「いろいろな可能性を秘めた」先進的ツールでユーザー・ニーズの先取り 三井金属鉱業株式会社(以下、三井金属と称す)およびそのグループ会社は、電子材料、自動車や電子機器の部品などを中心に、非鉄金属の鉱山開発から精錬、二次製品、そして環境関連事業まで幅広く手掛ける企業グループです。また、システム構築を担当した株式会社ユアソフト(以下、ユアソフトと称す)は、三井金属の情報システム部門としての役割を持つ、100%子会社です。ユアソフトはグループ50社以上のITインフラの設計、構築、運用管理やサポートを行い、また、基幹系から情報系まで、ユーザーに密着した幅広いサービスを提供しています。
三井金属をはじめ多くのユーザー企業に対するIT面の支援をミッションとするユアソフトは、単にユーザー企業の要求に応じてシステム構築を行うだけでなく、積極的に最新技術に対応し、今後の変化に対して柔軟に対応できるシステム提案を心掛けています。
株式会社ユアソフト 企画部 部長 楢木 仁 氏 「特に、ITインフラの整備に関しては、新しい技術をどのように活用できるか検討することも重要です。予め、プロトタイプを作って基礎技術を身に付けておき、適用シーンをフィットさせる形の提案も行います。さらに、具体的なシステムを作り上げ、提案を行うことで、潜在的なニーズを掘り起こすことも行います」と、ユアソフト 企画部 部長 楢木仁氏は言います。
三井金属グループでは、セキュリティ上の理由により、外部からイントラネットにアクセスできる社員を限定しております。また、グループの事業内容からも、ほとんどの社員はイントラネットでシステムを利用することで業務を行うことができます。しかし、「即時に、社内のナレッジ情報を活用して、お客様へ対応しなければならない」という緊急度の高い情報を必要としているのは、社外で活動している社員にこそ必要です。そこで、社外からイントラネットへ通じる手段であるメールを活用することを検討しました。
まず、ナレッジ情報を活用するためには、DBに自由度を持たせたいと考えました。そこで、先進的な取組みとして、株式会社富士通が開発したXMLデータベースエンジン「Interstage Shunsaku Data Manager」(以下、「Shunsaku」)の活用を決めました。「Shunsaku」は特定のキー情を持たず、検索の際には常に全文検索を行う自由度に優れたユニークなデータベースです。また、パフォーマンスに関しても、規模が大きくなればデータベースを分割して維持するという考えの設計となっており、これまでのデータベースにできなかったことが実現できると判断しました。
ユアソフトが「Shunsaku」の活用を検討しはじめたのは、2005年末頃のことでした。このとき、具体的なシステムの形を作り上げるため、まず「Shunsaku」に組み合わせるミドルウェアの選定が必要となりました。検討段階では、「DataSpider Servista」は「Shunsaku」に未対応でしたが、試用版を試した結果、「使いやすさの点、いろいろな業務への適用可能性の点、および、ユーザーの意見を汲んでくれる国産ベンダー製品の観点で評価」(楢木氏)し、また、Shunsakuアダプタの開発を前提に、「DataSpider Servista」の採用を決定しました。
XMLデータベースの特性を活かしたナレッジシステムを構築 質問と回答の双方向のメールからナレッジを自動的に蓄積しDB化 開発用に「DataSpider Servista」を導入したのは2006年5末のことでした。そして、2ヶ月間の間に、「Shunsaku」と「DataSpider Servista」の組み合わせを基本としたナレッジ情報のシステムと他にいくつかのプロトタイプが開発されました。
まず楢木氏は、「メールによるナレッジウェア」の開発に着手しました。「DataSpider Servista」が持つメールの入出力機能を用い、質問と回答メールを含めて、「DataSpider Servista」が自動的にメールの内容を「Shunsaku」に蓄積し、また、回答を検索するというシステムができました。
「電子メールで『こういうことを知っている人はいませんか』といったやり取りは、どこの会社でも日常的に行っていることだと思います。このやり取りを自動的に蓄積できれば、いわゆる『暗黙知』に近いものをナレッジ化することができます」(楢木氏)
具体的には、「Shunsaku」に格納するためのDataSpider専用のメール・アドレスを用意します。ユーザーは問い合わせに際して、cc:(カーボンコピー)にそのメール・アドレスを加えます。回答も同様に行います。この当事者同士の双方向のメールの内容を「DataSpider Servista」を介して、自動的に「Shunsaku」に蓄積させていきます。蓄積された情報の検索は、同様に、そのメール・アドレスに検索メールを送信することで、実行できます。
検索結果については、「DataSpider Servista」が質問と回答内容を「Excel」のワークシートに埋め込み、それを添付ファイルとして質問者へ回答します。緊急度の高い社外で活動する社員が必要とするナレッジ情報を提供できる仕組みが出来上がりました。
「イントラネットにはBBS(掲示板)も用意していますが、社外からは利用できません。メールなら、社外でも、イントラネットでも利用可能な手段となります。特に、取引先も含めた情報活用には、メールを活用することが役立つことと思います。このシステムの派生形として、取引先との交渉内容を格納すれば、メールによる営業活動をSFA的に活用することも可能となります。このシステムでは、メールのやり取りの内容が自動的に蓄積されていき、必要な時に、いつでもメールで取り出せることが特徴です」(楢木氏)
期待通りの製品「DataSpider Servista」 SAPに格納される情報の積極的な活用、SOAに対応したプロト開発 三井金属グループでは、グループの基幹システムとして「SAP」を展開し、「SAP」へのシステム統合を進めています。従って、システム間におけるデータ連携のニーズは年々減少していくことになります。しかしながら、ユーザーが使い慣れたツールである「Excel」や「Access」で、自由に「SAP」のデータを活用できるような使い勝手の改善は重要なテーマになっていきます。
そこで注目している技術がSOAであり、SOA対応ができれば、ユーザーは、「SAP」の情報か、その他のシステムの情報か意識することなく情報を取得することが可能となります。そして、その使い慣れたツールで、自由に情報加工や情報活用ができるようになります。
「DataSpider Servista」のWebサービス・アダプタを活用して、「SAP」のABAPを経由し、「SAP」とクライアントPCの「Excel」にて自由にデータの入出力を行うプロトタイピングは既に完成しています。今後は、ユーザーへ提案を行い、展開していくことになると思います。
最後に楢木氏は、「DataSpider Servista」の感想を語ってくれました。
「短期間に電子メールによるナレッジシステムの構築といくつかのプロトタイプの開発ができました。実際に開発を行ってみて、「DataSpider Servista」は、開発生産性の観点、パフォーマンスの観点、使い勝手の観点で、期待通りの製品でありました」