簡易転送
ここでは、簡易転送について説明します。
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簡易転送は、配信側ホストと集信側ホストがどちらもHULFT Ver.8.4以降の場合に使用できます。
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簡易転送は、高強度暗号強制モードが有効な場合、使用できません。
(1) 簡易転送とは
簡易転送とは、事前に管理情報を登録せずに、配信ファイル名と集信側ホスト名だけを指定してファイルを配信できる機能です。
集信側ホストのポート番号を詳細ホスト情報から取得しないので、集信側ホストが初期値と異なるポート番号を設定している場合は、ポート番号も指定する必要があります。
簡易転送の実行方法は「オペレーション マニュアル」を参照してください。
簡易転送を実行するには、集信側ホストで事前に以下の作業が必要です。
-
配信側ホストが詳細ホスト情報に登録済みの場合は詳細ホスト情報で、未登録の場合はシステム動作環境設定で、簡易転送の受付許可を指定
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簡易転送の受付を許可するライブラリ名をファイルで指定
詳細は、以降の説明を参照してください。
(2) 利用可能な機能
簡易転送は、管理情報を必要としないため、簡易に転送を行えますが、機能に制限があります。
機能の利用可否について、注意が必要なものを以下の表に示します。
機能 |
簡易転送での利用可否 |
---|---|
再配信 |
× |
自動再配信 |
○ |
同期転送および非同期転送 |
○ |
同報配信 |
× |
圧縮転送 |
○(*1) |
世代管理 |
× |
コード変換 |
○(*2) |
メッセージ送信 |
× |
ジョブ起動 |
× |
データ検証機能 |
○(*3) |
転送グループチェック |
× |
操作ログの出力 |
○ |
暗号化 |
○(*4) |
○ |
: |
利用可能 |
× |
: |
利用不可 |
*1 |
: |
DEFLATE圧縮を設定した場合と同様の動作をします。 |
*2 |
: |
詳細については「(8) コード変換」を参照してください。 |
*3 |
: |
簡易転送の場合、データ検証は必ず行われます。 |
*4 |
: |
簡易転送の場合、暗号キーは自動的に生成されます。 |
(3) 簡易転送の実行方法
簡易転送は、配信側ホストから簡易転送配信要求コマンドで実行します。
簡易転送配信要求コマンドの詳細は、「オペレーション マニュアル」を参照してください。
(4) 配信時の動作
簡易転送で配信する際、HULFTは管理情報を参照しないため、常に同じ設定で動作します。
簡易転送配信要求を実行する際のパラメータで指定できるもの以外は、配信管理情報および詳細ホスト情報に以下のような値が設定された場合と同等の動作となります。
配信管理情報と詳細ホスト情報の詳細は、「オペレーション マニュアル」を参照してください。
項目名 |
設定値 |
---|---|
ファイルID |
_INSTANT_TRANSFER_ |
配信ファイル名 |
パラメータで指定 |
転送タイプ |
パラメータで指定(*1) |
M/フォーマットID |
(省略) |
圧縮方式 |
DEFLATE圧縮 |
DEFLATEレベル |
標準 |
コード変換 |
(*2) |
EBCDICセット |
(*2) |
配信ファイルの扱い |
保存 |
転送グループID |
(省略) |
配信前ジョブID |
(省略) |
正常時ジョブID |
(省略) |
異常時ジョブID |
(省略) |
連携DBID |
(省略) |
転送間隔 |
0 |
転送優先度 |
パラメータで指定 |
転送ブロック長 |
0 |
転送ブロック数 |
0 |
シフトコードの扱い |
(*3) |
後続文字カット |
カットしない |
暗号キー |
自動生成 |
*1 |
: |
テキスト転送とバイナリ転送のみ指定可能です。 |
*2 |
: |
「(8) コード変換」を参照してください。 |
*3 |
: |
自ホストの転送コードセットがIBM漢字またはIBM簡体字の場合は“カットする”、UTF-8の場合は“付加する”です。 |
項目名 |
設定値 |
---|---|
ホスト種 |
集信側ホストのホスト種 |
転送コードセット |
(*1) |
日本語規格 |
83JIS |
集信ポートNO. |
パラメータで指定 |
要求受付ポートNO. |
(*2) |
ホスト別配信多重度 |
(省略) |
HULFT7通信モード |
無効 |
PROXYサーバ名 |
