データ活用やDXがどんどん解る用語集
IaaS
「IaaS」
データ活用やDX成功に必要な考え方を、各種キーワードの解説で理解できる用語解説集です。
今回は、クラウド時代が始まった時にできた言葉「IaaS」について解説し、それを通じてクラウド時代のIT活用の本質について考えます。
IaaSとは
IaaS(Infrastructure as a Service:アイアース、イアースなど)は、インターネット回線経由で、仮想マシンやネットワークなどのIT基盤を提供するサービスのことです。
ITシステムを構築し利用するにあたって必要になるハードウェア資源を素早く確保することができ、自社でハードウェアを保有する必要をなくすことができます。そのことにより、従来よりも低い初期費用・短い期間・高い柔軟性のシステム構築を可能にするサービスです。
IaaSまでの話
ソフトウェアは必ずハードウェア上で実行されており、何らかのデータが記録されているのであれば必ずハードウェアの記憶装置に格納されています。それは今も昔も変わりません。
ハードウェアが自前だった時代
例えば20世紀においてITシステムを利用するときには、そのために必要なハードウェアを調達することはほとんど当然のことでした。ITの導入とはすなわちハードウェアの導入でもありました。メインフレーム時代では、そもそもITビジネス自体がハードウェアを売ることでありソフトウェアはそのオマケだった時代すらありました。
その後、ソフトウェアがより重要な要素になりますが、ITを活用するためにはまずハードウェアを用意しなければならない状況は続きました。
用意した高価なハードウェアは、サーバルームできちんと管理して運用しました。空調で温度が上がり過ぎないように管理し、停電でデータやハードが壊れないようにし、物理的なセキュリティ確保ももちろん自前。ハードウェアが故障したら交換する作業も必要になります。そのような運用のためのエンジニアも必要になりました。
ハードウェアを安心して置ける管理万全の建物が「データセンタ」として提供されるようにもなりましたが、それを利用してもハードウェアの用意や運用を担当するエンジニアの確保は基本的に必要でした。
つまり、ITシステムを利用するためには、ソフトウェアそのもの以外に多くの手間やコストが必要になる時代がかつてありました。
レンタルサーバ
インターネットが普及し始めたころ、ハードウェアをインターネット経由で貸す事業「レンタルサーバ」が、広く使われるようになります。今やその分野で日本最大級の企業である「さくらインターネット」は1996年に創業しています。
※補足:今では「さくらインターネット」もIaaSのサービスを提供しています
インターネットが爆発的に普及する中、従来よりも低価格で自分で保有せずにサーバが利用可能になったことで、個人や小規模でのWebサイト構築やWebアプリ開発などで活用されるようになります。ソフトウェアを実行するハードウェアが、低コストかつ迅速に利用可能になる変化でした。
しかし企業活動を支えるITシステムなど、本格的なプロユースでは自前のハードウェアでの運用が普通でした。また、レンタルサーバでもサーバのソフトウェア的な管理と運用の手間は依然として必要になりました。
IaaS
旧来のソフトウェア利用と比べて優れているところを簡単にまとめました。
IaaSの代表的なサービスであるAmazon EC2が2006年から提供されています。AWSの黎明期からあるサービスで、今日の大繁栄に最初の一歩を作ったサービスと言えます。
レンタルサーバとIaaSの違いは、IaaSは仮想マシンとして資源が提供されるなど、抽象度が高い形でハードウェア資源が提供されるところでした。ただしこの違い、その当初においても、旧来のレンタルサーバや自社でのハードウェア保有とどのように違うのかは理解されにくいものでした。しかしその後、IaaSはITインフラの世界に破壊的な変化をもたらします。
昨今世の中で、今後分野を問わず、デジタルにより状況が破壊的に変わる可能性や、プログラミング能力の重要性が説かれることがあります。引き続いて、IaaSがどう状況を変えたのか説明をしますが、ある分野でそのような変革が起こった例として読むこともできます。
IaaSによりITインフラに起こった革命
仮想マシンとしてサービスが提供されるだけ、最初は「その程度」にも思えたIaaSでしたが、その後ITの従来の常識を覆し、ITシステムの考え方を変えるほどの大変化を発生させます。
安全安心の作り方が変わった
