通信インフラ工事の効率化を目指し新システム構築
日本コムシス株式会社の顧客はNTTグループが中心です。例えば、一般家庭に光ファイバーのインターネットアクセス回線「フレッツ光」を新たに導入する場合、配線工事が必要になります。日本コムシスは、その施工に必要な情報(「サービスオーダー」と呼びます)をNTT東日本/西日本から受け取り、最寄りのサービス拠点(全国24カ所の「テクノセンター」)からスタッフを派遣、NTTに代わって一般家庭を訪問し、配線工事を行います。
配線工事などのサービスオーダーを受け取ると、それらを各地のテクノセンターに仕分けし、作業担当者の割当や工事ルートを決定すると同時に工事内容に応じて自治体などへの各種届けの作成や必要器材などの指示書も作成します。工事完了後には、依頼元に対して報告書を作成することになります。これらの届出、指示書および報告書などの帳票は60種類近くにものぼります。また、サービスオーダーは、新規のものだけでなく、工事日時の変更などの情報も含まれ、迅速に確実に対応する必要があります。昨今の通信業界の目まぐるしい進歩もあり、サービスの内容の変化に対応していかなければなりません。特に繁雑な各種届出は自治体ごとに書類フォーマットも相違していることもあり、従来のシステムでは、手入力を多用し、また、手書きの伝票作成も併用して対応をしていました。
近年のブロードバンド環境の普及が加速し、通信業者間の競争の激化、サービスの多様化に伴い、オーダーの数も激増し、複雑性や頻繁なサービス内容の変更が発生することに対応するため、日本コムシスではサービスオーダー管理システムを再構築することになりました。新たなサービスオーダー管理システムは“USSS(ユースリーエス)”と名付けられ、日本コムシスの子会社で、システムインテグレーションを手掛けるコムシステクノが開発を担当しました。
開発期間短縮を目指しDataSpiderを採用
USSSシステムの仕様検討が開始されたのは2006年2月。新たな時代の要求に応えると同時に、以前のシステムよりも現場の作業管理負担を減らすことを目的にプロジェクトは始まりました。
これまでフロッピーディスクで入手していたオーダー情報をオンラインで入手する仕組みに変更することを手始めに、NTTと交渉しながら推進してきたプロジェクトは、いつのまにかグループ会社全体で注目され、社長プロジェクトへと発展していきました。
この効率化を維持し続けるには、頻繁に生じる変更要求に対応できる柔軟なシステムが必要と考え、USSSシステムではサービスオーダー管理にXMLを採用しました。そして、データベースにサービスオーダー情報を格納し、多様な書式に合わせた、帳票用データを作成するツールに採用されたのが“DataSpider”です。
「60種類くらいの帳票があり、さらに地域によって独自の項目が付け加えられているなどバリエーションも多いので、ノンプログラミングで開発できるDataSpiderを用いて開発期間を短縮し、書式変更などにも迅速に対応できるようにしたいと考えて選びました」(青木氏)
このような状況において、2006年4月にDataSpiderのトレーニングを受講して実際の開発をスタートさせ、約2ヶ月間という短期開発で新システムの基礎が構築されました。このシステムによって、
- 作業指示に関する各種書類作成の自動化
- 工事に伴う各種届出の自動作成(地域ごとの相違に対応)
- 工事日程の変更に伴う上記内容の自動修正
- 作業完了報告に伴う報告書の自動作成
などが行われ、配線工事に伴う現場間接工事費の削減を実現しました。
現場の作業管理システムからグループ全体のマネージメントツールへ発展
USSSシステムは、現場の効率改善に寄与しただけでなく、経営、マネージメントにおいても効果をもたらしました。
「DataSpider Servistaは、XMLだけでなく、HTML形式で出力してWeb化、Excel形式で出力など様々なアダプタを介してデータ活用を行うことができます。開発段階で、iモード携帯電話の活用を考え、作業の進捗状況を現場でiモードから入力できるように改善しました」(青木氏)
USSSシステムには、現場で作業開始や終了時にiモード携帯電話から入力した情報が集約され、各テクノセンターや本社で全体を把握できるようになりました。そして、計画からのズレがあれば、その後の予定に対し別の作業班を割り当てるといった対応も迅速に行えます。一方、現場でも次の作業予定を迅速に把握、調整することが可能です。こうして、現場の作業状況がリアルタイムで把握でき、工事遅れを防ぐことが可能となります。また、作業の進捗状況は、日本コムシスの経営陣、管理者が把握できるだけでなく、元々の工事受注元のNTTの担当者も把握できるようデータ・フロー・スルーの概念も加味しています。
リアルタイムでの作業進捗管理が可能となり、業務の効率化と可視化が可能になったことから、いつしか、USSSシステムは“リアルタイムマネジメントシステム”と呼ばれるようになりました。 「このリアルタイムマネジメントシステムは、日本コムシスのニュースリリースにも掲載されたほどです。仕分け業務改善に関しても、だいぶ効率は上がったと思います」(情報システム部 USSSシステム担当 廣瀬幸美氏)
開発工数の削減、メンテナンスの容易さで開発・運用に寄与
最後に青木氏は、今回のシステムにおけるDataSpider Serviataの価値について次のように述べました。
「60種類の帳票は、各地域の各種届出の書式が異なり、その結果、作業依頼元への報告書の書式も異なっています。実際に出力する帳票書式数はその何倍にもなります。また、これらの工事に関する情報は、使用器材や電子柱の情報を含め500項目以上にものぼります。しかも、通信サービスの多様化に伴い、情報項目や出力書式は頻繁に変更されます。手組みでシステムを構築したしていたら、こうした変更に対応するには多大な工数と開発期間を要したでしょう。それ以上に、メンテナンスが大変であり、常時2名を専任で配置する必要がでてくるでしょう。また今回のプロジェクトでは、プログラミング経験が全くない新人社員もDataSpiderを使用することでテストデータを作成する戦力になりました。結果として、このプロジェクトでは、GUIで簡単に開発ができ、柔軟性のあるDataSpiderが必須でした」(青木氏)
また、DataSpiderに対する要望もあります。
「独自のアダプタを開発するためのSDK(Software Development Kit)はありますが、独自のロジック・アイコンも開発できたら、もっと便利だと思います。ロジック・アイコンが開発できれば、DataSpiderのHTMLの機能を利用して、Webアプリケーションも構築することができるでしょう。そうすれば、DataSpiderの世界がもっと広がると思います」