データ活用やDXがどんどん解る用語集  
オンプレミス

「オンプレミス」

データ活用やDX成功に必要な考え方を、各種キーワードの解説で理解できる用語解説集です。
今回は、クラウドと対比されて利用されることがある言葉「オンプレミス」について解説し、それを通じてクラウド時代のIT活用の本質について考えます。

オンプレミスとは

オンプレミス(on-premises)とは、物理的なサーバなどのハードウェアやソフトウェアを、自社が管理している場所に設置して運用することをいいます。
昨今においては、クラウド上で動作するソフトウェアを利用することが多くなりましたが、「クラウドではない」ことを指す言葉として使われています。プレミス(premise)とは「構内」の意味で、自社の構内で運用しているITシステムというようなイメージの言葉です。日本では「オンプレ」と略されることがよくあります。

オンプレミスのITシステム

オンプレミスという言葉は、最初は新しく出てきたクラウドと、それまで普通だった自社運用でのIT利活用を区別するために使われるようになりました。しかし今や、クラウド上での運用が当たり前になりつつあり、オンプレミスのITシステムの方が例外的な状況になってきました。今後はオンプレミスとはどういう状況のことなのかの方が、説明が必要になることが多くなるのではないかと思います。オンプレミスでシステムを構築して運用するとは以下のような状況でITシステムを運用することをいいます。

まずサーバ(コンピュータ)を買ってきます。高信頼性で高性能ですが、例えば数百万円など一般のPCよりもはるかに高価なことが多いです(その代わりに何かトラブルがあったらメーカーの技術者が飛んできて対応してくれたりもします)。他にもいろいろ高い機器を買ってラックに組んでシステムにします。

サーバが熱で傷むようなことや熱暴走しないよう空調も効かせます(電気代もかかります)、停電対策でUPSも設置します。サーバのあるところに良く解らない人が入ってこないように、暗証番号を入力しないと入れないような部屋を作るか、そういう場所(データセンタなど)を借りてサーバルームにします。設置場所そのものにもお金がかかるわけです。

上記はハードウェアだけの手間ですから、加えてソフトウェアもOSのインストールから自分たちで行わないといけません。このような様々な手間をかけてIT基盤を構築して運用する専門の技術者、インフラエンジニアも必要になりました。

コストや期間がかかり、利用開始するだけで大変です。自社でシステムを運用するとはパソコンを買うくらいのイメージだった人もいるかもしれませんが、実際には不動産に関する話に近いような大変さがITにもかかわらずありました。

どうしてオンプレミスなのか(守りの理由)

クラウドが普及するまでは上記のようなことは当たり前でした。またそのような状況で、初期費用無しで瞬時にITを利用開始できるクラウドが登場したことは、どれだけ衝撃的なものだったかもイメージできるかと思います。

オンプレミスはいろいろ大変で、クラウドならそのような手間はかかりません。ならばどうしてオンプレミスのシステムが残っているのかな?と思うかもしれません。しかしながら様々な理由で現実にはそう簡単な話ではないことがあり、仕方ない理由でオンプレミスが残っていることもありますし、むしろクラウドにするべきではない理由がある場合もあります。

まだ移行していないから

2010年の時点ではクラウド上で業務システムを動かすのはまだ先進的な取り組みでした。クラウドみたいな良く解らないものをビジネスで使って大丈夫なの?という認識が当時でもまだ大半。それからまだ長い時間が経っていません。

困っていないから

今使っているシステムで(とりあえずは)困っていないのなら、移行しなくても不便はないということになります。今後の別のタイミングでもかまわないことになります。

コストがかかるから

オンプレミスは初期費用がかかりますが、構築済みのシステムならその費用は支払い済みです。むしろ新たにクラウドへの移行費用がかかります。

リスクがあるから

クラウドに移行しようとして不測の問題があるかもしれませんし、同じ利用感で使えないかもしれません。コストやリスクを負ってまで移行する理由が(自分たちには)見つからない場合もあります。流行りに踊らされずに、実績のあるシステムを手堅く使い続けることが賢明な判断なこともあります。

移行できない要素があるから

メインフレームやINS回線など古い技術のシステムがあってまだ活躍している場合などクラウド移行に適さない要因があり、クラウド移行が難しいことがあります。

例えばメインフレームのシステムは非常に安定稼働していて今でもビジネスには欠かせないが、プログラムの仕様がもはやはっきりしないような場合、現状システムの仕様の解読作業など大変な作業を経ないと移行できません。そこまでしても得るものがない場合には、現行のまま塩漬けが正解になることもあります。