業務のためにITシステムを作ったなら、システム障害は困ります。しかしどうしてもハードウェアが壊れるなどで事故は起こってしまいます。そこで従来は、プロ用の高価な高信頼性ハードウェアを使ってシステムを作り、さらにシステムを多重化して対応してきました。
例えば、システムAとBを構築しておき、Aが障害を起こしたらすぐさまBでの稼働に切り替え、夜中だろうと台風だろうとエンジニアが駆けつけてAの復旧作業を行います。手のかかる復旧作業を経て、AとBによる再度安全な稼働状態に戻す運用です。
しかしIaaS、例えばAWSでは違う方法が推奨されていました。まず高価で壊れないハードウェアではなく時々壊れる前提で安価なハードウェアを使います。同じく多重化で対策をしますが、システムAが障害で落ちたときには、なんとAを復旧させずに捨ててしまいます。変わりに新しくCを起動して復旧します。ストレージ、ロードバランサなど、基本的にハードウェア資源は障害が起こったら復旧せずに捨ててしまいます。
リソースが仮想的に提供され、利用したいと要求したらすぐ利用できるクラウドならではの考え方です。障害対策以外にも、利用者の急増にも仮想マシンを急きょ増やして対応できますし、利用がない時間帯は仮想マシンを停止して利用コストを減らすこともできました。しかし、その代わりに「いかなるマシンもいつ障害を起こして止まるかもしれない」前提、クラウドネイティブな考え方で、システムを設計しておく発想の転換が必要になりました。
このようなやり方は、従来のように自社でハードウェアを持っている場合できませんでした。障害を起こしたらサーバを投げ捨てることは出来ませんし、新規購入した物理サーバが5分後に届いて利用可能になる状況も起こりえないことです。2010年ごろにこの新しい考え方が、一種の衝撃と共に知られ始めるようになります。
Infrastructure as Code(IaC)
ハードウェアでの運用なら、サーバの切り替えは人力での作業が必要になりました。しかし、仮想化された資源なら物理的作業も不要になりました。障害を起こしたサーバを切り離すのも、新しいサーバの用意や設定も画面上の操作だけです。
物理的な作業が必要ないなら、そもそも人間が作業する必要すらなくなりました。必要なハードウェア資源は仮想化されていて、必要に応じて呼び出せます。サーバの障害を自動検知する手順や、検知した後にITインフラに対して行う作業を「コード」として書いてしまえば、もはや障害発生時にサーバ管理者のやっている作業が完全自動化できたのです。
そうなってくると従来あり得なかった世界が実現しはじめます。
ハードウェアレベルでの運用管理なら数十台のサーバでも大変ですし、ソフトウェアレベルでの運用管理だったとしても数百台のサーバの運用管理は容易ではありません。しかし、ハードウェア資源の確保から運用まで全てをコードで書けるようになったため、大量のサーバの複雑な運用作業すら少人数で実現可能になってきました。
さらには、旧来なら本格的なITインフラと多数のインフラエンジニアでの大がかりな運用が必要になるような基盤すら、コードを書くだけで実現し自動運用できるようになってきます。例えば、普段は最小限のサーバ構成で運用し、利用負荷が高まったら自動検知して大量のサーバを起動して巨大サービスとして稼働するようなことも、さほど難しいことではなくなりました。
しかも上記は起こった変革のまだまだ一部です。他にもマネージドサービス(自分で運用しなくても利用できるサービス)や、コンテナ技術によるマイクロサービスの登場、サーバレスないしはFaaSの登場など、旧来のハードウェアでの運用とは隔絶した新しい世界が実現しています。
⇒「マネージドサービス」の記事はこちらにあります。
⇒「サーバレス(FaaS)」の記事はこちらにあります。
この変化の本質は、仮想化されることで実質的に物体ではなくなったITインフラが「ソフトウェアのようにコードとして記述できるようになった」ことでした。そこで、この変化を「Infrastructure as Code」(「コード」としてのITインフラ)と呼ぶことがあります。
ノーコード/ローコードで「コードの時代」に備える
昨今、DXとかデジタル変革とか言われます。「デジタルにしたから何なんだ?」とか「本質は変わらないのに表面的なことで騒いでいる」と思う人もいるかもしれません。確かにそういうところもありますが、今後「ITインフラでのIaaSとおなじようなこと」があらゆる分野で発生しても何も不思議ではありません。
