データ活用の最初の一歩は「実物のデータを見て発想すること」

「データ」とひと言で言いますが、どのようなものを活用すべき対象、”データ”として考えていますか?

基幹系システムのデータから、メールのテキスト、ドキュメントファイル、スプレッドシート、音声や映像などデジタルと名がつくものはすべてデータ、活用できるものだと考えています。そうは言っても「どう活用すればいいのか」で担当者はみな頭を悩ませていると思います。ジャストアイデアでもいい、まずは活用の目的を見付けることから始めていただきたいです。

よく「データマネジメントツールを入れましたが、データ活用が進みません」とご相談いただきます。データを活用して何をやりたいのか、目的を定めないとツールだけあっても現場で活用は進みません。そのためには最初に実際にデータを見て、「これまで見えなかった、お客様の行動がこんなふうに見えてきたらうれしいよね」といったまず発想を膨らませ、臆せず思い付いたことをホワイトボードに書いて、なぜデータ活用をしたいのか、どんなデータがあると嬉しいのか、を探してみて欲しいと考えています。

また、経営層や現場との意識の擦り合わせ、部門を超えたデータの活用イメージなど、担当者を悩ませる壁はいくつも存在します。今の日本でも個々の部門ごとのデータ活用はある程度進んでいますが、部門の壁を越えたダイナミックなデータ活用はまだまだこれからであり、逆に言えば伸びしろがあるともいえるのではないでしょうか。

目的を定めるためには、データから組織を俯瞰していく必要もありそうですね。一方で、俯瞰をしていくほど経営層と現場、部門の壁を越えるのが難しそうにも思えます。それをクリアするヒントはありますか?

仰る通りです。設立当時と比べると、データへの注目度は格段に上がっています。しかし、実際に活用できているのか?と言えばまだまだこれからという段階だと認識しています。そのひとつの壁が「部門や部署を越えてデータがつながっていないことがほとんどである」、これはデータ活用だけではなく、昨今、注目されているデジタルトランスメーションでも壁となり頭を抱える担当者が多いです。部門を超えて様々な源泉システムからデータを集め活用していく、どの企業でも「いままでやったことがない」からスタートします。だから、どの企業でも「担当者が頭を悩まし、及び腰になってしまう」ことが起きるのです。この難しい共通の課題に対して一緒に正解のない答えを探していきましょうよ、と鼓舞するのもJDMCの役目だと感じています。

一方で、年々データを貯めるコストは下がり、企業内のデータは増えていきます。また、顧客の声も拾いやすくなっている。これまでメーカーにとっては、卸や販売代理店、小売店を通して最終顧客の手に商品が渡るため、最終顧客の声は商品に添付された「お客様アンケートはがき」でしか拾えなかった。かなり牧歌的でしたよね(笑)。こうした時代と比べると、商品自体がインターネットにつながっているケースも多く、webサイトのお客様窓口のほか、SNSやレビューサイトのクチコミなど、お客様の声が拾いやすくなっています。これを使わない手はないです。JDMCには多くの企業、担当者の悩みやチャレンジもナレッジとして蓄積していますので、ぜひ、相談、活用していただきたいです。

JDMCが目指す最終目標を教えていただけませんか?

「JDMCの役目を終えること」、つまり日本の企業や組織にとってデータマネジメントや活用が当たり前の文化として定着化することです。JDMCの会員企業はもちろん、各企業がデータを活用して意思決定ができる。データ活用を身近に、当たり前に考えられている。そうなったらJDMCはお役御免で良いと思います。現在はまだIT部門の参加者が多い研究会やカンファレンスに、マーケティングや営業、総務や人事、製造に関わる方々などにもぜひ参加いただきたいと考えています。

「データ活用は役に立つ」、「データを見ることは楽しい」、現場にもそう思ってもらえれば、データ活用を主導する部署と経営や現場の擦り合わせしやすくなるのではないか?データは経営や現場との共通言語にもなれるのではないか。経営層もビジネスの現場もIT部門も「このデータによると、こういう判断が妥当と思われるので・・・」と語り出す世界。部署が異なってもデータが共通理解となり話ができる”言語”にもなってほしいと思います。”データ”を使えば、ビジネスとITが、また、経営と現場がもっとつながるようになると確信しています。

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そうは言ってもデータを見るのは難しいようにも思います。まずどこから見ればいいのか、どんなことを拾えばいいのか……と悩んでしまう。「データを見ることは楽しい」と思えるコツはありますか?

