DX時代のときめくビジネスライフ
〜こんまりメソッドでデジタル整理〜

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2024年10月に開催された「HULFT Technology Days」。10月16日には、2010年に出版した『人生がときめく片づけの魔法』が世界40カ国以上で翻訳されるなど大ベストセラーとなり、2015年に米『TIME』誌の「世界で最も影響力のある100人」に選出されるなど、独自の片づけ法「こんまり®メソッド」が世界から注目されている片づけコンサルタント・近藤 麻理恵氏が登場。「DX時代のときめくビジネスライフ 〜こんまりメソッドでデジタル整理〜」と題して、こんまりメソッドを生かしたデジタルデータの整理におけるアドバイスをいただきました。

▼近藤麻理恵氏のプロフィール
片づけコンサルタント
※役職や所属は取材時のものです。

多くの声が寄せられるデータの片づけ

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私が片づけに興味を持ったのは、もともと5歳のころからです。幼少期には片づけしすぎて失神してしまうという失態を演じるほど、片づけに強い関心を持つ子供でした。とにかく目の前のものを整理して、自分にとって必要なものを残すとはどういうことなのか、それによって自分の人生はどう変わっていくのかということを考えすぎた結果、今では片づけを専門とするコンサルタントとして活動するようになっています。

2010年に「人生がときめく片づけの魔法」という書籍を出版させていただき、こんまりメソッドを使って家の片づけができたという声を世界中の方から数多くいただくようになりました。今では、こんまりメソッドをデータの片づけにも使ってみたという声もたくさんいただく機会が増えています。実は、経営者向けにデスクの片づけレッスンを行っていたことがあったのですが、オフィスの片づけを終えると、みなさんデータの片づけを自然としたくなってしまうようです。

目の前がスッキリすると心地いい、頭がスッキリすることを実感されると、目の前にあるデータの“ごちゃごちゃ”が見逃せなくなってくる方が多い。そんな方がこんまりメソッドを使ってデータを片づけてみたら、データの活用とかがしやすくなった、ビジネスにも生かされたっていう声をたくさんいただきます。私がこんまりメソッドをデータ整理に応用したというよりも、どちらかというとお客さまの方から教えていただいたというのが正直なところです。
 

こんまりメソッドが大切にする“ときめき感度”

こんまりメソッドが持つ一番の特徴は、ときめくものを選ぶという考え方です。その際には、必ずそのものに触れるということが重要で、触れることで自分の体がどう反応するのかというのを1つずつ確認していきます。

ときめくものに触れたときには、私の場合は体の細胞が”きゅん”と上がる感じがします。逆にときめかないものを手に持つと、なんとなく体が重くなってくる。これは、頭で考えたり目で見たりするだけでは感じ取れない感覚で、触ると自分の体の感覚で正解が見えてきます。これがこんまりメソッドの大きな特徴となっています。

ただ、触れないとメソッドが生かせないというわけではありません。不思議なことに、メソッドを念頭に物理的な片づけを終えると、自分にとってどんなものがときめくのか、体で理解できるようになってきます。このプロセスは“ときめき感度を磨く”と表現しています。

つまり、自分の身体感覚で判断力が磨かれていくわけです。そうなると、物理的なモノに対してだけでなく、例えば人間関係や仕事上で判断が必要になる場面でも、自分にとってときめく選択肢が何なのかが自分自身で判断できるようになる。そして直感で感じ取れるようになってきます。

今回のテーマであるデータは、確かに触れないものではありますが、物理的な片づけが終わった後、つまりときめき感度を磨いた後にデータの片づけや目に見えないものの整理に着手すると、残しておくべきかどうかの判断がつきやすくなってくる。これは、私の経験則だけでなく、多くのお客さまからの声からも実感しているところです。

こんまりメソッドとは

ここで、改めてこんまりメソッドについて紹介したいと思います。こんまりメソッドは、単に家を片づけるだけの方法論ではなく、片づけを通して自分のときめきの判断力を磨いていくことを大切にしています。具体的には、4つのポイントで片づけを行っていきます。

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【1】理想の暮らしを考える

いきなり片づけといっても、気持ちの面で進めにくいものです。そこで、作業をする前に、なぜ自分が片づけをしたいのか、自分の内面と向き合う時間を作ること。つまり、理想の暮らしを考えるということが1つ目のポイントです。

これは、片づけを終えてどんな暮らしをしていきたいのかという、自分にとってのゴールを一度考える時間をしっかりとっていただくことです。できるだけ具体的に考えることがポイントで、何かスッキリした暮らしがしたい、何かこのモヤモヤから解消されたいというものではなく、片づけた後の自分が家のなかでどういう行動をしているのかを考えます。