クラウドに移行できないシステムがあると、そのシステムと連携して動作するシステムも現実問題として、同じくクラウドに移行しない方が良くなることがあります。例えば、取引先のシステムがINS回線の利用が必須であるなら、自分たちだけ旧システムを廃止することは難しくなります。

Excelが大好きだから

クラウドにしたいけれど、現場がExcelを大好きすぎて移行が難しいような状況、あるいはAccessやFileMakerで作ったシステムが現場に普及しすぎていて難しいようなこともあります。自社でサーバを運用するような話とは少し違いますが、こういう状況もクラウドにすることが難しいオンプレミスの状況と言えます。

そのような状況でも、例えば強権によってクラウドを強制することもできますが、現実的に業務が回らなくなってしまうなど、失うものがあるケースはあるはずです。

どうしてオンプレミスなのか(攻めの理由)

積極的にクラウドにしない理由もあります。特に今後、クラウドがごく普通になってくることで、むしろ「攻めの理由でオンプレミスにする」ことも出てくると思います。

自社に適したITシステムにできるから

クラウドを利用する場合は、何かしらの形で提供されているサービスに合わせてITシステムを作ることになり、自分たちの自由にできないことがあちこちで出てきます。

自分たちの都合にあわせたハードウェア構成にする、あるいはパッケージソフトウェアを自社の都合にあわせてカスタマイズするようなことは、オンプレミスの方が実施しやすいことがあります。何もかも自由にしたいのであれば(あるいはお客さんにそういう価値を売り込むなら)、自分たちで担うしかありません。

高いセキュリティが必要だから

クラウドサービスを利用する場合、インターネットを経由して離れた場所のIT資源の利用になるために高いレベルのセキュリティの確保が難しい場合があります。自社でシステム運用をし、物理的に強固に保護されたシステムで運用すれば、情報の漏えいなどは原理的に発生しづらくなることが多いはずです。

物理的に隔離されていても攻撃されることはありますし、クラウドでも様々に工夫ができますが、何か事故があった時にどちらが「仕方ない」と思ってもらいやすいかというと(今ではまだ)自社での慎重な運用ではないかと思います。セキュリティ最優先を売りするなら、クラウドではないことは今後ますますPR材料になる可能性もあります。

クラウドよりも効率的で安いこともあるから

例えば、とにかく24時間ずっとGPUをフル稼働させたい用途でシステムを組むとします。そういう場合には自前でハードウェアを買ってきて、それを余すことなくフル稼働させた方が安く済むこともあります。他社と極限領域でのコスト勝負をしている場合は(暗号資産の採掘など)、その差が勝敗を分ける場合もあるでしょう。

また従量課金のクラウドだと費用がいくらかかるか解らない状況でも、自社でハードウェアを保有して運用していれば予想もしないような利用や高負荷時にも想定外のコストがかかる可能性をなくせるなど、コストの予測がしやすくなることもあります。

低遅延だから

クラウドは離れた場所にあるコンピュータを利用するために通信遅延が生じます。信号そのものが光の速度を超えて通信できませんし、通信経路の途中の様々な処理で遅延が生じます。高いリアルタイム性能が求められるニーズでは、「その場所」にコンピュータを配置しないと処理できないことがあります。

例えば、10ms以内に処理結果を返すことはクラウドなら困難ですが、手元での処理なら少し頑張れば実現できてしまいます。機械のリアルタイム制御のようなニーズや、人間に高度な利用体験を提供する必要がある場合、あるいは株式の高頻度取引(HFT)を担うシステムのように一瞬でも相手よりも処理が速いことにより勝負している場合には、クラウドではないことは強みになるはずです。

オンプレミスはクラウドと組み合わせて利用しよう(解決策)

「仕方ない理由(守りの理由)」「攻めの理由」があることを紹介しました。しかしだからと言って、いまどきクラウドを利用しないのはちょっと大変です。でも、どちらか片方だけを選ぶ理由はありませんよね。両方の良さを組み合わせて利用すればいいだけです。

「仕方ない理由」と共存しつつクラウド化に取り組んだ方が、勇ましく破壊的にフルクラウドにするよりもうまくいく場合は多いのではないでしょうか。

また今後、クラウドが当たり前になればなるほど、オンプレミスの強みも使いこなせている方が、他社に対して優位に立てる可能性もあります。「攻めの理由」のオンプレミスはむしろ「これから」重要になる可能性すらあります。

