開発・品質管理・ドキュメントの視点から語る
「HULFT Ver.8.4」
開発者インタビュー

2019年3月、多くの企業に採用いただいているファイル連携ミドルウェア「HULFT」の最新版を3年ぶりにリリースしました。今回リリースしたHULFT Ver.8.4では、開発者はもちろん、品質管理やドキュメント作成など多くのメンバーが使い勝手の向上を意識して機能強化を図りました。そんな新バージョンリリースに関わったメンバーに、今回のリリースに至った経緯やVer.8.4におけるポイントだけでなく、普段の仕事に関する取り組み姿勢などについて聞きました。

多くのお客様にメリットが提供できる機能を強化

3年ぶりの新バージョンリリースですが、具体的にはどんな機能強化が図られたのでしょうか。

株式会社セゾン情報システムズ(現セゾンテクノロジー)
HULFT事業部 製品開発部 ソフトウェアエンジニア 小野寺 彬

製品開発部に所属、HULFT Ver.8.0のころからWindows版のHULFT開発を中心に手掛けており、現在はHULFT-WebConnectを担当。
※所属は取材時のものです。

小野寺
今回は、クラウドとのデータ連携強化やセキュリティ強化、業務自動化/効率化などの機能強化が図られています。1つ目のクラウドとの連携では、IoTなどよりリアルタイム性が求められる環境へのニーズを見据えた少量多頻度転送処理の高速化をはじめ、AWSがサポートする「Amazon Linux 2」への対応などが主なものです。2つ目のセキュリティ強化については、相手先ごとに通信セキュリティモードを設定できるようになるなど、データガバナンス機能の強化を図っています。そして3つ目の業務自動化/効率化は、導入作業を容易にする新インストーラの提供やログ出力機能の改善による運用の効率化、そして製品ヘルプをWeb上に公開し、検索エンジンを用いていつでも参照できるようにしました。

今回のリリースではどんなことを意識されたのでしょうか。

小野寺
お客さまからいただいたご要望のなかで、多くの方にメリットが提供できる機能を中心に実装しました。今回は初めてHULFTを導入する方をターゲットに、インストーラの機能をシンプルにしました。以前は13ステップほどあったものが、今回はわずか4~5ステップあればインストール可能です。また従来のHULFTでは比較的大きなファイルを転送し、バッチ処理が中心でしたが、IoTをはじめとした時代の要請に対応すべく、少量多頻度転送処理の高速化などの強化を図っているのが1つのポイントです。他にも、ファイル転送の領域で多くの企業が使っているSFTPとのシームレスな連携も可能な機能を強化しています。

手作業と自動化を合わせ4万件以上の検査を実施

品質面での検査を手掛ける視点で、今回のVer.8.4に関してご苦労されたところはありますか。

株式会社セゾン情報システムズ(現セゾンテクノロジー)
HULFT事業部 カスタマーサービス部
品質マネジメントグループ 品質マネジメントエンジニア 加納 和美

HULFT全般にわたっての検査業務はもちろん、顧客からの問い合わせ分析やリリース後の障害の分析なども手掛けている。
※所属は取材時のものです。

加納
今回の新バージョンリリースはマルチプラットフォームの同時対応となったため、リファレンスとなるプラットフォームがなく、1つの機能に対してメインフレームでもオープン系でも同じ動作を同時に作りこむことが求められました。プラットフォームごとに、C言語やアセンブラなどの開発言語や開発メンバーが異なるため、詳細な技術仕様の解釈が異なるケースが稀に発生しました。品質管理の立場では、各プラットフォームの開発物の検査を我々が一手に担うことになるため、その違いが把握しやすい状況にあります。うまく合わせてもらうことをお願いしながら進めていきました。

検査業務においてはどのようなことを行うのでしょうか。

加納
昨年私が中途で入社した時期は、ちょうどメインフレーム版の検査が行われているタイミングでした。手作業での検査だけでなく、自動化した検査も数多くあり、全体の検査項目数は4万件以上と、かなり詳細な検査が実施されている印象を受けました。実は、入社2週間後にデータセンターでテープの出し入れをしながら検査するといった作業を私自身が行ったのですが、ここまで細かく検査するのかと驚いたほどです。これが高い品質を維持するために必要なことだと今では実感しています。

