導入事例 | 株式会社セブン銀行 様
AI・データ活用の全社浸透を目指すセブン銀行
データ連携基盤・生成AI活用環境の実装にHULFT Squareが貢献

- 業種・業態
- 金融・証券
- 導入製品
- HULFT Square
- キーワード
- データ連携基盤 / 会計システム連携 / データ活用 / DX / 生成AI
『お客さまの「あったらいいな」を超えて、日常の未来を生みだし続ける。』をパーパスとし、便利さと革新性で多くの顧客の信頼を勝ち得ているセブン銀行。国内大手小売グループの金融機関である同社では、銀行口座データとグループが持つ詳細な買い物データを基盤として、2018年からAI・データの全社的な活用・定着を進めてきた。近年は生成AI活用にも積極的で、ビジネス成果を上げるためさまざまな取り組みを行っている。そんな同社が、社内のあらゆるデータを収集するデータ連携基盤として、そして生成AI検証プロジェクトの手段として採用したのがHULFT Squareだ。日本発iPaaS※ならではの使いやすさと信頼性、サポートの充実さと、さまざまな環境に対応し、安心な生成AI活用環境を構築できる点が決め手だった。
お客様の課題
- 業務系システムに加え、コーポレート系システム、各種サービスシステムのデータなど、あらゆるデータを内製で手軽に連携できる基盤を整備したい
- 生成AI活用の手段として活用できるか検証したい
導入効果
オンプレミスから
SaaSまであらゆる
システム環境に対応、
手軽なデータ連携を
実現
日本の習慣にあった
使いやすい
インターフェースで
内製開発も容易
Azure OpenAI Serviceと
連携し、自然言語による
データ分析検証に
貢献
AIデータ活用と生成AIの社内定着に取り組むセブン銀行、
手軽にデータ連携できる基盤構築を志向
「コンビニにATMがあったら・・・」というお客さまの声から2001年に誕生したセブン銀行。現在国内で約2万8000台のATMが稼働しており、提携先は670社に上っている。グローバル展開も積極的で、米国、インドネシア、フィリピンに続き、2024年はマレーシアにも進出した。
セブン銀行の特徴は、国内屈指の小売グループの金融機関であることだ。銀行口座情報だけでなく、店舗から生み出される膨大な買い物データをグループの資産として保有している。クレジットカードでも決済データの取得はできるが、セブン銀行の持つデータは、「いつ、どこでどんな買い物をしたのか」という詳細なレシート情報だ。当然、得られるインサイトの粒度レベルも違ってくる。

AI・データ戦略部 部長
中村 義幸 氏
このデータ資産をビジネスに活かすべく、同社では2018年から全社的なAI・データ活用の普及・定着に取り組んできた。その中核となるのがセブン銀行 AI・データ戦略部だ。同部 部長 中村 義幸氏は「研修に参加してデータ活用ノウハウを身に付けたとしても、実際のビジネスに活かされなければ意味はありません。データ活用を現場へ“定着”させることが最大の目標です」と説明する。
そのため同社では研修のほか、実践的なブートキャンプを通じて業務現場でのデータ活用の定着を推進。同時に、AIにも着目して現場への定着に励んできた。
AIは既存のITに続く新しい技術であり、まだ人が気付いていないインサイトを引き出せる画期的なテクノロジーだ。そんなAIやデータを、いち早く実際の経営・事業に活かすことで、大きなビジネスメリットが得られる。
実際に成果も出始めている。その一例が、買い物履歴に基づくカードローンの提供だ。一般的なカードローンは、毎月の収入や他社からの借り入れ状況などの金融データを基に与信を行う。そのため十分な返済能力があり計画的に返済できる人であっても、単発アルバイトの求人アプリで収入を得ているギグワーカーなどが融資を受けることは難しかった。これに対しセブン銀行は、金融データと合わせて買い物データを活用することで審査精度を向上させ、従来の審査方法ではローンを提供できなかったお客様の中で、ローンを提供しても大丈夫なお客様を見つけられるようになったという。
そんな同社が最近注力しているのが、生成AIの活用だ。「生成AIが今後ますます日常生活に浸透することは間違いありません。そこで私たちも生成AIをビジネスで活用すべく、2025年度は本格的に生成AIに取り組んでいきます」と中村氏は話す。
