背景課題一方向の連携では、ダブルブッキングの可能性も
全期間固定金利型住宅ローン「フラット35」を民間金融機関と提携して提供するほか、災害復興住宅融資などを手掛ける住宅金融支援機構。戦後日本の住宅事情を支えた住宅金融公庫から業務を継承して2007年に発足した独立行政法人で、住宅に関する国の政策を実施する機関として、市街地の防災や居住環境向上などに関わる「まちづくり融資」なども提供している。
かつて公庫時代には個人顧客へ直接融資を提供していたが、現在の住宅金融支援機構は、民間金融機関による全期間固定金利型住宅ローンの供給を支援する「証券化支援事業」を主とするようになっており、同機構を代表する金融サービスであるフラット35もそれに含まれる。
住宅金融支援機構でフラット35の営業に携わる担当者は全国で200名弱、彼らが対応する案件は月に1,500件ほどあり、その活動を効率的に管理するため10年ほど前からSFAを利用してきた。一方で、全職員の予定などを管理するグループウェアが別に存在していたが、スケジュール連携に課題があった。
「以前から連携はできていたものの、SFA上の営業スケジュールをグループウェアに転送するだけの一方向のみでした」と語るのは、住宅金融支援機構 業務推進部 営業支援グループ グループ長の市村真氏だ。
「グループウェア上で内部のミーティングなどが設定されていた場合、その情報をSFAのスケジュール上では把握できず、ダブルブッキングしてしまう可能性もありました。空いている時間帯には他の職員が予定を入れることがあり、特に管理職クラスになると営業活動以外の仕事が多いので、そういった状況に陥りやすいのです。これを避けるため、営業担当が顧客との面談などをセッティングする際、SFAとグループウェアの両方をチェックしなければならなかったのです」(市村氏)
選定理由開発不要で双方向連携を可能にする「PIMSYNC」を採用
住宅金融支援機構は近年、東日本大震災をはじめとする災害からの復興を支援する事業などで業務量が増えている一方、営業担当者の人数は大きく変わっていない。そこで業務効率化と、システム活用によるPDCAサイクルを回すために、SFAとグループウェアの連携を双方向に行えるようにすることが必須だと考えていた。
そして、住宅金融支援機構が利用しているグループウェアと双方向の連携が可能となることを要件として、2015年2月に新たなSFAの入札を実施した。採用されたのは、ソフトブレーンのCRM/SFA「eセールスマネージャー Remix Cloud」と、アプレッソのスケジュール連携ソフトウェア「PIMSYNC」の組み合わせだった。e セールスマネージャーは住宅金融支援機構が以前から使用してきたSFAであり、今回はそれをバージョンアップしクラウド対応したのだが、新たにPIMSYNCを追加することでグループウェアとの双方向連携を可能としたのがポイントだった。
この組み合わせを提案した背景を、ソフトブレーン 開発本部カスタマーサポートソリューション部 部長の宮澤一広氏は以下のように説明している。
「グループウェアとの双方向連携は、カスタマイズ開発することでも実現可能です。しかし、開発するとなると検証も含めて半年はかかってしまいますし、当然多額のコストも発生します。また導入後のメンテナンスをはじめ、グループウェアやSFAに変更などがあれば、さらなる費用が発生する可能性があります。こうした開発・運用の手間やコストを削減しスケジュールを連携させることができるのは、アプレッソの『PIMSYNC』だけでした」
効果/展望自動同期により使い勝手が格段に向上し、SFAの活用が広がった
PIMSYNCは、スケジュール連携に特化したツールで、連携するシステムや項目に関する設定を行うだけで開発不要でスピーディーに導入できる。主要なグループウェアやSFAなどのスケジュール機能に対応しており、複数システムのスケジュール同期をはじめ、グループウェアの移行の際に利用できる。
住宅金融支援機構のケースでは、SFAの更新を5月の連休明けに作業を開始し6月中旬には稼働を開始しているが、この約1ヶ月半の期間の中でPIMSYNC関連の設定・検証作業は正味2日程度だった。
「PIMSYNCによって、グループウェアとSFAの一方に入力したスケジュールは、自動的に同期されるようになりました。両方を確認した上で予定を登録するといったことは不要となり、ダブルブッキングなどのミスも解消されています。また、今回からSFAをタブレットから利用できるようにしており、その点でも使い勝手が向上しました」(市村氏)
導入後1年ほどが経過した現在、SFAの利用状況は大きく変わった。PIMSYNCによる双方向自動同期も相まってシステム全体の使い勝手が向上した結果、以前より格段に利用率が進んだのだ。
「営業支援グループでは定期的にSFAの利用率を確認しているのですが、2015年8月と2016年8月で比べると、SFA上のコメントや閲覧などの回数は2.5倍くらいになりました。特に管理職にとっては、今のシステムになってから部下の動きが把握しやすくなり、部下の行動をSFAでチェックしてコメントをするといったことが以前にも増して行われるようになっています」(市村氏)
営業支援グループでは、導入後もソフトブレーンと定期的にディスカッションを行っており、活用の進んでいる営業チームのやり取りをピックアップしては他のチームにも横展開するなどの活動を行っている。さらに、住宅金融支援機構では今後、地域連携の取り組みといったフラット35以外の業務にもeセールスマネージャー Remix Cloudの活用を検討し、業務の効率化につとめたいとしている。