(省略) |
PROXYポートNO. |
(省略) |
送信要求・再送要求受付許可 |
(*2) |
集信後ジョブ結果参照要求受付許可 |
(*2) |
ジョブ実行結果通知受付許可 |
(*2) |
リモートジョブ実行受付許可 |
(*2) |
簡易転送受付許可 |
(*2) |
ユーザの通知 |
通知しない |
*1 |
: |
「(8) コード変換」を参照してください。 |
*2 |
: |
配信とは関係のない項目です。 |
(5) 集信時の動作
簡易転送で集信する際、HULFTは管理情報を参照しないため、常に同じ設定で動作します。
簡易転送配信要求コマンドのパラメータで指定できるもの以外は、集信管理情報および詳細ホスト情報に以下のような値が設定された場合と同等の動作となります。
集信管理情報と詳細ホスト情報の詳細は、「オペレーション マニュアル」を参照してください。
項目名 |
設定値 |
---|---|
ファイルID |
_INSTANT_TRANSFER_ |
集信ファイル名 |
(*1) |
レコード長 |
(*1) |
登録モード |
置き換え |
異常時の処置 |
保存 |
集信形態 |
単一集信 |
世代管理 |
しない |
世代管理数 |
0 |
EBCDICセット |
(*2) |
正常時ジョブID |
(省略) |
異常時ジョブID |
(省略) |
集信完了通知 |
受信完了 |
転送グループID |
(省略) |
データ検証 |
する |
暗号キー |
自動生成 |
*1 |
: |
「(6) 集信ファイル」を参照してください。 |
*2 |
: |
「(8) コード変換」を参照してください。 |
項目名 |
設定値 |
---|---|
ホスト種 |
配信側ホストのホスト種 |
転送コードセット |
(*1) |
日本語規格 |
83JIS |
集信ポートNO. |
(*2) |
要求受付ポートNO. |
(*2) |
ホスト別配信多重度 |
(*2) |
HULFT7通信モード |
(*2) |
PROXYサーバ名 |
(*2) |
PROXYポートNO. |
(*2) |
送信要求・再送要求受付許可 |
(*2) |
集信後ジョブ結果参照要求受付許可 |
(*2) |
ジョブ実行結果通知受付許可 |
(*2) |
リモートジョブ実行受付許可 |
(*2) |
簡易転送受付許可 |
(*3) |
ユーザの通知 |
(*2) |
*1 |
: |
「(8) コード変換」を参照してください。 |
*2 |
: |
集信には関係のない項目です。 |
*3 |
: |
詳細ホスト情報が登録されている場合は、当該項目の設定値に従います。 |
簡易転送では、集信ファイルに関する情報を集信側ホストのシステム動作環境設定または配信側ホストで簡易転送配信要求を実行する際のパラメータで指定できます。
簡易転送配信要求を実行する際のパラメータについては、「オペレーション マニュアル」を参照してください。
配信側ホストで集信ファイル名と集信ファイルの保存先を指定または省略した場合、集信管理情報の集信ファイル名に以下の値を設定したときと同等の動作となります。
集信ファイルの保存先 |
集信ファイル名 |
集信管理情報のファイル名(FILENAME) |
---|---|---|
指定 |
指定 |
集信ファイルの保存先/集信ファイル名 |
省略 |
集信ファイルの保存先/&SNDFILE |
|
省略 |
指定 |
デフォルトライブラリ(*1)/集信ファイル名 |
省略 |
デフォルトライブラリ(*1)/&SNDFILE |
*1 |
: |
デフォルトライブラリは、簡易転送集信ライブラリ許可リストファイルで指定します。 簡易転送集信ライブラリ許可リストファイルについては、「(7) 集信可能なライブラリ名の指定」を参照してください。 |
集信ファイルの保存先として指定したライブラリ名が「簡易転送集信ライブラリ許可リストファイル」で指定したライブラリ名のいずれかと一致した場合のみ集信できます。
簡易転送集信ライブラリ許可リストファイルについては「(7) 集信可能なライブラリ名の指定」を参照してください。
既存ファイルに集信する場合、そのファイルのレコード長が使用されます。
集信ファイルを新規作成する場合、そのレコード長はシステム動作環境設定の簡易転送集信ファイルレコード長(INSTTRANSRCDLEN)の値が使用されます。
項目の詳細は、「簡易転送関連設定」を参照してください。
集信ファイルを新規作成すると、配信ファイルの内容によらず常に同じレコード長になってしまいます。あらかじめ配信ファイルに合わせて集信ファイルを作成しておくことをお勧めします。