HTML版マニュアルをWebに公開 Google検索が可能に

ドキュメントチームとしてHULFT Ver.8.4で新たな試みはありましたか。

株式会社セゾン情報システムズ(現セゾンテクノロジー)
HULFT事業部 カスタマーサービス部 テクニカルドキュメントグループ
テクニカルドキュメントエンジニア 田中 洋平

取扱説明書や改版情報、リリース文書などHULFT Ver.8.4に関連した日英中のドキュメントにおいて日本語を担当。
※所属は取材時のものです。

田中
これまではサポート契約をいただいていたお客様のみが閲覧可能なWebページにPDF版マニュアルを公開していました。今回初めての試みとして、HTML版マニュアルのWeb公開を行いました。Google検索でHULFTのエラーコードなど知りたいことを検索すれば、すぐに調べられるようになっています。海外も含めてマニュアル公開は一般的な潮流となっており、遅ればせながらこのタイミングからWeb公開に踏み切りました。実は事業部内で公開の是非に関する議論もあったのですが、お客様の検索による利便性であるとか、PDFに比べても内容の変更や改変などが容易になるといったメリットもあり、最終的には事業部内だけでなく、パートナー様やお客様からもご好評いただいております。

HULFT8 Windows版Webマニュアル画面

ソースレビューを徹底することで、高い品質を維持

普段の開発で意識されていることはどんなことでしょうか。

小野寺
HULFTは安全安心をうたったソリューションであり、開発の場面でも品質はとても重視しています。ソースレビュー1つ見ても、例えば私のいるオープン系の開発チームでは最低でも自分以外の2名が他の人が書いたソースをチェックし、記述の仕方に問題があれば相互に指摘するというやり方を採用しています。お客さまの目に触れないソースの書き方一つとっても、バグの温床になってしまう可能性もあるわけで、レビューにも時間を割くようにしています。テストについても、自動化されているもの以外でも数万に及ぶ項目チェックを開発段階で行うなど、しっかりとした品質が維持できるように心掛けています。ソースが綺麗かどうかの指摘も行いますが、その定義は正直難しく、メンバー同士でも議論が沸き起こるほど。たとえ自分がいいと思っていても、相手からしたら美しくないといった意見が寄せられることも正直あります。このようにメンバー同士で切磋琢磨してくことでよりいいものが出来上がると考えています。

メインフレームの開発に関して、オープン系との違いはありますか。

株式会社セゾン情報システムズ(現セゾンテクノロジー)
HULFT事業部 製品開発部 ソフトウェアエンジニア 荒井 亮汰

入社以来、製品開発部に所属。HULFT Ver.8.4ではメインフレーム版のHULFT開発を手掛けており、現在は小野寺と同じチームでHULFT-WebConnectを担当。
※所属は取材時のものです。

荒井
私自身は、HULFT Ver.8.4のプロジェクトでメインフレームを担当していましたが、オープン系とは全くソースづくりの発想が異なります。そもそも1行が80バイトと決まっており、変数に関しても8バイトでしか名前が付けられず、どうしても視認性が悪くなってしまうものです。そこで、できるだけ分かりやすくするためにコメントを多く記載するようにしています。また、個人的には設計の最初から開発の最後までかかわることのできた初めてのプロジェクトがこのHULFT Ver.8.4でした。今回は、とある1つの機能を任せていただいたのですが、ユーザーにとっての使いやすさという視点と、今後別のメンバーがメンテナンスしやすいソースづくりという2つを意識して作っていきました。若いメンバーに1つの機能を任せる、挑戦させてくれる環境があるのはとてもありがたいですし、それに対して設計の段階から手厚くレビューしてくれるという環境も用意されています。人材教育の視点を持ちながらも、品質へのこだわりを強く持った職場だと実感しました。

品質部門は障害を出さないための最後の砦
ファーストユーザーの視点で検査に着手

普段から品質に関する検査業務にどんな思いで関わっていますか。

加納
品質管理部門としては、障害を出さないための最後の砦としての重責を担っているわけですが、開発したものに初めて触れるという立場もあるため、まずはファーストユーザーという視点で検査に入るようにしています。きちんと動いてもユーザーの立場として使いにくい部分はしっかり指摘しますし、開発後の検査だけでなく設計書の段階から開発と積極的にやり取りしています。

