データの共有・一元管理、業務処理の効率化を目指してシステム統合
タツノ・メカトロニクスでは、本社、支社、横浜工場及び関連会社に散在しているシステム環境を、グループとしてデータの共有・一元管理を行う目的で、2000年1月に『UNIFY21』という名のシステム統合プロジェクトを発足しました。
グループ内の情報共有の強化(イントラネット)、協力会社との情報共有の強化(インターネット)、基幹業務処理のスピードアップ、共有情報の一元管理(DWH)を目的に、経理システム、人事・給与システム、生産管理システムなど同社の基幹システムを統合するため、当時注目されていたEAIツールの選定を開始し、5社の製品を40項目にわたって比較・検討しました。
結果として、2000年4月に外資系EAIツールを最適なツールとして選定しました。しかしながら、各機種との接続やデータ連携、開発作業等に思いのほか時間がかかりました。
特に、データ件数の増加によるパフォーマンス低下の問題は深刻で、アメリカからエンジニアを派遣してもらうなどして解決しましたが、これらの影響によりデータ連携約90本の開発が終了したのは2001年12月、本番稼動は翌年1月となり、実に開発期間は20ヶ月にも及んでしまいました。
2002年より運用に入りましたが、サポート更新時期を迎え、昨今の経費削減の課題が情報部門にも要求され、年間保守料の高さが課題として浮上してきました。そこで、データベースのサポートで取引のあった株式会社アシスト(以下、アシスト社)の担当者に相談し、2005年1月、「DataSpider」の紹介を受け、2月に評価版を導入し、「DataSpider」の検討が始まりました。
「外資系EAIツールのサーバリプレース時期が3月で、サポート更新時期が7月ということもあり、この7月までに「DataSpider」が使えるかどうか目処が立てばと思っていました。ほかのプロジェクトも平行していたため、なかなか評価の時間がとれなかったのですが、1ヶ月ほど評価してみて使えることが分かりました」(電算室 課長代理:岡澤利廣氏)
そして、「DataSpider Enterprise Server」(以下、「DataSpider」)の採用が決定しました。
複雑なレコード構造を持つ受注データを扱えるかどうかがキーポイント
「DataSpider」の選定にあたり、複雑なレコード構造を持つ受注データ(シーケンシャルファイル)をアイコンのプロパティ設定だけで取り扱えるのかどうかが重要なポイントとなりました。特に受注データは、生産管理システムのデータベースに取り込む重要なデータです。
「外資系EAIツールは言語系インターフェースで、いかようにでもコーディングできましたが、「DataSpider」のGUIで現在と同じ処理が可能かどうか。親番情報や枝番情報に基づくレコード単位に分割してデータベースに取り込むことを考えたのですが、なかなかイメージが浮かばなかったため、再度、アシスト社の担当者に協力をお願いしました。「DataSpider」によるサンプルのプログラムを提供していただき、分析して書き直してみたら問題なく実現できることが分かりました」(岡澤氏)
また、外資系EAIツールの運用における、以下のような問題点を「DataSpider」で同時に解決できることも評価のポイントとなりました。
- 保守費用の負担が大きい
- 技術者の育成に時間がかかる
- 独自の開発言語をマスターしなければならない
- マニュアルが英語のため、詳細なニュアンスが把握しにくい
- 実行結果のログ調査・解析に時間がかかる
- 外国の製品であるため、問い合わせやその対応に時間がかかる
従って、リプレースに際して以下の点を要件としました。
- 保守費用を削減できること
- 現在稼働しているデータ連携処理と同等の処理が可能であること
- Webとの親和性が高い最新の技術を採用していること(XML、Javaテクノロジー)
- 純国産EAI製品であること(ユーザー要件の早期反映、迅速なサポート)
- 開発工数を削減できること(高い開発生産性、保守容易性)
「DataSpider」はJavaテクノロジーによるミドルウェアであり、アダプタを介して取り込んだデータはすべてXMLに変換して処理されます。このため、Webとの親和性が高いのも特徴です。また、先進のGUI環境を提供し、開発工数の削減に貢献するツールでもあります。そして、この「DataSpider」を開発・販売しているのは、株式会社アプレッソという日本企業です。上記の要件をすべて満たし、2005年6月、「DataSpider」が導入され、データ連携90本の開発がスタートしました。
開発はスムーズに進み、予定の2カ月を大幅に短縮して1カ月で終了
データ連携90本の開発要員は、わずか2人でした。岡澤氏は当初、XMLについて専門的な知識は持っていなかったと言います。基本的な知識を身につけ、基本的なトレーニングに参加し、評価版の「DataSpider」を扱う過程で操作方法などを習熟し、もう一人の担当者である電算室の西森浩氏にスキルトランスファーを行いながら、当初2ヶ月の開発予定を1ヶ月ほどで終了することができました。岡澤氏は、セミナーを受講されてから開発作業に取り組んでいますが「基本的なXMLおよびSQLの知識があれば、セミナーなどを受講しなくても十分に開発が可能だと思います」(岡澤氏)とまで言われるほど、「DataSpider」の高い生産性を評価しています。
岡澤氏は、 「DataSpider」による開発の良さを次のように述べています。
- 「Script Designer」にて各種接続アダプタおよびロジックアイコンを並べるだけで処理ロジックが作成でき、各種データ間の連携についても「Mapper」を使用して、項目と項目に線を引くだけで定義できる。
- アイコンでビジュアル的に表現されているため、処理フローが見やすく、開発していて楽しくなる。
- ログのレベルを5段階で設定できるため、開発のステータスに応じてデバッグに必要な情報の選択が可能。また、出力されたログは「Log Viewer」で簡単に確認でき、エラー発生時の分析・調査が容易である。
また、西森氏も「最初はGUIで本当に思い通りのロジックが開発できるのかどうか不安でした。しかし、ログで確認しながら進められたので安心感がありました」と使いやすさを高く評価しています。
次期販売システム開発時のデータ移行への活用を予定し、ASPとの連携も検討中
「DataSpider」により統合されたシステムは、旧システムとの平行運用を経て、2005年10月に本番稼働を開始しました。同社では、スクリプトファイルのネーミングルールや環境設定、ログの確認手順などをまとめてオリジナルのマニュアルを作成しており、運用に際して万全の体制を敷いています。
今後については、次期販売システムの開発を控えており、現行システムからのデータ移行に「DataSpider」を活用する予定です。 「蓄積したノウハウが有効利用でき、短期間で開発を終えることができると期待しています」(岡澤氏)
また、現在は郵送している取引先への支払い明細書を、FAX送信やファイル送信を行うASPと連携して処理することも検討しています。「DataSpider」はWebとの親和性が高いため、このような連携によって独自のアプリケーション開発の工数を軽減することも可能です。