佐藤舞先生によるデータ活用講座
Lesson1
「ビジネスのデータ活用ってそもそも
どうやるの?」 講師:佐藤舞さん

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▼プロフィール
佐藤 舞(さとう まい)。データ活用コンサルタント。合同会社デルタクリエイトの代表社員であり、マーケティング・サイエンス学会に所属。データ活用や統計学の入門書籍として出版した『はじめての統計学 レジの行列が早く進むのは、どっち!?』(総合法令出版)は、多くの書店ランキングで1位を獲得。
※役職や所属は取材時のものです。

佐藤舞先生による
LESSON1 解説動画

「ビジネスのデータ活用ってそもそもどうやるの?」

このレッスンでは、ビジネスマンがデータ活用の第一歩を踏み出すための情報をお伝えしていきます。
レッスンのゴールは、

ビジネスマンがデータを活用するイメージの概要を掴むことができる
データ活用のメリットを理解できる

という2つです。

1. データ活用の必要性

まず初めに、データ活用の必要性について。数年前から、「5G」「IoT」「DX」といったデジタルデータやデジタル通信に関する用語が数多く登場しました。皆さんの中にも、これらの単語をよく耳にする方は多いのではないのでしょうか。デジタルデータの発展は急速に進んでおり、2025年には5Gによるデータ流通量が現在の約2倍以上にもなると言われています。その一方、日本企業のデジタルデータ活用状況は先進諸国に比べてかなり低いのが現状です。つまり、日本におけるデジタルデータの活用はまだまだ伸び代がある段階なのです。さらにコロナ禍によってテレワーク拡大、EC利用増加、キャッシュレス普及なども進んでおり、今後企業内に溜まるデータは爆発的に増えていくことが予想されています。こうした背景から、データ活用人材は現在の10倍は必要だとも言われています。

ここまで、日本の状況に焦点を当ててお話してきましたが、データ分析の教育は日本だけでなく世界的な課題となっています。三菱総合研究所が運営する未来共創イノベーションネットワーク(INCF)から発行されている「イノベーションによる解決が期待される社会課題一覧(※1)」というレポートでは、AIやDXによって人間が行う多くの活動が取って代わられることや、AIやロボットを道具あるいはパートナーとして使いこなすリテラシーを養う教育の機会が不足していることについて触れられています。このレポートの内容を私なりに噛み砕くと、「これからは世の中に溢れるデータと間違いなく共存していく社会になっていくため、ビジネスマンがデータリテラシーを身につけることが非常に重要となってくる」ということが言えます。

データ分析の教育は、世界的に喫緊の課題

2. データ活用で失敗する典型例

ただ、いきなりデータを活用しようと思っても何から手をつけたらいいか分かりませんよね。焦って高額なBIツールを導入してしまい、結局うまく活用できなかったという例も少なくありません。そこで、データ活用で失敗する典型的な例を2つ紹介したいと思います。

※BIツール:様々なデータを分析・可視化して(分析結果のグラフを生成するなど)、経営や業務に役に立てるソフトウェアツールのこと

数千万円かけて導入したシステムが使いこなせず、結局エクセルで管理してしまった
外部のデータサイエンティストに高額な費用を払ってデータ分析を頼んだ結果、既知の事実を導き出しただけだった

①の要因は、「何かしらのツールを入れればデータを活用できるのだろう」という誤解です。②の要因は、データの専門家であるデータサイエンティストに頼めば、自分たちが知らない新しい発見をしてくれるだろうという安易な考えによるものです。

上に挙げた例を反面教師にして、皆さんには「こうならないために」という視点で続きを読んでいただきたいと思います。

3. データ活用の成功例

では、どうすればデータ活用を成功させることができるのか、ポイントを解説していきます。データ活用に国内で最も成功していると言われている株式会社ワークマンでは、「全員Excel経営」という経営方針を用いて、店舗ごとに現場のスタッフが自らExcelでデータを閲覧し、仮説・検証することを最重要視しています。これはデータを元に意思決定するという文化が根付いているためです。地位や役職によって意見の重要度を決めるのではなく、データを元に意思決定をすることでビジネスの再現性を高めることにも成功しています。この取り組みから分かるように、実はデータ分析のスキルとは、読み書きやそろばんのように誰でも身につけることができるものなのです。だからこそ、データ活用を成功させるにはデータ活用をアウトソースするのではなく、方法論(データ活用のノウハウ)とBIツール(データ集計・加工)を扱える人材や仕組みを、自社で内製することを強くおすすめします。データ分析力は企業の競争優位にもなります。データ活用を内製化し、そのシステムをツールとして同業他社に販売すれば、収益拡大につながります。また、データ分析力は他社に真似されにくい資産として残すことが可能です。今流行りのサブスクリプション型のビジネスモデルを導入している企業は、株式指数S&P500の平均成長率の8倍を記録していると言われています。ただし、「単にITツールを導入すればよい」というわけでもなく、伸びている会社とは、データを分析して顧客インサイト、つまりデータから得られるあらゆる発見を活用できているという部分が、最も重要なポイントなのです。ですので、ITツールを上手く使いながら、社内でデータ活用を内製して、自社が持つデータに新たな価値を見出し、ビジネスチャンスを掴んでいただきたいと思います。

データ分析力は企業の競争優位