昨今、プログラミング能力(自分の意図をコードとして書けること)が今後重要であると言われていますが、ご自身が関連する分野で同じ大変革が起こったと仮定すると、その重要性も理解できると思います。全てがプログラムコードになる未来が到来するかもしれないのなら納得でしょう。
これからの時代は、誰でもプログラミングのスキルは身につけておいた方が良いでしょう。だからと言って、実際の業務で全員がPythonのコードを書くような状況もやりすぎで大げさな感じがあるのも事実です。
そこで活用できるのは、こちらも昨今話題になっている「ノーコード」や「ローコード」のツールや、あるいは従来から活用されているExcelやkintoneなどです。それらを各人がプログラミング能力を発揮する手段として活用するとちょうどよいのではないでしょうか。
ノーコード/ローコードで、我々もIaaSを使いこなせる
例えばIaaSで考えてみましょう。AWSで本格的なITインフラを作るようなことは多くの人には過ぎたるタスクでしょう。しかし、出社時間前に部門の業務アプリが入ったサーバを起動し、定時になったらシャットダウンすることで経費を削減し、不正利用も防ぐような活用方法なら、多くの人にも十分にできることです。
ノーコードツール、例えばGUI上での操作だけで多種多様なシステムやデータに連携できるiPaaSを活用すれば、ソースコードを書くことなくIaaSを活用することができます。インフラエンジニアによるIaaS活用のような本格的なITインフラの構築は難しいかもしれませんが、その代わりにIaaSに限らない多種多様なリソースへの連携や処理の自動化が実現可能になります。
むしろ多くの業務の現場の人には、IaaSでガチのITインフラの作りこみを極めるよりも、Slackに「サーバを起動したよ」と通知してあげる作りこみができるとか、kintone上に作ったサーバ起動スケジュール表を読み取って、それに従って起動しシャットダウンできる方が進んだ取り組みだと言えるのではないでしょうか。業務の現場のニーズを「コードとして」深く作りこむ用途には、むしろ優れているとさえ言えます。IaaSで起こったような、「全てがコードになる未来」は、思ったよりも手に届くところにあります。
関係するキーワード(さらに理解するために)
- オンプレミス
- -ITシステムを構成するハードウェアを、自社の管理下の場所に設置し、自社管理でシステム運用する形態のこと。クラウド前提の時代になっても、現実的にオンプレミスとの併用は必要となることが多く、クラウドとうまく組み合わせて利用することが求められます。
- SaaS
- -一般的に「クラウド」と言ったときにイメージされる、ソフトウェアの利用をサービスとして提供する取り組みのこと。
- PaaS
- -プラットフォームをサービスとして提供する取り組みのこと。SaaSやIaaSとの違いが理解しづらいために混同されることもあります。
- FaaS(サーバレス)
- -クラウドによるITインフラ抽象化の一つの到達点で、ITインフラの存在を意識することなくプログラムコードを実行できる環境にまで進化したクラウド上のIT利用環境のこと。
- iPaaS
- -様々なクラウドを外部のシステムやデータと、GUI上での操作だけで「つなぐ」クラウドサービスのこと。
- XaaS(SaaS、PaaS、IaaSなど)
- -クラウド時代がもたらした大きな変化「サービス化」の本質については解説をしています。ITにとどまらず、今後の世の中を変えてゆく流れ。IaaSもこの一種だといえます。
- EAI
- -システム間をデータ連携して「つなぐ」考え方で、様々なデータやシステムを自在につなぐ手段です。IT利活用をうまく進める考え方として、クラウド時代になるずっと前から、活躍してきた考え方。
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当社で開発販売しているデータ連携ツール「DataSpider」は長年の実績がある「つなぐ」ツールです。データ連携プラットフォーム「HULFT Square」はDataSpiderの技術を用いて開発された「つなぐ」クラウドサービスです。
通常のプログラミングのようにコードを書くこと無くGUIだけ(ノーコード)で開発できるので、自社のビジネスをよく理解している業務の現場が自ら活用に取り組めることも特徴です。
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