佐藤舞先生によるデータ活用講座
Lesson2
「データ分析ってどうやってやるの?」 講師:佐藤舞さん

visual.png mob_visual.png

▼プロフィール
佐藤 舞(さとう まい)。データ活用コンサルタント。合同会社デルタクリエイトの代表社員であり、マーケティング・サイエンス学会に所属。データ活用や統計学の入門書籍として出版した『はじめての統計学 レジの行列が早く進むのは、どっち!?』(総合法令出版)は、多くの書店ランキングで1位を獲得。
※役職や所属は取材時のものです。

佐藤舞先生による
LESSON2 解説動画

前回(最初のレッスン)からの続きです

データを分析するってどうやるの?

前回のレッスンでは、データ活用のメリット、成功のポイント、データ活用ができている状態について解説しました。今回のレッスンでは、実際にデータを分析する際の課題やゴール設定について解説していきます。今回のレッスンのゴールは、

データ分析の全体像と流れが分かる
データ分析に取り組む際に、最低限必要な準備が分かる

の2つです。

1. データ分析を依頼される際に困ること

まず、私がお客様からデータ分析の依頼をいただく際によく遭遇する「困ること」についてお話します。それは「データはあるんだけど、それを活用できていなくてもったいないんだよね。データ渡すから、そこから何か分析してくれないかな?」というご相談。データ分析は一つのプロセスに過ぎないので、このようにただ「データを分析してほしい」といわれても、データを有効活用することはできません。前回のレッスンでもお話した通り、データ分析は「より良い意思決定」をするために行うものなので、例えば、

Aを選ぶか、Bを選ぶか。どちらが良いか迷っている
なかなか数値が伸びないが、何が原因か分からない。
好調だった一番の要因を知りたい

といったように、何かしら知りたいことがあって初めて行う価値があるのです。データがもったいないから行うものではないという点にご注意ください。このことについて、私はよく「データ分析とはリアル謎解きである」というふうに例えています。

「なぜこうなるんだろう?」
「この数値ずれてない?」
「何と比較すればいいんだ?」

といったように、解き明かしたい謎があればデータ分析を行う意味があります。逆に言えば、そうした謎がないままデータ分析だけを行なっても意味がありません。謎なき分析は盲目である、と言ってもいいかもしれませんね。こうした謎があれば、Excelだけでも十分なデータ分析を行うことができます。例えば、「長年の勘や経験で発注数を決めていたけど、もっと仕組み化して、誰でも発注数を正確に予測できるようにならないだろうか?」という謎をデータ分析で解決して、発注を自動化することができます。他にも、「株の予算配分をなんとなく決めていたけど、リスクを分散しながら、費用対効果を最大限にできるような運用を、システマチックにできないだろうか?」という謎を解決して、最適な配分を計算することもできます。ただ、Excelには機能上の限界があります。

一万桁(目安)を超えるデータ分析
データを自動取得する
他のツールと連携させて使う

こうした少し高度なことをしたい場合は、BIツールの検討が必要です。また、BIツールでのデータ分析で必要なデータを取得する手段として「DataSpider」や「HULFT Square」などのデータ連携ツールをBIツールと組み合わせて使用していくことで、より詳しいデータ分析を行うことができます。

2. データ分析に必要なスキルセット

では次に、データ分析を行う上で必要なスキルセットを紹介します。この図は、データサイエンティスト協会が公表している、データサイエンティストになるための3つの分野のスキルセットの図です。

主たる3分野のスキルセット

左の「データサイエンス」という部分は、統計学などのロジックの知識を持っていることを表しています。そして右の「データエンジニアリング」は、データベースを操作したり、ITツールとして実装したりできるスキルを表しています。一方で上の「ビジネス力」は、業界や業種の知識を持ち、ビジネス課題を整理して解決していく力を表しています。

データサイエンティストといわれるようなプロフェッショナルを目指す場合は、かなり幅広い知識とスキルが必要になりますが、実際にはチームで協力して行うことがほとんどです。
社内のデータ活用を推進する担当者・責任者の方は、データサイエンティストやエンジニアと対話をしながら課題解決を一緒に進めていきます。そうした時に、データ活用の責任者が一番持っておくべき能力やすべき準備は、ビジネス力=ビジネス課題の設定力です。

データサイエンティストやエンジニアは、設定した課題を解く力には長けていますが、解くべき課題を設定するのは、あくまでクライアント自身ということを忘れないでください。(一緒に設定していくこともありますが、筋の良い仮説はクライアントが握っていることが多いです。)

ここの認識にずれがあると、

分析者「分かりました!それでは、ビジネス課題を整理していただき、改善したいKPIの指示をください!それと必要なデータも!」
クライアント「それが分かっていれば、あなたに相談していないんですけど……」

というようなやり取りが生じてしまうのです。主たる3分野のスキルセットの図から、データ分析には幅広いスキルや知識が必要だということが分かりますが、必要な能力を全てオールマイティに身につけることはとても大変です。だからこそクライアントと分析者は、課題設定から課題解決まで対話を重ねて進めていくことが大切なのです。それぞれの役割を切り離すのではなく、ワンチームで取り組んで初めて、データ分析は可能になると言えるのです。チームで協力してデータ分析を行なっていくことは非常に多いので、全てのスキルを身につけようとせず、まずは、コアになるビジネス課題の設定力を磨くことから始めてみましょう。ここが適切にできないと、技術者とのコミュニケーションがとれないばかりか、あまりやる意味のない分析になってしまうことも少なくありません。