オフィスの片づけに置き換えると、オフィスに出社して、まずデスクがどんな状態で、どういう流れで仕事を開始したいのかということを具体的に考えます。ある方の例では、出社して最初にデスクを布巾で拭いてスッキリした状態のデスクで、今日の気分に合ったアロマを焚き、1分くらいメディテーション(瞑想)をする。そして、片づけをしてデスクがスッキリした状態でパソコンを開くと、今日やるべきタスクが明確になっていて、仕事に必要なデータだけが一覧でぱっと出ている状態である、といったものです。

このように、理想的な状態にするために片づけをしたいという気持ちを確認してから、片づけを始めることをお勧めしています。家の片づけも同様で、どうしても時間がかかったり途中でめげてしまったりしてしまうケースがありますが、自分の理想があることで、また片づけを頑張ろうと思えるのです。

【2】モノ別に片づける

2つ目のポイントは、モノ別に片づけるというものです。これは、カテゴリ別に片づけると言い換えることができます。一般的には、引き出しのなかなど場所別に片づけてしまいがちで、確かに悪くはありません。しかし圧倒的にお勧めなのが、同じカテゴリのものをいっぺんに片づけるというやり方です。

例えば洋服を片づけるときは、今持っている洋服を全て収納から出し、目の前に積み上げます。そしてそこから1つ1つ手に取って、残すべきものを選んでいくというイメージです。カテゴリ別に片づけることのメリットは、自分が今どれだけのものを持っているのかということが把握できるから。

データを片づける場合も、例えば写真だったら写真の片づけ、アプリを片づける場合はアプリの片づけというふうにやってみることです。データの片づけの場合はカテゴリが分けやすいため、進めやすいかもしれません。

【3】ときめきで判断する

3つ目のポイントは、こんまりメソッドでも重要になる、ときめきで判断するということです。ときめきという言葉を聞くと、曖昧で感覚的なものと感じる方が少なくないですが、ようはそれを持っていることで自分が幸せになっているかどうかという基準です。

経営者の方にお話ししたとき、ときめきという言葉がわかりにくいというご指摘をいただくことも。そこで、1軍か2軍か、といった言葉に置き換えた方もいます。ワクワクするかといった表現を使う方もいますし、ビジネスであればこれを持っておくと儲かる、といった基準でときめきを捉えている方もいらっしゃいます。

ときめきで判断するというのは、自分にとってそれを持っていることで幸せをもたらすものかどうか、という問いかけとして考えてください。

【4】正しい順番で片づける

そして4つ目のポイントは、正しい順番で片づけることです。カテゴリ別に片づけるというのがこんまりメソッドの基本ですが、同じカテゴリでも難易度の高いものと低いものがどうしても存在しています。

片づけに失敗してしまいがちなよくある例は、思い出の品から着手してしまうこと。人からもらった品や記念の写真など、捨てにくく手放しにくいものから手をつけてしまうと、片づけが進まずに悩んでしまうケースがよく見受けられます。これは片づけの順番が正しくないことが原因です。ここでは、とにかく難易度の低いものから始めることをお勧めします。

家の片づけの場合では、最初が衣類などの洋服、次が本、書籍、小物、思い出品という順番です。この順番で片づけをしていくと、実はときめきの判断力が少しずつ磨かれていきます。そうなってくると、思い出品など自分にとって片づけるのが難しいと思っていたものが、びっくりするほどスムーズに片づけられるようになるのです。実際片づけに成功した方からは、感覚が研ぎ澄まされ、自分にとっての正解がクリアに出てきたという驚きの声が寄せられることもあります。

オフィスでの片づけで考えると、一般的には衣類がないケースがほとんどのため、最初に書籍、そして書類、小物、思い出品という基本的な順番になりますが、データ自体は書類に含まれることが一般的です。実際には、物理的な書類を片づけた後に、データの片づけに着手されるケースが多いようです。

データが膨大にある場合、その片づけはどうしても億劫になりがちです。だからこそ、物理的にオフィスや職場の片づけから始めることがおすすめ。身の周りがスッキリすると、片づけの弾みがつき、データの片づけも格段に進めやすくなるからです。

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データを片づけるための極意

手に触れることのできないものの場合、スペースなどに制約がある物理的な片づけと違う場合があります。家の片づけにおいては、家庭内のものを選び切るというのが基本的なコンセプトで、それによって家で使えるスペースが大きく変わります。一方でデータの片づけで考えると、1つのフォルダに収めてしまうことができますし、どこに何があるか分からなくとも名前さえきちんとしておけば検索で見つけることができます。

