「データは現場と経営をつなぐ共通言語になる」、
日本のデータ活用を下支えしてきたJDMCとは?

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2011年、企業のデータを経営やビジネスに活用する足掛かりを創っていくことを目的に、日本データマネジメント・コンソーシアム(以下、JDMC)が設立した。同組織は、データ活用に関する研究会やコミュニティの立ち上げや運営、イベントの実施、セミナー開催などを積極的に実施。企業がデータを活用していく土台創りを担ってきた。
2000年ごろ、企業にIT化の波が起きた。電話がメールに変わり、書類が紙から電子に変わった。在庫管理記録や顧客情報も分厚い帳簿からひとつのファイルへと変化していき、企業に大量のデータが蓄積。こうしたデータは企業活動の歴史でもあり、次の一手を見出すための宝庫でもある。しかし、実際に次の一手を見付けるにあたって「まず何をすればいいか?」で迷ってしまう経営者、担当者も多いのではないだろうか。
今回は、日本におけるデータマネジメントのスペシャリストのひとりでもある、JDMC事務局長 兼 理事、及び株式会社NTTデータバリュー・エンジニア 代表取締役社長、大西浩史氏にJDMCやデータマネジメントについてお話しをうかがった。

▼プロフィール
一般社団法人日本データマネジメント・コンソーシアム[JDMC]事務局長 兼 理事
株式会社NTTデータバリュー・エンジニア 代表取締役社長
大西浩史氏
※役職や所属は取材時のものです。

一般社団法人日本データマネジメント・コンソーシアム[JDMC]ホームページ

約300社が参画! 長年に渡り企業のデータ活用を支え盛り上げてきた専門組織

最初にJDMCの設立の経緯と目標についてお話しいただけますか。

JDMCは私とベンダー数社のほんの少数の有志を募って設立しました。当時、データマネジメント、活用のための有望なツールやソリューションが欧米では数多くマーケットに出てきていても日本には進出してこない、「Japan Passing」のような時代でした。このままでは日本の国際競争力が落ちてしまうのではないか。だから日本のデータ活用を活性化させるため、まずはその活用の源泉となるデータマネジメントの重要性を認知向上・普及させようと考え、活動を始めました。

昨今、ロシアによるウクライナ侵攻に端を発し、原材料が高騰、食品やガス電気料金も値上がりしています。コロナの蔓延もそうですが、長年の経験と勘で店をきりもりしていた店長さんたちもどれだけ仕入れれば最もロスが少ないのか、予想できなくなりました。この視界不良なビジネス環境の中で何を「寄る辺」として意思決定すべきかと問われれば、おのずと人の経験と勘だけでは予想、対応できない未来を、現在起きているファクト、つまりデータから導き出し、対処していきたいと経営者が考えるのは必然だと考えます。JDMC設立当時に比べ、随分とデータに対する社会の認識が変わってきましたが、データを活用してより良い意思決定をしていくことが企業や組織にとって「当たり前」にすることが最終的な目標です。

当時、データ活用に力を入れている企業はありましたか?

あまり多くはありませんでした。実践している企業も「このやり方で良いのか?」と半信半疑で実施している状況でもありました。だからこそ、JDMCで各企業の取り組みを掘り起こし、まずは共有を積極的に行う必要があると考えたのです。

設立から10年経ち、JDMCにはメガバンクや大手自動車メーカーなど、日本を代表する大手企業も含めた約300社が参画。当時は個々の企業、担当者で留まっていたデータマネジメント/活用の実績の積み上げを業種・業界を問わず共有し、その過程で発生する様々な悩み事を語り合うなど、日本企業がデータを積極的に活用する下地作りに多少なりとも貢献できたのではないかと感じています。

JDMCではどのような活動を行っていますか?

あとで詳しくお話ししますが、データ活用は一朝一夕では実現できません。企業や担当者はまず「何から始めればいいのか?」でつまずき、実施していたとしても「このやりかたが正しいのか?」と不安になってしまうことが多いようです。JDMCはこうした悩みに着目し、主に3つの活動を実施しています。

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1:研究会およびコミュニティの運営

そもそもデータ活用、データマネジメントとは何なのか。何のためにデータ活用をするのか、そしてデータを組み合わせたことで何が見え、何が起きるのか。JDMCでは、会員企業の意思によって研究会やコミュニティを自由に発足させることができ、ITに関わる方だけではなく、マーケターやビジネス部門の方々まで参加いただくことができます。それぞれに共通するテーマに対して自社の課題を持ちより、事例の収集やフレームワークの研究を共同で行っています。

数年前、あるデータの使い方が話題となって炎上騒ぎになりました。企業にとって有益なデータではあるが、その使い方が不味いことにより不利益を被る人も出てしまい、業界を越えて世間を賑わす事態となりました。そのようなケースだと、データ活用が仇となってしまいます。「積極的にデータを活用していくためにも、意識しなければならないコンプライアンス上の注意ポイントにはどういうものがあるのだろうか」というのが研究会テーマの一例です。

このように、JDMCでは同じ悩みを持つ担当者同士、”現場”に近い方々を入れて一緒に関心のあるテーマを深掘りするための研究会やコミュニティ活動を実施しています。また、slackを運営し、研究会以外でも自由闊達に悩み事や意見交換を行える、議論の場も作りました。現在slackは500人に参加いただき、特定の関心やテーマをもつ会員企業が自由に情報発信できる場として活用いただいています。

2:カンファレンスおよびデータマネジメント表彰

JDMCでは年一回、大型のイベントを実施しています。カンファレンス形式で、先進的なデータ活用事例を持つ人、企業に登壇いただき、丸一日データ活用のヒントを多数持ち帰ることができるような工夫を凝らしています。通常はリアルイベントですが、ここ数年はオンラインで開催。今後はリアルイベントに戻していきたいと考えています。

数年オンラインで実施して、やはり顔を合わせることに意味があると感じました。データ活用の最前線を行く登壇者、いま悩みを抱えている参加者たち。この間をつないでいくのもJDMCの使命のひとつだと考えています。まだ新型コロナの影響もあるため、オンライン開催いたしますが、オンラインでも高い熱量を感じとっていただけると思いますので、ぜひ聴講いただきたいです。

また、カンファレンスと同時開催で、JDMCでは年一回、データマネジメント賞という表彰制度も実施しております。本賞では、データを活用し素晴らしい成果、実績を上げた、斬新な切り口でデータを活用していた企業の部署を表彰していますが、実施していてあることに気付きました。

「データマネジメント賞をいただいたことで社内から評価されるようになりました」というお声をいただくことが多いんです。デーマネジメントはいわばビジネスメリットを生むための下地、土台を築くもの。データマネジメントがそのまま直接的な収益等に直結したかどうかの因果関係の証明が難しいため、社内から『意味があるのか』と思われてしまうこともしばしばあるのですが、表彰されることで「実は凄いことをやっていた!」と社内に認知されることがあるようで私たちも嬉しく思っています。

3:情報発信

ここまでにお話しした研究会やコミュニティなどで収集された知見を書籍や動画にまとめて発行、配信も行っています。初学者のためにわかりやすいデータマネジメント基礎講座やMDM(マスターデータマネジメント)に特化した濃い内容の講演をオンライン配信するほか、データマネジメント/活用を幅広い観点から身近に感じてもらえるような情報発信の取り組みを行っています。

また、約300社のJDMC会員企業でリレー形式のコラムを掲載するなど、会員企業にも「一緒に日本のデータ活用を盛り上げている!」と感じてもらえるよう頭をひねっています。