人の手によるチェックは柔軟性に優れる一方、疲労や認識ミスも発生しやすい側面があります。マニュアルや手順書を作成して標準化するだけでなく、ダブルチェック体制を整えることでエラーの発生確率を下げる工夫が求められます。自動化ツールと組み合わせることで、手作業による修正範囲を減らし、一貫性を保ちやすくすることが可能です。

コスト管理と自動化の活用

データクレンジングには短期的な導入コストや労力がかかりますが、不正確なデータが生み出すロスを考慮すると、長期的には投資に見合うリターンが得られる可能性が高いです。初期は部分的な自動化から始め、効果が確認できれば段階的に拡大していく方法も現実的です。これにより、コストと効果のバランスをうまく取りながら最適化を進められます。

運用の仕組み化で属人化を防ぐ

特定の担当者だけがクレンジング手法を熟知している状態は危険です。属人化を防ぐには、作業マニュアルの整備と定期的な知識共有、研修などが有効です。データクレンジングの重要性と手順を組織全体で理解し、共通言語化することで、クレンジングの精度と継続力が一段と向上します。

まとめ

データクレンジングは、企業が持つデータの信頼性を高め、ビジネス上の意思決定や施策の精度を上げるための不可欠な取り組みです。定期的かつ計画的にクレンジングを行うことで、ダーティデータの発生を抑制すると同時に、企業の競争力や顧客満足度の向上が期待できます。今後データ活用がますます重要視される時代にあって、クレンジングの継続的な実践が企業の成長を支える大きな鍵となるでしょう。

執筆者プロフィール

小川 優美

  • ・所 属:マーケティング部
  • 広告代理店での2年間のコピーライター経験を経て、その後はIT業界一筋。B2CからB2B、日系ベンチャーから大手外資系まで、さまざまな企業での経験が強み。広報、ブランディング、プロダクトマーケティング、キャンペーンマネージャーなど、一貫してマーケティングにまつわるさまざまな業務に従事し、2024年5月より現職。プライベートでは、自然と触れ合うこと、温泉&銭湯が大好き。
  • (所属は掲載時のものです)

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