“ありもの”のデータでも“つなぐ”ことで新たな価値を創出できる

確かに御社のWebサイトには、モビリティデータの意外な活用や組み合わせによって成果を上げた事例が多数掲載されています。モビリティデータと他の領域のデータをかけ合わせたり、モビリティデータ同士をこれまでにない組み合わせで連携したりすることで、ビジネス・社会の変革や新たな価値の創出に貢献した事例を紹介してください。

 たとえば出光興産株式会社様と、位置情報ビッグデータと解析技術を用いた地域活性化支援ソリューションを提供する株式会社ナイトレイ様との取り組みでは、モビリティデータとSNSのデータをかけ合わせて、地域の観光資源の最大化を目的とする実証実験を行いました。車両の位置データや観光客の発信するSNSデータを組み合わせることで、観光客の動きや関心事、目の前を通過されてしまうことの多い観光スポットなどを「見える化」し、観光客の移動をスムーズにするための施策や、知名度がそれほど高くない隠れた名所・観光スポットに誘導を図る施策などに活用しています。

まさに新たな価値を生み出したわけですね。ほかの事例も教えてください。

 住友三井オートサービス株式会社様、およびその関連会社様が蓄積されている事故・トラブルのデータと、モビリティデータとを組み合わせることで、お客様ごとのリスクに応じた保険を開発した取り組みも、領域横断的なデータ連携の一例ですね。事故・トラブルのデータと走行データとをかけ合わせると、どんな運転の仕方だと事故を起こしにくいかがわかります。であれば、そういう安全運転をしている方については、保険料を安くするほうがサービスとして公平ですし、その結果として安全運転の促進という、社会に対しての好影響も期待できます。そのように、モビリティデータだけでは決して生まれない価値を、他の領域のデータと連携させることで創出できたケースはたくさんあります。

御社は、データを活用してビジネスや社会に貢献しようとするとき、どんなことに気をつけていますか。

 活用に向けて一歩踏み出すときのハードルをできるだけ下げ、継続しやすい形にすることが非常に重要だと考え、お客様にもそのような提案をしています。もちろん、はじめから欲しいデータがすべて揃い、それを的確に分析できる基盤が整えば最高です。しかし、最初からそれをしようとすると、どうしても高価な機器や専門の人員が必要になるので、結局、最初の一手を打つだけで終わってしまう、あるいは取り組むこと自体を諦めてしまう、ということになりがちです。それでは意味がありませんよね。

たとえば位置情報などの基本的なデータを使い、ほかをおおよその推測で補うことで、最初から高価な機器を手配したり、完璧な精度の追求に時間をかけ過ぎたりしなくても、その中で可能な提供価値をうまく組み立てれば、新たな取り組みとして目指す世界観の7~8割方は実は十分に実現できる、といったことは多々あります。ですから、データ活用の目的と現状を見比べて、もっともコストパフォーマンスの高いプロジェクトを設計すべきなのです。最初のハードルをクリアして価値を実感できれば、次のステップとして機器などに投資し、さらに上を目指すことができる。いきなりすべてのことをしようとせずに、無理なくできるところから段階的に進めていくのが、データ活用の肝だと考えています。

今後もそれを基本としてビジネスを進める方針なのですね。

 そうですね。特別な機器がなくても、既存の機器や基本的な情報を使って、モビリティデータ活用の価値を感じていただける、いわば導入編のようなサービスを、より積極的に展開していきたいと思っています。価値さえご理解いただければ、「次はこういうことを実現するために、こういう仕組みを導入してはいかがですか」という提案ができるようになりますからね。 極端な話、機器を取りつけなくても、業務車両の鍵管理を電子化して、鍵の貸し出し・返却の状況を可視化するだけで、車の運用状況を把握し、実は車が足りていなから増やすべきだとか、稼働していない車が多いから減らしてコストを削減しようとかいうぐらいのことはできるわけです。そういう“ありもの”の機器や情報を利用して、あるいはうまく組み合わせて、モビリティデータの利用イメージを想起できる、ちょっとした価値を体感していただくところから始める。モビリティデータというのが大きな可能性を秘めたものだからこそ、そういう段階的なサービス提供が必要だと考えています。

最後に、データの連携活用によって新たなビジネスを生み出してきた経験を踏まえて、HULFT Squareというソリューションについての率直な感想をお聞かせください。

 先ほどお話しした通り、どうやってユーザーに手間を感じさせずにデータを活用できる状態にまで持っていくか、そのハードルをいかに下げるか、というのは弊社にとって重要なテーマです。その観点から、「つなげる」というところをスムーズに、楽に実現してくれるHULFT Squareは、本当にすばらしいソリューションだと思います。同時に、もうひとつの重要なテーマである「継続的に運用していく」という面も担保されるので、データ活用において、今後このようなソリューションは必須になるのではないでしょうか。

モビリティデータというのは、単体で活用できることもあれば、複数のデータをかけ合わせてはじめてできること、より高い価値の生まれることも多々あります。HULFT Squareを使って、弊社のサービスをさまざまなSaaSやソリューションと連携させれば、また新たな価値を創出できるはず。そういう点でHULFT Squareは非常に魅力的ですし、弊社のマインドに近しいものを感じます。HULFT Squareでつながる仲間に、ぜひ弊社も加えていただきたいと思いますね。