まだ移行してないから

クラウドとオンプレミスを連携し、移行の時期や事情が整ったところから順次移行すれば無理なく取り組むことができます。

困っていないから

不満のない既存システムを温存し、それでもクラウド時代だから必要でしょ?の部分はどこかしらあるはずですから、そこからクラウドサービスとオンプレミスを連携させて活用することができるでしょう。

コストがかかるから

クラウドとオンプレミスを連携し、コストをかけずに移行できるところや、コスト削減が見込まれる部分から順次移行することができます。

リスクがあるから

クラウドとオンプレミスを連携し、リスクがあると考える部分はオンプレミスに残しましょう。

移行できない要素があるから

無理に移行せずにオンプレミスに残してクラウドと連携することがむしろスマートでしょう。例えば、いまでも活躍しているメインフレームがあるなら、それをクラウドと連携すれば無理して移行せずに良いところ取りができます。

連携すれば、メインフレーム(例えばAS/400)の安定稼働と、kintoneの今のITの使いやすさを両方生かすようなことができます。

Excelが大好きだから

例えば、現場がExcelを大好きすぎて導入したkintoneを使ってくれない。そういう場合にもExcelとkintoneを連携すれば、Excelじゃないとダメな人たちに配慮しつつも、クラウド活用も進めることができるでしょう。

自社に適したITシステムにできるから

オンプレではないと作れない部分はオンプレで作って差別化し、差別化しなくてよい部分はクラウドとして連携すれば、より無理をせずに意図したシステムが作れる可能性があります。

高いセキュリティが必要だから

システム全域、IT利活用の全てで最高度のセキュリティが必要なケースは多くないはずです。むしろ、範囲を限定してその範囲を徹底的に守った方がセキュリティ確保は容易なはずです。ならばその部分をオンプレミスに残し、それ以外はクラウドにして連携することでより高いセキュリティを実現できることもあるでしょう。

クラウドよりも効率的で安いこともあるから

自前でハードウェアを持つことが強みにつながる部分はオンプレで確保し、それ以外をクラウドにして連携すればより現実的に強みを発揮できるでしょう。例えば極限のコスト追求としてオンプレを活用するなら、クラウドの方が安い部分はクラウドにして連携した方がより安いはずです。

低遅延だから

高いレスポンスが求められる処理はその場に残し、それ以外の処理はクラウドに移して連携することができます。あるいは、クラウドサービスだけでは実現できない低遅延性を、オンプレミス側にもシステムを配置して連携することで実現できます。

オンプレミスとクラウドの連携はどうすればいいか?(解決手段)

だからと言って、オンプレミスとクラウドの連携はどうやって実現するのか、その部分が大変だったら意味がないじゃないか、と思われたかもしれませんが、実は、そのような「つなぐ」処理をスムーズかつ効率的に実現する手段が既に用意されています。

EAI」や「ETL」と呼ばれるソフトウェア製品、あるいは「iPaaS」と呼ばれるクラウドサービスが、オンプレミスとクラウドの連携をスムーズに実現する手段として利用できます。GUI上で接続先のアイコンを配置して各種設定をするだけで、必要に応じてクラウドからオンプレミスまで多種多様なシステムやデータとの連携処理を実現できます。

クラウドに移行できないシステムが残ってしまっていて困っているようなケースは良くあることだと思います。クラウド導入はこんなに無理をしないといけないことなのか?と疑問に思ったことのある人もいるかもしれません。オンプレミスとクラウドの連携を活用すれば、きっとうまくゆきます。「つなぐ」技術を試してみてください。

関係するキーワード(さらに理解するために)

  • EAI
    • -システム間をデータ連携して「つなぐ」考え方で、様々なデータやシステムを自在につなぐ手段です。IT利活用をうまく進める考え方として、クラウド時代になるずっと前から、活躍してきた考え方です。
  • ETL
    • -昨今盛んに取り組まれているデータ活用の取り組みでは、データの分析作業そのものではなく、オンプレミスからクラウドまで、あちこちに散在するデータを集めてくる作業や前処理が実作業の大半を占めます。そのような処理を効率的に実現する手段です。
  • iPaaS
    • -様々なクラウドを外部のシステムやデータと、GUI上での操作だけで「つなぐ」クラウドサービスのこと。
  • SaaS
    • -一般的に「クラウド」と言ったときにイメージされる、ソフトウェアの利用をサービスとして提供する取り組みのこと。

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「つなぐ」ツールの決定版、データ連携ソフトウェア「DataSpider」および、データ連携プラットフォーム「HULFT Square」

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通常のプログラミングのようにコードを書くこと無くGUIだけ(ノーコード)で開発できるので、自社のビジネスをよく理解している業務の現場が自ら活用に取り組めることも特徴です。

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