そのためにも欠かせないのが、社内データ基盤の構築だ。同社には、銀行勘定系システムに加え、クレジット、電子マネー、グループ全体のCRMなど、事業に欠かせないシステムが膨大にある。それらのシステムのデータを活用すべく、データ基盤を構築していたが、今後の発展を考えると、より手軽に、内製でさまざまなデータソースから容易にデータ連携できる仕組みが必要だった。
会計システムの刷新に合わせHULFT Squareを導入、
さらに生成AI検証プロジェクトにも採用
手軽にデータ連携を実現できる仕組みとして、セブン銀行が採用を決めたのが、クラウド型データ連携プラットフォーム(iPaaS)の「HULFT Square」だ。ただ、もともとデータ基盤のために採用を決めたのではなく、「きっかけとなったのは会計システムの刷新でした」と中村氏は説明する。
セブン銀行の会計システムは、コアとなるオンプレの銀行勘定系システムのほか、SaaS環境で請求書管理や経費精算、固定資産管理、ALM(Asset Liability Management)システムが構築されており、複雑な構成となっている。固定資産システムから銀行勘定系システムに連携する際は一部手作業で確認しながら進めるなどプロセスが煩雑化し、会計業務自体が属人化していたという。
この状態を改善するために、Fit to Standardの方針に基づき会計システムを刷新することになった。同時に周辺システムとのデータ連携を最適化するために採用されたのがHULFT Squareだ。HULFT Squareは、30年以上にわたって活用されてきたファイル連携ツール「HULFT」や、データ連携ツール「DataSpider Servista」のテクノロジーが搭載されており、オンプレ、SaaS、クラウドやWebなどあらゆるシステム環境をまたいで柔軟な連携を実現する。
そんなHULFT Squareをデータ基盤との連携にも活用することにした。その経緯について、中村氏は次のように説明する。
「データ基盤のデータソースには、銀行勘定系システムやATM中継システム、スマホアプリ、グループCRMやクレジットカードシステムなど多様かつ重厚なシステムがあります。万が一停止するとお客様へのサービスにも影響するミッションクリティカルなシステムもあるため、これまでは安全を期して一対一のデータ連携で基盤を構築していました。しかし今後、さらに周辺のシステムからデータを集めるに当たっては、より手軽に進められる仕組みが必要になってきます。そこでデータ連携分野で圧倒的な強みがあるHULFT Squareを、会計システムのデータ連携だけでなく、データ基盤とのブリッジとしても活用することにしました」

採用の決め手となったのは、HULFT Squareが日本発のiPaaSであり、圧倒的な使いやすさと安心感があったことと、日本発であるゆえのサポート体制の充実さだった。特にGUIのわかりやすさとサポートの安心感は、大きな優位点になったという。
「実は以前、データ基盤構築時にiPaaS製品を導入しようと考え、主要な製品を検討しました。ですが信頼性や使い勝手、サポート面で見送ったという経緯があります。HULFT Squareは日本発のサービスですし、将来は内製でデータ連携の開発を考えている当社としては最適な選択でした」と中村氏は話す。こうして2024年春から、会計システム刷新とデータ連携基盤の構築プロジェクトがスタートした。
HULFT Squareの活用はこれだけにとどまらなかった。HULFT Squareが、同社の生成AI導入・検証プロジェクトでも採用されたのだ。前述した「2025年度からの生成AIの本格展開」に向けての取り組みの一環だ。同社では、生成AIを社内利用できるインターフェース「7Bank-Brain」を開発して生成AIの現場定着に取り組んでおり、現在は自然言語を使ったデータ分析の実装を進めているという。
自然言語によるデータ分析を実現するには、まず入力した自然言語プロンプトからSQLを生成AIで作成しなくてはならない。そしてデータソースにアクセスしてSQLが目的のデータを取得、分析を実行するといったように複数のプロセスが走ることになる。大元のデータソースとデータ連携する仕組みも必要だ。そして、データの安全性や機密保持にも注意する必要があるので、ビジネス現場での生成AI活用はハードルが高いのが現状だ。