品質管理における基準は、どんな考え方に基づいているのでしょうか。

加納
品質管理基準については、長年蓄えられた社内の知見をベースに、障害のランク付けなども踏まえて検査項目を分類し、あるラインを超えると品質会議を行います。また、社内のナレッジだけでなく、Open Dependability through Assuredness(O-DA)と呼ばれる、高保証性を持つアーキテクチャを開発するためのフレームワークとガイドラインを定義したオープングループに参加しており、この基準も取り入れながらさらなる品質改善につなげるための仕組みづくりを行っていく予定です。アジャイル開発など新たな手法に対して、品質をどう保証していくのかの議論を進めていく過渡期にあります。これからも時代に適合した新たな品質基準を検討していきながら、検査技術を高めていきたいと考えています。

分かりやすさとスピード感を持った対応で
「お客様に寄り添う」マニュアル作りを追求

ドキュメントチームにおける仕事の進め方について教えてください。

田中
ドキュメントチームでは、「お客さまに寄り添う」というキーワードを大切にしており、分かりやすさの追求とともに、スピード感を持って進めていくことが重要だと考えています。お客さまにご提供するマニュアルだけでなく、マニュアル用の設計書を作成し、開発部門や検査部門にレビューを依頼して、技術的な抜け漏れや間違いを防いでいます。
なお今回のWeb公開では、ペルソナという、マニュアルをお使いいただくユーザー像が改めて問われました。今のマニュアルに慣れ親しんだお客様からはご好評のお声を聞くこともありますが、初めてHULFTに触れる方にも使いやすいマニュアルであるべきではないかと考えました。今回は多少の改善を加えられたものの、この辺りの整備は現在でも課題が残っていると感じています。

マニュアルもターゲット設定とともに折り合いをつけていく必要がありそうですね。

田中
お客さまに寄り添うという意味では、スピード感が重要だと考えています。何かあればすぐに修正して提示できる、マニュアルとは別に補足ページを作るといったことも、スピード感を持ってやっていくことが重要になってきます。この方針はリリースした後も継続した改善に繋げていきたいと思います。

今後について

今後についてそれぞれ教えてください。

小野寺
現在はHULFT-WebConnectに関する新たな機能を実装している最中で、より多くのお客様にも安全安心なファイル転送が可能になる仕組みが提供できるよう、鋭意開発を進めています。HULFTはすでに多くのお客さまにご利用いただいていますが、まだご利用いただいていないお客様にも価値を訴求できると考えています。ご利用いただく方のペルソナを設定したうえで、使いやすい体験につながるようUXにも注力していきますので、そのあたりも含めてご期待いただければと思います。

荒井
技術の移り変わりが激しい今の時代ですが、迅速に追随していけるような開発が必要です。これまで通り高い品質を確保することはもちろんのこと、お客さまに対してよいものを素早くお届けするスピード感のある開発を心掛けていきたいと思っています。もちろん容易なことではありませんが、開発部門としてスピード感のある対応をしていきたいですね。

加納
HULFTに限らず、品質は我々が一番考えていかなければいけない部門です。これまで培ったノウハウは生かしながらも、アジャイル開発といった新たな開発手法に対する品質の考え方やその検証方法などはもちろん、UIやUXといった、これまでとは違う視点での品質をどう考えていくべきなのかという、新たな時代の品質への取り組みも現在進めています。品質の担保はもちろん、魅力的な品質の製品を世に送り出していくための施策に今後も取り組んでいきたいと考えています。

田中
誤解なく伝わる、分かりやすさを追求していくことはもちろんですが、開発メンバーが語った通り、スピード感を持ってリリースしていく流れにドキュメント側でもついていくことが必要です。そのためには、特定機能を先行的にリリースしながら、市場のなかでドキュメントを育てていくような、従来とは異なる手法も検討していきたいと考えています。また、企画の段階からドキュメントチームもプロジェクトに参画し、ペルソナに向けて最適なユーザー体験が提供できるようなドキュメントづくりにも取り組んでいきたいと考えています。

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