こまで難しく話してしまいましたがもっと身近なことで考えてみてください。「課長がランチのご飯を残していた、体調が悪いのかな?』「今日の○○さんはいつもより張り切っているな。良いことがあったのかな?」、実は日常的に感覚、勘や経験などで得たあらゆるデータから推測、予想をして課題発見、意思決定をみなさんは行っています。つまり、みなさんは当たり前のように日常でデータを活用しているんです。

デジタルデータはいままで感覚や勘、経験で得てきた情報が、誰が見てもわかる定量的なデータ、共通言語となっています。感覚よりも、頭で兆候、結果を摑みやすい。だから、どうか「データ活用」と聞いたら肩の力を抜いて、気楽にデータと向き合ってみて欲しい。「なぜ売上げが上がったのか?下がったのか?」、そういった疑問もマーケティングのデータ、在庫のデータ、社内のデータを見ることで兆候を見出しやすい。他のデータと照らせば関係性も見えてきて、「データを見ることは楽しい」と感じる瞬間が来ると思います。

「データを使って何をやりたいのか?」、目的を見付けたら自社にある、手元にあるデータを覗いてみる。「この月だけ数字が増えている」を見付けたら、前年、前々年のデータも覗いてみる。同じ月が増えているなら、「どうしてか?」と探してみる。営業部に聞いてみる、マーケティング部に聞いてみる。データを見てみてください。データが「次は何をすればいいのか」を教えてくれると思います。

参画企業とともに国際競争力を高めるフラッグとなる

JDMCにセゾン情報システムズが参画いたしましたが、参画企業にはどのような期待を持っていらっしゃいますか?

当初は10数社だったJDMC会員企業も約300社に及ぶほどとなりました。もちろん今後も参画いただける企業は歓迎です。セゾン情報システムズ様にもぜひ事例や、つまずき、壁に感じていることなど、自由闊達にJDMCで話していただきたいと思っています。同じような悩みを持っていた企業も必ずいらっしゃいますし、「相談してみようかな?」と考える担当者様もいらっしゃいます。JDMCを『ともにデータ活用を考え盛り上げていく場』として活用いただきたいです。

JDMCは参画企業にもたいへん助けていただいています。IT企業の場合はデータ活用の成功事例を提供いただけるほか、シンプルにセミナーを開催する場所や人などで協力してもらうことも多いです。また、今回のセゾン情報システムズ様のようにメディアをお持ちの企業にはこのようにJDMCを紹介し、認知向上にお手伝いいただいてもいます。たいへん感謝しております。

JDMCは「日本企業の国際的競争力の向上」を目指しています。業界内では競合である企業にも参画いただいていますが、研究会では競合企業同士も同じテーマについて、お互いを高め合っていらっしゃいます。担当者様は「データ活用を深め、強化していくことで”自社”の競争力を上げる!」と思って参画いただいたのかもしれません。ただ、JDMCはそんなみなさんの力も借りて、日本企業、引いては日本の国際競争力を上げる礎のひとつになっていっているように感じます。今後もみなさんと一緒に日本を盛り上げていきたいと考えていますので、よろしくお願いいたします。


■ セゾンテクノロジー公式youtubeチャンネル「シス☆スタ」

◆シス☆スタ【このままでは迷宮入り!?データマネジメントに必要なものとは?】◆
セゾンテクノロジー公式youtubeチャンネル「シス☆スタ」にて、
一般社団法人日本データマネジメント・コンソーシアム[JDMC]様のインタビュー動画をご紹介しています。
併せてご覧ください。