簡易転送では、配信側ホストで集信ファイルの保存先と集信ファイル名を指定できるため、以下のような可能性があります。
-
集信側ホストの重要なファイルが上書きされてしまう
-
集信ファイルの保存先または集信ファイル名が業務の運用ルールから外れてしまう
そのような事態を避けるため、簡易転送を行う場合は、あらかじめ集信側ホストで集信可能なライブラリ名のリストを指定しておきます。
配信側ホストで指定した集信ファイルの保存場所が、そのリストに含まれるライブラリ名のいずれかと一致した場合のみ集信の受け付けを許可します。
簡易転送で集信可能なライブラリ名のリストは、簡易転送集信ライブラリ許可リストファイルと呼ばれるファイルで指定します。
配信側ホストで集信ファイルの保存先を省略した場合に使用されるデフォルトライブラリも、簡易転送集信ライブラリ許可リストファイルで指定します。
簡易転送集信ライブラリ許可リストファイルが存在しない場合、または簡易転送集信ライブラリ許可リストファイルの読み込みに失敗した場合、常に簡易転送の集信の受け付けを拒否します。
簡易転送集信ライブラリ許可リストファイルの設定
ファイル名
簡易転送集信ライブラリ許可リストファイルのファイル名は「INSTALWLIB」です。このファイル名は変更できません。
簡易転送集信ライブラリ許可リストファイルは、HULFTがインストールされているライブラリに置きます。
記述フォーマット
簡易転送集信ライブラリ許可リストファイルは以下のフォーマットで記述します。
* * INSTANT TRANSFER ALLOW LIBRARY * * DEFAULT LIBRARY DEFAULTLIB=デフォルトライブラリ名 * ALLOW LIBRARY _LIST_START_ ライブラリ名1 ライブラリ名2 : _LIST_END_
- コメント
-
先頭が「*」の行はコメントとみなされます。
- デフォルトライブラリ名
-
「DEFAULTLIB=」に続けてデフォルトライブラリ名を指定します。
配信側ホストで集信ファイルの保存先が省略された場合、集信ファイルをデフォルトライブラリに格納します。
作成済みのライブラリ名を指定してください。配信側ホストで集信ファイルの保存先が省略された場合、簡易転送の集信を受け付けた時点でライブラリ名が存在していないと転送エラーになります。
「DEFAULTLIB=」で始まるレコードが複数あった場合、最初の指定が採用され、2番目以降は無視されます。
初期値として“QGPL”が設定されています。
デフォルトライブラリ名を省略した場合、集信受付ジョブは正常に起動しますが、配信側ホストで集信ファイルの保存先が省略されると、簡易転送の受け付けを拒否します。
- ライブラリ名
-
「_LIST_START_」から「_LIST_END_」の間のレコードで、集信を許可するライブラリを1レコードに1つずつ指定します。デフォルトライブラリ名とライブラリ名を合わせて1000レコードまで指定できます。
「*」を使用すると、ライブラリ名を前方一致または後方一致で指定できます。「*」だけを指定した場合は任意のライブラリ名と一致します。
配信側ホストで指定された集信ファイルの保存先が、いずれかのライブラリ名と一致した場合に簡易転送の受け付けを許可します。集信ファイルの保存先がどのライブラリ名とも一致しなかった場合は簡易転送の受け付けを拒否します。
ライブラリを1つも指定しなかった場合、集信受付ジョブは正常に起動しますが、配信側ホストで集信ファイルの保存先が指定されると、簡易転送の受け付けを拒否します。
-
「_LIST_START_」から「_LIST_END_」の間では、行頭に「*」があってもコメントとはみなしません。ライブラリ名の後方一致または任意指定として扱います。
-
11バイト以上のライブラリ名は無視されます。
-
上記の記述フォーマットに合っていないレコードは無視されます。
記述例
* * INSTANT TRANSFER ALLOW LIBRARY * * DEFAULT LIBRARY DEFAULTLIB=INSTTRANS * ALLOW LIBRARY _LIST_START_ ABC DEF* *OPQ _LIST_END_
上記のように指定した場合、以下のように動作します。
-
配信側ホストで集信ファイルの保存先が省略された場合、集信ファイルをライブラリ「INSTTRANS」に格納します。
-
配信側ホストで集信ファイルの保存先として“ABC”、“DEF001”、または“LMNOPQ”が指定された場合、簡易転送の受け付けを許可します。
-
配信側ホストで集信ファイルの保存先として“ABCD”や“ZZZ”が指定された場合、簡易転送の受け付けを拒否します。
-