つまり、データの片づけは、必ず全てを選び切らなくてもいいとも言えます。こんまりメソッドの基本を忠実に実行しようすると、膨大なデータを1個ずつ見ていくことになり、一生かかっても終わらないという方もいるはずです。そうならないためにも、ちゃんと自分にとって必要なときめくものがいつでも取り出せる状態にしておくことをゴールに設定します。いらないものを全部消し去って選び切るといった完璧さはなくてもいいのではないでしょうか。

コロナ禍がもたらしたデータとの関わり方

コロナ禍を経てオンラインで仕事ができるようになるなど、デジタルツールを利用する機会が以前にも増して増えていることは皆さんご存知の通りでしょう。そんななか、改めて自分の働き方を考え直したいという問い合わせが多く寄せられています。リモートワークで働けるようになり、それに伴って独立起業して自身が持つスキルを生かした仕事をしたいという方が増えたことも背景にありますが、そのなかで家の片づけだけでなく、仕事場の片づけも含めて身の回りをスッキリさせ、自分にとっての理想的な生き方、ありたい働き方が何なのかを考えたいと思う方が増えているようです。

私自身はデジタルに強いタイプではありませんが、日常的にスマートフォンやパソコンを使って仕事をし、海外も含めてボーダレスに活動しています。そもそも私たちの会社自体がリモートワーク中心で、データ共有や管理に役立つサービスを使って、データの整理を行っています。個人的には、似たような写真を抽出して整理する手助けをしてくれる写真整理用のアプリを便利に使っているなど、少しずつではありますが新しいテクノロジーを取り入れるようにしています。

最近では、ChatGPTのようなAI技術が巷を賑わせていますが、私は英語の勉強で活用していたりします。英会話が得意な方ではないため、ナチュラルに表現するにはどんな言葉が使えるのかといったことをChatGPTに聞いています。

便利なデジタルの世界ですが、本を購入するときになどは電子書籍ではなく100%紙派です。本という物体そのものはもちろん、めくる感じ、紙の端を折るなど、個人的には紙の本は私のなかで揺らがないときめきなのです。一方で、買い物は、時間が取れないこともあるため、オンラインのお世話になる機会が多いのが現実です。極力触れるもの、見に行けるものは触れて選びたいと思っていますが、特に2回目以降のリピート時にはオンラインを積極的に利用しています。

ときめきで選ぶということは基本的に変わりませんが、デジタルとうまく付き合うというバランスも大事な部分ではないでしょうか。仕事で考えると、例えばChatGPTなどはとても便利ですし、空いた時間でさらに仕事ができるという考えに至る方も少なくありません。ただ、便利なツールを使って空いた時間をどう配分していくと今の自分がときめくのかという人生全体で考えたいところです。何もせずにリラックスする時間を持つ、前からやりたかったヨガに挑戦してみるなど、人のときめく時間の使い方はどういうものなのかを意識することで、詰め込みだけではない時間の使い方が見えてくるはずです。

もちろん、空いた時間で仕事をすることにときめくという場合もあるはずですので、それは仕事に振り切ってしまって構わないと思います。

選択への自信を持つことができる片づけの力

AI技術でデータの片づけが自動化されるなど、これからも便利なものが増えてくることでしょう。それでも、最終的に残っていくもの、AIで表現できないものに、人のときめきがあると考えています。

何に対して自分の心が動くのか、これは合理的な判断とは合致しないことも多いはずです。自分が何にときめくのかという判断をどんどんクリアにしていくことで、片づけを通じてその判断力、ときめきの感覚を磨いていくことが大切です。

データ量の増大やAIをはじめとした新たなテクノロジーが普及していく世の中であっても、自分はこれを選ぶという、選択への自信を持つことができると考えています。実際に片づけをされた方が自分の人生をしっかり選択するようになり、これまでの仕事を退職して独立した、気の向かいないお付き合いを断って自分の好きなことに時間が使えるようになったなど、自分の人生がときめいたという声もたくさんいただいています。まさに自分を信じる力のようなものが、片づけの効果としてあるのです。そして、自分にとってのときめきの正解が分かってくるようになれば、自分の人生に迷いがなくなり、自分の人生が今以上に好きになる。結果として、人生がときめいてくるのです。

AI技術やデータそのものがますます重要になってくる時代だからこそ、自分の仕事や暮らしのなかにときめきを基準にした選択肢というのを取り入れてみてはいかがでしょうか。

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