先進的なIT導入に積極的なことで知られる新光証券株式会社。2006年に業界初の完全オープン系で構築した証券基幹業務システム「STAGE」を全面稼働させたのに続き、2008年には新フロントシステムの稼働を開始しました。
この新フロントシステムと基幹システムとを結ぶエクイティフロントEAIシステムには、低コストと高いパフォーマンス、そして充実したサポートを評価され、DataSpiderが採用されました。
みずほ証券株式会社(旧:新光証券株式会社)
webサイト | http://www.mizuho-sc.com/index.html |
---|
取材日 2009年3月
記載の担当部署は、取材時の組織名です。
記事の内容は、旧アプレッソによる取材時のものとなっております。
経営理念に「クライアント・ファースト」を掲げ、全国ネットでフルラインのサービスを提供する新光証券は、先進的なIT導入に積極的なことでも知られています。2006年には業界初の完全オープン系で構築した証券基幹業務システム「STAGE」を全面稼働させ、証券業界やIT業界の注目を集めました。
そして2008年、同社では、東京証券取引所が2010年1月より次世代の取引システムを稼働開始するという予定に合わせ、新たなフロント(法人向け)システムと、決済業務を行う基幹システムとの連携を担うEAIシステムの構築を行いました。このシステムは今後の株式取引環境の変化を見据え、高速性や拡張性、柔軟性、そして安定性や冗長性を備えたものとして設計されたものです。
「法人や機関投資家の注文は一度に大量に入ってきますが、それを大口のまま取引所に出してしまっては、相場が大きく動いてしまうため、マーケットインパクトを抑える目的で分割発注を行うのが一般的です。刻々と変化する市場価格に合わせて効果的な発注を行えるようにするため、さまざまなノウハウがあり、近年では秒に何回という相場の変化に対応して高い頻度で自動的に発注するプログラムトレードあるいはアルゴリズムトレードと呼ばれる方法が主流になってます」と、新光証券 IT戦略部 フロントソリューション室の加藤直人氏は言います。
こうした高頻度の発注に対応できるよう、新システムには高いパフォーマンスが重要なのです。それは、新たなフロントシステムだけでなく、それに付随してフ ロントシステムと基幹システムを結ぶEAIシステムにおいても、やはり同様となります。
しかし、新たなエクイティフロントEAIシステムには、これまで新光証券が使ってきた外国ベンダーのETLツールでは問題があったと加藤氏は言います。
「今まで使ってきた製品は外資系のもので、コストが高く、また不具合対応の面でも芳しくないのです。特にパフォーマンス面で弱いことが判明し、そのサポート対応もあまり良くありません。そのため、次世代エクイティフロントEAIシステムに同じものを使うのは厳しいだろうと判断し、新たな製品を検討することにしたのです」(加藤氏)
製品選択の上で最大のポイントとなったのは、先に触れたように高頻度の発注に耐えられるトランザクション処理能力です。東証の次世代システムから新光証券が割り当てられるトランザクションは従来より拡大されるため、その枠に見合うパフォーマンスが不可欠となります。次いでコストが安いこと、それから不具合時のサポート対応やベンダーの技術力などを重視して、いくつかの製品を総合的に比較したそうです。
「DataSpiderは、比較検討した他の製品と比べてマイナスとなった評価点がなく、群を抜いて成績が高かったですね。最も優れた製品として、今回のエクイティフロントEAIシステムに採用しました」と加藤氏は語っています。
システムの開発作業は、新光証券が業務を委託したNTTコムウェアを中心に、クレスコがDataSpier開発パートナーとして加わって進められました。2008年の4~5月に要件定義、6~8月に開発、9~11月にテストを行うという開発スケジュールは順調に進み、12月にはカットオーバーを迎えています。
「スケジュールは、要件変更などが想定していた以上にありましたが、目立った遅れもなく、むしろ計画よりスムースに進み、わりと余裕がありましたね。NTTコムウェアからの報告によると、DataSpiderの感触としては、通常想定しているような範囲の課題は生じましたが、業務に耐えられないほど致命的なものではなかったとのことです」と加藤氏は言います。
また、アプレッソのテクニカルサポートに関しては、これまで使っていたETLツールのベンダーとは大違いだそうです。
「以前のベンダーでは、明らかな証拠を出して不具合の発生を連絡しても、『そういう事例はない』と返答されたケースもありました。しかしアプレッソではそのようなことはなく、NTTコムウェアの報告でも、適切に対応してもらえて特に不満はなかったと聞いています。我々のような日本企業のITユーザーは、システムにトラブルの際、いかに迅速に動き出してくれるかを気にします。また、不具合対応中の状況や、問題が解消する時期の見通し、再発の可能性の有無などを、きちんと知らせてくれることを望んでいます。アプレッソや、パートナーであるクレスコは、そういうところを分かって対応してくれていますね」
そして加藤氏は、開発中のサポートの例として、以下のように話をします。「現状、フロントシステムと基幹システムの間のトランザクションは、100レコードほどをまとめて行うように設計されています。しかし、DataSpiderがエラーで終了した際、どのレコードで問題になったかが分かりにくかったのです。この部分をアプレッソに対応してもらい、パッチとして提供してもらいました」
2009年2月現在、新光証券では新旧のフロントシステムを並行して稼働させています。「次世代のフロントシステムと基幹システムの間でやり取りする約定情報としては、30分間で12万件のトランザクションを想定していますが、DataSpiderの性能は申し分ありません。一方で、さらなる耐障害性の向上や、障害発生時のロールバックが容易に行えるような仕組みなども、今後は期待したいところです。こういった部分は高パフォーマンスと相反する面もあると思いますが、ぜひ両立させてもらいたいですね」と加藤氏は評価しています。
基幹系までも積極的にオープン系で構築するという、日本の証券会社としては珍しいスタンスを持つ新光証券。業務量の増加に対応して適切にシステム拡張ができるだけでなく、全てJavaで構築されているため機能拡張も容易に行えるといったメリットを手にしました。新たなフロントシステムも、今後は機能拡張が進められ、また接続先のシステムも増えてくることでしょう。
「今のところ、DataSpiderの活用に関して具体的な計画は出ていませんが、新フロントシステムでも拡張に応じて利用範囲が広がるでしょう。また、例えばリスク管理を行う部署や、派生商品を扱う部署などでも、よりリアルタイムに情報を処理したいといったニーズが出てきており、こうした目的のためにシステム間連携を進めることになるでしょう。そういったところで、DataSpiderを採用する可能性は高いと思います」(加藤氏)