経営に必要な情報を自動的かつリアルタイムに提供するシステムが必要
NTTソフトウェア株式会社は、高度なネットワークテクノロジーとシステム構築力を基盤に、ICT経営戦略コンサルティングからシステム構築、保守・運用にいたるまでトータルに提供しています。
同社のようなソリューション提供ビジネスでは、システム開発プロジェクトが常時多数、同時に進行しています。そのため各プロジェクトの進捗状況、開発リソースの状況、プロジェクト収支等の状況を把握し、プロジェクトを成功させるための経営判断を適宜行っていくことが重要です。また、日々提案されている営業案件の進捗状況により、リソースの再調整も必要になってきます。
NTTソフトウェアでは、ERPで会計情報や進行中のプロジェクト情報を、勤務管理システムで開発リソースの情報を、そして営業支援システムで営業進捗に関する情報を、それぞれ管理し、これらの情報を集計し、整理することで、総合的な経営判断を行うための資料としていました。
これまで、これらの情報集計はExcelで行われ、月次の経営会議などで利用されてきました。しかし、月次での情報把握では問題が明らかになったとしても対策が後手に回ることがあり、経営陣は、最新のデータに基づいて日々経営判断ができる仕組みを求めていました。いわゆる「経営情報の見える化」です。同社が、この「見える化」に取り組み始めたのは、2005年1月で、社内に横断的なワーキンググループが設置され、検討がスタートしました。
将来の変化に柔軟に対応できるETLツールとして「DataSpider」を採用
ワーキンググループは、営業推進本部 マーケティング部門 市場戦略シニアエキスパートの長尾順太郎氏が中心となり、「経営情報システムをどのように作るか」の前に、「どのような情報を扱うのか」とういう観点から検討が開始されました。まず、扱う情報の内容に関しては、KPI(Key Performance Indicator)の設定や、ドリルダウンのシナリオ設定のため、幹部へのヒアリングや過去に使われてきた資料の分析を行いました。
「経営情報システムで何を見せるかは、経営者の日々の経営判断にどれだけ有益であるかという観点で設定すべきです。そのため経営幹部には何度もヒヤリングをして、経営者の関心を明らかにしました。その結果、KPIには経営状況にかかわらず基本セットとして用意する部分と、その時々の経営課題によって追加や変更される部分があり、後者の対応が重要とわかりました。経営情報システムは、そのシステム構成においても経営課題の変化や経営者の関心の変化を反映出来る柔軟性を持つべきだとわかりました」(長尾氏)
システムで使うツールに関しては、集計/レポーティング/可視化を担うBI(Business Intelligence)ツールと、各システムからデータを抽出してBIツールに送り込むETL(Extract,Transform and Load)ツールを組み合わせる形で検討が進められました。ユーザの目に見える部分の機能を実現するBIツールには、ウイングアーク テクノロジーズ株式会社の「Dr.Sum EA」を選定しました。「Dr.Sum EA」は、そのツールに格納されたデータを柔軟に加工でき、ユーザニーズに応じた情報提供が可能となります。
ただしその前段として、BIツールに対して、多様なシステムからデータを連携させる必要があります。その際、一からのプログラミング開発を行うと、コストが増大します。また、初期の構築コストだけでなく、経営ニーズに応じて変更するメンテナンス性も重要となります。このため、ETLツールには「DataSpider」が選定されました。長尾氏は、ETLツールの重要性を次のように語っています。
「年度途中の計画の変更や組織の変更に柔軟に対応できる必要があります。また新たな年度になったときには重点的にフォローすべきKPIやそれに必要なデータが追加されることもあります。これらの変更をETLツールで吸収することにしました。ETLツールは、経営情報システムの柔軟性を実現する重要なツールに位置づけられます」(長尾氏)
「DataSpider」を採用したポイントとして、
- 短期開発が可能なこと
- アイコンを中心としたノンプログラミング開発
- 安価なパッケージ
- 営業支援システム「Salesforce」を始め多様な業務システムと連携できること
等を挙げられました。長尾氏は「DataSpider」の良さを次のように語っています。
「DataSpiderの設計画面は発注する側の立場から見ても分かりやすく、開発中の要件変更にも迅速な対応が可能だったと言えるでしょう。複数の業務システムからデータを収集する際に、データの重複が発生することがありますが、このような重複の排除もDataSpiderで行っています。業務システムから取り込み処理やデータに異常を検知した場合もDataSpiderがアラートを発行しています。今後、経営情報システムで扱うデータが増えることも考えられます。多様なデータソースを利用できるDataSpiderなら、将来的な拡張にも容易に対応できることと期待しています」(長尾氏)
日々の最新データ化による集計負荷の大幅軽減
同社の経営情報システムは、2005年9月に構築開始、2006年1月に完成、1カ月の試験運用を経て2月から正式稼働となりました。
正式稼動に当り、ユーザPCの起動時に経営情報システムを表示する工夫も行われました。その結果、日々の最新データにより、問題が生じる前に迅速な対応が可能となりました。経営幹部からは、KPIの拡張や表示機能に関する新たな要望も上がってきます。これも短期間にシステム構築できた『見える化』の効果です。
「システムが自動的に集計を行ってくれるようになったので、経営情報のためのデータ整理や集計作業そのものから解放され、現場の負担も大幅に軽減されています」(長尾氏)
本番稼働はもちろん運用体制移管もスムーズに
正式な本番稼働に際して、経営情報システムはワーキンググループからシステム部門へと移管しましたが、その引継ぎ作業も容易に行えました。また、年度切替作業に関しても、容易に行うことができました。
「分かり易い画面のおかげで、技術的な引き継ぎもスムーズにできましたね。ドキュメントを作る際には、文章で説明するよりも画面を取り込んで貼り付けた方が分かりやすいくらいです。新バージョンのDataSpider Servistaでは、自動ドキュメンテーションの機能があるとのことなので、それを使えれば今後はもっと楽になるでしょう。年度切り替えの変更情報を一箇所にあつめ、DataSpider を経由して、経営情報システムのデータベースに反映する仕組みにしたため非常にスムースに年度切替が出来ました」(長尾氏)
経営情報システムの今後に関して、長尾氏は経営情報を社内で広く活用するという展望を語っています。
「今後、このシステムをより多くのユーザが使えるようにして、幹部から現場スタッフまで全員が同じ指標を見ながら一丸となって取り組むような形になってほしいと思っています。同じデータを元に、それぞれの立場で原因究明や対策を行うことで、より迅速な、そして納得できる経営判断を下せるようになります」