これを解決したのがHULFT Squareだ。HULFT Squareにはジョブ設定機能があり、複数のプロセスを実行できる。この機能を活かし、同社の検証プロジェクトではAzure環境下で安全に生成AI活用を実行することにした。閉域環境にある同社のデータソースから一部をAzure環境へ手動コピーでアップロードし、AzureとHULFT Squareを連携する。ユーザーが7Bank-Brainで自然言語プロンプトを入力すると、HULFT SquareがAzure環境の生成AIを呼び出してSQL・グラフやインサイト生成する仕組みだ。
「実装の複雑さと安全性を考慮し、自然言語によるデータ分析の検証になかなか着手できませんでした。複数のツールを検討したのですが、どれも一度データをベンダー側にアップロードする必要があり、躊躇していたのです。それを聞いたセゾンテクノロジーから提案を受け、実現したかった分析環境をHULFT Squareで実装できることがわかり、開発を進めることにしました。HULFT Squareを導入していて本当に良かったと思います」と中村氏は話す。
自然言語によるデータ分析実現で意思決定スピードの迅速化を期待
現在同社は、会計システムの刷新とHULFT Squareを使ったデータ連携基盤の構築、そして生成AI導入・検証プロジェクトの稼働を目前に控えている。データ連携の実装については「HULFT Squareの得意分野なので、やりやすさを感じています」と中村氏は述べる。「セゾンテクノロジーではデータ連携や活用に関し、深い専門知見を持つプロフェッショナルがいるので随時相談しています」と話す。何より、「データ連携が実現できたら、手作業で行っていたプロセスが自動化されるのでより効率的になり、ミスもなくなるでしょう」と期待感が募る。
内製によるデータ連携の加速も目的の1つだ。現在は、まず完成を目的に開発パートナーが主体となって動いているが、会計システム刷新とデータ連携基盤の稼働後は、セゾンテクノロジーのサポートも活用しながらデータ連携の知見を蓄積していく予定だ。
さらなる効果が期待できるのが、自然言語によるデータ分析だ。これが実現できると「経営会議など意思決定の場が大きく変わると思います」と中村氏は期待を寄せる。
「新規サービスを開発するにしても、お客様の状況やニーズの傾向を分析しないと手は打てません。現在はデータ分析をするにはSQLやBIを使う必要があるので、分析できる人は限られている状態です。そこを解消すべく、各部門にデータ分析アンバサダーのような人材を育成しているのですが、自然言語でデータ分析できるようになれば問題はありません。会議中に『預金残高が一定金額以上ある顧客のデビットカードの利用傾向を教えて下さい』『この顧客層の特徴は?』と尋ねるだけで回答が返ってくるので、意思決定のスピードも格段に速くなるはずです。大きなイノベーションが起こると期待しています」
容易なデータ連携で可能性は一層拡大、HULFT Squareのさらなる活用も視野
現在進行中のプロジェクト完了後、内製での本格的なデータ連携促進に向け、同社がセゾンテクノロジーのサポートやフォローに寄せる期待は大きい。データ連携基盤が整備され、手軽なデータ連携が実現されれば、可能性はますます広がる。HULFT Squareは柔軟かつ手軽なデータ連携ができるのはもちろんだが、データ分析前後のデータ処理にも利用できることがわかったため、ソフトウェア的な活用も探っていきたいと考えているという。
ATMデータの活用もその1つだ。現在検証を進めているのは銀行口座データだが、ATMデータも分析できるようになれば見える風景が違ってくる。
「たとえば都心と地方で利用されるATMサービスは異なります。また提携銀行が増えた時、手数料が変更になった時も利用状況が変化します。トランザクションだけで10億件もあるので普通に分析するだけでも難しいのですが、こうしたことを自然言語で尋ねて把握できれば、ビジネスが大きく進歩します。将来的にはグローバルで展開するATMも分析の対象にしていきたいですね」と今後の展望について中村氏に語っていただいた。
- ※
iPaaS( Integration Platform as a Service )・・・システムやデータの統合や連携を実現する基盤を提供するクラウドサービス
株式会社セブン銀行
- 本店所在地 :東京都千代田区丸の内 1-6-1 丸の内センタービルディング
- 設立 :2001 年 4月10日
- 資本金 :30,724 百万円
- 従業員数:666名
- 事業内容 :ATMプラットフォームビジネス、リテール、ビジネス、法人ビジネス、海外ビジネスなど金融業全般