配信側ホストで集信ファイルの保存先として“123OPQ”が指定されると、“*QPQ”の指定と一致するため簡易転送の受け付けを許可しますが、“123OPQ”は不正なライブラリ名なので転送エラーになります。
簡易転送では、コード変換に関する情報をシステム動作環境設定の以下の項目で指定します。
転送コードセット(CS4TRNSFR)
管理情報を使用する転送と同様に、自ホストのコードセットを指定します。
簡易転送EBCDICセット(INSTTRANSEBCDIC)
簡易転送で使用する自ホストのEBCDICセットを指定します。
自ホストの転送コードセットがUTF-8の場合、この値は使用しません。
簡易転送コード変換(INSTTRANSCODCNV)
簡易転送で配信側変換を行うか集信側変換を行うかを指定します。
相手ホストのコードセットの情報は、転送時に相手ホストから通知された値を使用します。
コード変換の動作や注意点については「コード変換 マニュアル」を参照してください。
(9) 簡易転送の受付設定機能
簡易転送では、集信側ホストのホスト名とポート番号がわかればファイルを配信できます。
集信側ホストでは、意図しない配信側ホストからの簡易転送を拒否することができます。
初期値では、配信側ホストが詳細ホスト情報に登録済みかどうかにかかわらず、すべての簡易転送を拒否する設定になっています。
詳細ホスト情報の簡易転送受付許可(ALLOWINSTTRANS)を設定すると、ホストごとに簡易転送を受け付けるかどうかを指定できます。
詳細ホスト情報については、「オペレーション マニュアル」を参照してください。
配信側ホストが詳細ホスト情報に登録済みでも、参照する項目は簡易転送受付許可のみです。
他の項目は参照しません。
システム動作環境設定の未登録ホストからの簡易転送受付許可(ALLOWINSTTRANS)を設定すると、未登録ホストからの簡易転送を受け付けるかどうかを一括して指定できます。
未登録ホストからの簡易転送受付許可については、「セキュリティ関連設定」を参照してください。
(10) 簡易転送の留意事項
簡易転送に関連した注意点を以下にまとめます。
-
簡易転送配信要求で実行した転送には、HULFTが自動的に“_INSTANT_TRANSFER_”というファイルIDを付与します。
ユーザがこのファイルIDを指定して以下の処理を実行することはできません。-
配信要求の発行
-
再配信要求の発行
-
送信要求の発行
-
再送要求の発行
-
配信管理情報の登録
-
集信管理情報の登録
一方、“_INSTANT_TRANSFER_”というファイルIDが付与された転送状況や転送履歴については、従来のファイルIDと同様に以下の処理を実行できます。
-
配信状況の照会と削除
-
集信状況の照会と削除
-
配信キャンセル
-
集信キャンセル
-
未配信状態キューの変更
-
-
システム動作環境設定の動的パラメータ指定(DYNPARAM)に“0(動的変更不可能)”を設定した場合でも、簡易転送配信要求コマンドでは配信ファイル名と集信側ホスト名をパラメータで指定できます。
-
簡易転送配信要求コマンドのエラー、および簡易転送の転送状況や転送履歴に出力される完了コードと詳細コードについては、「エラーコード・メッセージ」を参照してください。
-
管理情報を使用する転送と簡易転送では、セキュリティに関して以下のような違いがあります。
表2.11 配信側ホストでのセキュリティ
管理情報を使用する転送
簡易転送
ファイルID
集信側ホストと一致した場合に配信可能
配信管理情報を登録せずに配信可能
ホスト名
詳細ホスト情報に登録済みのホストに配信可能
任意のホストに配信可能
ホスト別の多重度
詳細ホスト情報で設定した値まで同時配信可能
制限できない
システム全体の多重度
システム動作環境設定で設定した値まで同時配信可能
システム動作環境設定で設定した値まで同時配信可能
表2.12 集信側ホストでのセキュリティ
管理情報を使用する転送
簡易転送
ファイルID
配信側ホストと一致した場合に集信可能
集信管理情報を登録せずに集信可能
ホスト名
詳細ホスト情報に登録済みのホストから集信可能
詳細ホスト情報で許可したホストまたは任意の未登録ホストから集信可能(*1)
集信ファイルの保存場所
集信管理情報で指定したファイル名に集信可能
簡易転送集信ライブラリ許可リストファイルで指定したライブラリに集信可能
集信ファイル名
任意のファイル名で集信可能
システム全体の多重度
システム動作環境設定で設定した値まで同時集信可能
システム動作環境設定で設定した値まで同時集信可能
*1
:
初期値では許可しない設定になっています。
簡易転送を使用する際は、上記の点に注意して、詳細ホスト情報、簡易転送集信ライブラリ許可リストファイルを適切に設定してください。